捨てる人あれば、拾うワン公あり
閑話 七夕とワンワン
ワンワンが聖域に住んでいて、まだレイラがいなかった、ある日の事。
昼食を終えたクロは狩りに行こうと準備をしていると、外で魔物の骨などの宝物を並べていたワンワンがやって来た。
「ねえ、クロ。面白そうなの見つけたよ!」
「ん?  魔物の骨?」
「違うよ! 本だよ!」
「う……本か……」
「大丈夫! 絵本だよ!」
この時、ワンワンとナエは既に字はある程度読めらようになっていた。
その一方でクロは相変わらず文字がほとんど読めないでいた。絵本といった絵と簡単な文字が併せて記載されているものであれば、辛うじて読める。
ワンワンが差し出してきたものが、絵本である事に安堵するクロ。
「絵本かー良かったぁ。普通の本だと文字ばかりで読めないし、頭が痛くなるんだよね」
「わうっ!    良かったね!」
「うん!    それで、ワンワンくん。それってどんなお話なの?」
「まだ読んでないんだけど、絵がとても綺麗なの!」
そう言って床に絵本を開いてみせるワンワン。終盤のページのようだが、そこには確かに綺麗な絵が描かれていた。
見開きで描かれていて、そのほとんどは黒く塗られている。そこにどうやって描いたのか分からないが、本の右上から左下にかけて小さな宝石を散りばめたかのように、光る何かが描かれていた。
「わあっ、本当だ!    凄く綺麗だね。キラキラ光ってて……どうやって描いたんだろう?    もしかして魔法を使ってるのかな?    えっと黒いのは……空?    夜の空かな……そこに星の、川が流れてる?」
書かれている文字を読みながら、絵がどのようなものなのかを理解しようとするクロ。すると、ワンワンがそれを遮るように絵本に体を使って覆いかぶさる。
「駄目だよ!    お話は最初から読まないといけないんだよ!」
「あっ、ごめんね。気になっちゃって。それじゃあ最初から一緒に読んでみようか」
「わうっ!」
二人は最初のページを開いて読み始めた。
クロが声に出して読んでいき、間違った読み方をしていたらワンワンが訂正する。姉と弟の立場が完全に逆転していたが、それを二人は別に気にする様子はない。ワンワンはクロと一緒に本を読むのが楽しく、またクロもワンワンと一緒に本を読むのが楽しい。
ジェノスが見ていたらクロにしっかりするよう怒鳴っていたかもしれないが、今ジェノスは自分の小屋で作業中だ。注意される事はなく、二人は最後まで仲良く読むのだった。
「……なんというか、悲しいお話だね」
「わうぅぅぅ……この神様、意地悪だよ。どうして仲良しの二人を引き裂いちゃうの?    ちゃんとお仕事しようねって言えば良かったと思うよ」
「そうだね……私もそう思うよ……」
絵本のタイトルは掠れて読めないが、内容は簡単にいうと真面目で働き者だった二人の男女が、結婚をすると二人の生活が楽しくて仕事が手につかなくなってしまった。それを見かねた神様が二人の間に天の川と呼ばれる川を流して、離ればなれにしてしまうというものだ。
「一年に一回だけ会えるようにしたようだけど……やっぱり可哀想だよね」
「わうっ……本当ならずっと一緒にいたいはずだもん……。僕はクロやナエやジェノスと、ずっと一緒にいたいもん。ねえクロ、いつか二人はまた一緒に暮らせるようになるよね?」
「……そうだね、きっと一緒に暮らせるようになるよ」
離ればなれの二人が、いつか一緒に暮らせるようにと願う心優しいワンワン。その頭をクロはそっと撫でてあげるのだった。
その頃、天界では……。
「…………(しゅん)」
「か、神様、大丈夫です。別に神様の事を言っていた訳じゃないですよ!」
「お、おうっ!    神様は神様でも別の神様だからなっ!    なあドゥーラ!」
「そうだな……あれは創作の神様。まったく別もので……」
「…………(しゅん)」
物語上の神様であってもワンワンに「神様、意地悪だよ」と言われたダメージが意外と大きかった神様であった。
昼食を終えたクロは狩りに行こうと準備をしていると、外で魔物の骨などの宝物を並べていたワンワンがやって来た。
「ねえ、クロ。面白そうなの見つけたよ!」
「ん?  魔物の骨?」
「違うよ! 本だよ!」
「う……本か……」
「大丈夫! 絵本だよ!」
この時、ワンワンとナエは既に字はある程度読めらようになっていた。
その一方でクロは相変わらず文字がほとんど読めないでいた。絵本といった絵と簡単な文字が併せて記載されているものであれば、辛うじて読める。
ワンワンが差し出してきたものが、絵本である事に安堵するクロ。
「絵本かー良かったぁ。普通の本だと文字ばかりで読めないし、頭が痛くなるんだよね」
「わうっ!    良かったね!」
「うん!    それで、ワンワンくん。それってどんなお話なの?」
「まだ読んでないんだけど、絵がとても綺麗なの!」
そう言って床に絵本を開いてみせるワンワン。終盤のページのようだが、そこには確かに綺麗な絵が描かれていた。
見開きで描かれていて、そのほとんどは黒く塗られている。そこにどうやって描いたのか分からないが、本の右上から左下にかけて小さな宝石を散りばめたかのように、光る何かが描かれていた。
「わあっ、本当だ!    凄く綺麗だね。キラキラ光ってて……どうやって描いたんだろう?    もしかして魔法を使ってるのかな?    えっと黒いのは……空?    夜の空かな……そこに星の、川が流れてる?」
書かれている文字を読みながら、絵がどのようなものなのかを理解しようとするクロ。すると、ワンワンがそれを遮るように絵本に体を使って覆いかぶさる。
「駄目だよ!    お話は最初から読まないといけないんだよ!」
「あっ、ごめんね。気になっちゃって。それじゃあ最初から一緒に読んでみようか」
「わうっ!」
二人は最初のページを開いて読み始めた。
クロが声に出して読んでいき、間違った読み方をしていたらワンワンが訂正する。姉と弟の立場が完全に逆転していたが、それを二人は別に気にする様子はない。ワンワンはクロと一緒に本を読むのが楽しく、またクロもワンワンと一緒に本を読むのが楽しい。
ジェノスが見ていたらクロにしっかりするよう怒鳴っていたかもしれないが、今ジェノスは自分の小屋で作業中だ。注意される事はなく、二人は最後まで仲良く読むのだった。
「……なんというか、悲しいお話だね」
「わうぅぅぅ……この神様、意地悪だよ。どうして仲良しの二人を引き裂いちゃうの?    ちゃんとお仕事しようねって言えば良かったと思うよ」
「そうだね……私もそう思うよ……」
絵本のタイトルは掠れて読めないが、内容は簡単にいうと真面目で働き者だった二人の男女が、結婚をすると二人の生活が楽しくて仕事が手につかなくなってしまった。それを見かねた神様が二人の間に天の川と呼ばれる川を流して、離ればなれにしてしまうというものだ。
「一年に一回だけ会えるようにしたようだけど……やっぱり可哀想だよね」
「わうっ……本当ならずっと一緒にいたいはずだもん……。僕はクロやナエやジェノスと、ずっと一緒にいたいもん。ねえクロ、いつか二人はまた一緒に暮らせるようになるよね?」
「……そうだね、きっと一緒に暮らせるようになるよ」
離ればなれの二人が、いつか一緒に暮らせるようにと願う心優しいワンワン。その頭をクロはそっと撫でてあげるのだった。
その頃、天界では……。
「…………(しゅん)」
「か、神様、大丈夫です。別に神様の事を言っていた訳じゃないですよ!」
「お、おうっ!    神様は神様でも別の神様だからなっ!    なあドゥーラ!」
「そうだな……あれは創作の神様。まったく別もので……」
「…………(しゅん)」
物語上の神様であってもワンワンに「神様、意地悪だよ」と言われたダメージが意外と大きかった神様であった。
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