捨てる人あれば、拾うワン公あり
第22話 ワンワン収穫祭
クロも起き出し、全員揃って朝食をとる。その際、ジェノスが午前中の勉強会を休みにして、収穫をしようと提案するとワンワンとクロは喜んだ。ワンワンは素直に収穫をしてみたかったので喜んでいるのだが、クロの場合は勉強がなくなるので喜んでいた。
クロだけ自習でもさせようかとジェノスは思ったが、ナエが一生懸命耕した畑はそれなりに広く、作物の種類も多い。彼女の手は必要だろうと判断して見逃す事にするのだった。
「しゅうかーくっ! しゅうかーくっ!」
「ふふふっ、ワンワン嬉しそうじゃのう。あんなにはしゃいでおるぞ」
「はしゃぐのはいいけど、まだ収穫はするなよ。順番にやっていくぜ」
「わうっ!」
朝食を終えてすぐに畑へと駆け出すワンワン。ナエがそう注意すると、返事をして作物には手を出さずに待っていた。ただ、しきりにナエ達の方を見ていた。早く収穫をしたいようだ。
ほどなくしてナエ達も畑へとやって来て作業を始める。
まずは緑色の細長い野菜だ。表面に小さな突起がついており、ワンワンはそれに触れて驚き、面白がっていた。
「何これ? とげとげしてるっ!」
「ワンワン、こいつはキューレだぜ。蔓を切って収穫するのがいいのか?」
「そうだな。俺も野菜を収穫した事はねえが、それ以外ないだろ」
この中にこれまで野菜の収穫をしてきた者はいない。その見た目から適した収穫方法を判断していった。
「ふむ……儂も手伝うかのう」
「? 触れる事はできないだろう? どうやって手伝うんだ?」
「スキルを使って蔓を切れやすくするのじゃよ。【切断】というスキルなんじゃが、完全に切ってしまうと落ちて傷んでしまうからの。浅く切れ目をいれておくのじゃ」
そう言って、レイラはキューレの間を飛び回りながら、【切断】を使っていく。
彼女が通った後のキューラを見てみると、蔓に切り込みが入っていた。軽く引っ張れば蔓が千切れて収穫が楽になる。
「うわぁ、凄いね。これならあっという間に終わりそうだね」
「わうっ! どんどん収穫するよー!」
「とったら収納鞄に入れるんだぜ!」
収納鞄は今では入っていた食料をだいぶ消費して、四つが空となっていた。それだけあれば収穫した作物全てを充分に保存できるだろう。
キューレはレイラのおかげですぐに収穫を終える事ができた。それからも次々と作物を収穫していく。そして全ての作物の収穫を終えたのは、普段の昼食の時間を過ぎたぐらいだった。
「たくさん収穫できたね!」
ワンワンが作物を収穫し終えた畑の前で、満足そうに笑った。
収穫物は全て収納鞄に入れてしまった為、成果は見えにくい。だが、収穫を終えた畑を見渡すとナエ達は達成感を覚える。
今、畑に残るのは収穫を終えた実をつけていない作物だ。役目が終えたようにも見えるが、これから肥料としての役目がある。
「ふむ、それじゃあ儂はこれから【肥やし】を使って土に栄養を行き渡らせるかのう。クロ、モンスターを数匹狩ってきてくれぬか?」
「待ってくれ。確か、ワンワンの【廃品回収者】で回収できたはずだ」
「何? そうなのか? ふむぅ……ワンワンにそんな事を頼むのは気が引けるが…………ワンワン、モンスターの亡骸を幾つか出してくれぬか? 出して欲しい場所は儂が指定するのじゃ」
「うん、分かったよ!」
レイラの誘導でワンワンは再び畑の中へと足を踏み入れる。ジェノスとクロも用意しておいた鍬を手に、それに続いた。
「そんじゃあ肥料になったものを俺とクロで土に混ぜ合わせるか」
「了解だよ。ナエちゃんはその間……」
「分かってる。今日とった野菜で昼飯を作っておくぜ」
「ふふふっ、もうお腹ペコペコだからすっごく楽しみだよ」
そう言って四人は最後の作業に取り掛かる。ナエも野菜が入っている収納鞄を手に小屋へと戻り、調理を始めた。ちなみにワンワンに《ミソロジィ・キュア》を事前にかけて貰っているので、土で汚れた体は既に清められている。
「さてと、野菜も手に入った。調理器具や塩もあるから今なら色々作れそうだぜ」
【廃品回収者】のレベルアップにともない回収できるものが増え、そのおかげで調理器具も増えた。唯一の不満は調味料がない事だったが、昨日のレベルアップで岩塩を回収したのだ。
捨てられた背景は不明だが、料理を作る側としてナエにとって有難かった。これまでは干し肉の塩気などで味を整えていたのだ。充分な味付けができずにいた不満を岩塩のおかげで解消する事ができたのだった。
「さてと……ワンワンは初めて食べる野菜があるからなぁ。あんまり苦みが強い野菜は使わない方がいいか……これと、これはスープで使うか。そういえばモンスターの肉がまだあったな。葉物野菜で包んで煮るか……ワンワンが喜んでくれるといいなぁ」
ワンワンが喜ぶ顔を想像しながら、ナエは料理の構想を練りながら手を動かす。
調理を始めて暫くすると、作業を終えたワンワン達が来る。ジェノス達もワンワンに《ミソロジィ・キュア》をかけて貰ったのか、農作業をしたとは思えないほど身綺麗だった。
「わふっ!? なんか綺麗だよ! スープがいつもと違う! 匂いも違うっ!」
スープの入った鍋を見てワンワンは目を輝かせる。これまで野草や木の実を使ったスープは作っていたが、様々な野菜が入ったスープはこれまでのスープと比べて色鮮やかで、香りもまるで違った。
「ワンワン、もう少し待ってくれ。他の料理もあるからな」
「他の料理? 何これ!? 美味しそうっ! わうぅぅぅっ♪」
モンスターの肉を葉物野菜で包み、スープを使って煮込んでいた料理を目にして、ワンワンは「早く食べたいっ!」とせがむ。ワンワンに尻尾が生えていたら、激しく振っていただろう。
「もう時間は掛からねえから、皿とか用意しといてくれ」
「分かった!」
ナエに言われて、クロ達と協力してワンワンは食器を出し、飲み水などの用意をする。そして準備を終えたところで料理が完成した。
「さあ、できたぜ!」
料理が目の前に並ぶとワンワンは「早く食べたい」「食べていい?」と言い、落ち着つきなくソワソワしていた。そんなワンワンも可愛らしくもあったが、焦らすのも可哀想だと思い、ナエは頷いて許可を出す。
許しが出るとすぐにワンワンは料理を口にする。そして一口スープを飲むと、すぐい顔を上げた。
「美味しいっ!」
ワンワンは笑顔でそう言うと、スプーンを使わずに皿を両手で持って一気に飲んでしまった。
「おかわりっ!」
そして、おかわりだ。ナエは気に入ってくれたようで安堵しながら、ワンワンの差し出して来た皿を受け取ってスープを注ぐ。
「そっちの野菜で包んだ肉も食べてみてくれよ。きっと美味しいぜ」
「本当っ? あむっんぐっ……美味しいっ!」
スープを渡しながらナエがもう一つの料理を勧めると、すぐにワンワンは一口食べた。するとこちらも気に入ったらしく、今度はそちらに夢中になってしまう。その様子にナエは満足げな溜息を漏らすのだった。
「うわぁ、美味しいっ! ナエちゃん、本当に料理が上手だね!」
「確かに、こいつは美味いな……。いや、元々作ってくれる料理は美味かったが、材料が増えた分、より美味く仕上げるのは凄いぜ」
「むうっ、確かに美味そうなのじゃ……。儂もこんな体でなければ食べてみたいのう」
「そ、そうか? それなら良かったぜ……えへへっ」
ワンワン以外からも好評で、ナエは照れ臭く、頬が熱くなるのを感じた。
「まだ沢山あるからな。いっぱい食べてくれっ!」
料理は幸い多めに作っておいたので、ワンワンたちが満腹になるまで食べられるはずだ。
そしてナエも自分の料理を口にして、満足のいく出来だと頬を緩めた。
「おかわりっ!」
ワンワンが再び「おかわり」と声を上げる。ワンワンはそれからも美味しそうに食べて、おかわりを繰り返す。食事が終わった頃には、見た事のないほどにワンワンのお腹は膨れていたのだった。
クロだけ自習でもさせようかとジェノスは思ったが、ナエが一生懸命耕した畑はそれなりに広く、作物の種類も多い。彼女の手は必要だろうと判断して見逃す事にするのだった。
「しゅうかーくっ! しゅうかーくっ!」
「ふふふっ、ワンワン嬉しそうじゃのう。あんなにはしゃいでおるぞ」
「はしゃぐのはいいけど、まだ収穫はするなよ。順番にやっていくぜ」
「わうっ!」
朝食を終えてすぐに畑へと駆け出すワンワン。ナエがそう注意すると、返事をして作物には手を出さずに待っていた。ただ、しきりにナエ達の方を見ていた。早く収穫をしたいようだ。
ほどなくしてナエ達も畑へとやって来て作業を始める。
まずは緑色の細長い野菜だ。表面に小さな突起がついており、ワンワンはそれに触れて驚き、面白がっていた。
「何これ? とげとげしてるっ!」
「ワンワン、こいつはキューレだぜ。蔓を切って収穫するのがいいのか?」
「そうだな。俺も野菜を収穫した事はねえが、それ以外ないだろ」
この中にこれまで野菜の収穫をしてきた者はいない。その見た目から適した収穫方法を判断していった。
「ふむ……儂も手伝うかのう」
「? 触れる事はできないだろう? どうやって手伝うんだ?」
「スキルを使って蔓を切れやすくするのじゃよ。【切断】というスキルなんじゃが、完全に切ってしまうと落ちて傷んでしまうからの。浅く切れ目をいれておくのじゃ」
そう言って、レイラはキューレの間を飛び回りながら、【切断】を使っていく。
彼女が通った後のキューラを見てみると、蔓に切り込みが入っていた。軽く引っ張れば蔓が千切れて収穫が楽になる。
「うわぁ、凄いね。これならあっという間に終わりそうだね」
「わうっ! どんどん収穫するよー!」
「とったら収納鞄に入れるんだぜ!」
収納鞄は今では入っていた食料をだいぶ消費して、四つが空となっていた。それだけあれば収穫した作物全てを充分に保存できるだろう。
キューレはレイラのおかげですぐに収穫を終える事ができた。それからも次々と作物を収穫していく。そして全ての作物の収穫を終えたのは、普段の昼食の時間を過ぎたぐらいだった。
「たくさん収穫できたね!」
ワンワンが作物を収穫し終えた畑の前で、満足そうに笑った。
収穫物は全て収納鞄に入れてしまった為、成果は見えにくい。だが、収穫を終えた畑を見渡すとナエ達は達成感を覚える。
今、畑に残るのは収穫を終えた実をつけていない作物だ。役目が終えたようにも見えるが、これから肥料としての役目がある。
「ふむ、それじゃあ儂はこれから【肥やし】を使って土に栄養を行き渡らせるかのう。クロ、モンスターを数匹狩ってきてくれぬか?」
「待ってくれ。確か、ワンワンの【廃品回収者】で回収できたはずだ」
「何? そうなのか? ふむぅ……ワンワンにそんな事を頼むのは気が引けるが…………ワンワン、モンスターの亡骸を幾つか出してくれぬか? 出して欲しい場所は儂が指定するのじゃ」
「うん、分かったよ!」
レイラの誘導でワンワンは再び畑の中へと足を踏み入れる。ジェノスとクロも用意しておいた鍬を手に、それに続いた。
「そんじゃあ肥料になったものを俺とクロで土に混ぜ合わせるか」
「了解だよ。ナエちゃんはその間……」
「分かってる。今日とった野菜で昼飯を作っておくぜ」
「ふふふっ、もうお腹ペコペコだからすっごく楽しみだよ」
そう言って四人は最後の作業に取り掛かる。ナエも野菜が入っている収納鞄を手に小屋へと戻り、調理を始めた。ちなみにワンワンに《ミソロジィ・キュア》を事前にかけて貰っているので、土で汚れた体は既に清められている。
「さてと、野菜も手に入った。調理器具や塩もあるから今なら色々作れそうだぜ」
【廃品回収者】のレベルアップにともない回収できるものが増え、そのおかげで調理器具も増えた。唯一の不満は調味料がない事だったが、昨日のレベルアップで岩塩を回収したのだ。
捨てられた背景は不明だが、料理を作る側としてナエにとって有難かった。これまでは干し肉の塩気などで味を整えていたのだ。充分な味付けができずにいた不満を岩塩のおかげで解消する事ができたのだった。
「さてと……ワンワンは初めて食べる野菜があるからなぁ。あんまり苦みが強い野菜は使わない方がいいか……これと、これはスープで使うか。そういえばモンスターの肉がまだあったな。葉物野菜で包んで煮るか……ワンワンが喜んでくれるといいなぁ」
ワンワンが喜ぶ顔を想像しながら、ナエは料理の構想を練りながら手を動かす。
調理を始めて暫くすると、作業を終えたワンワン達が来る。ジェノス達もワンワンに《ミソロジィ・キュア》をかけて貰ったのか、農作業をしたとは思えないほど身綺麗だった。
「わふっ!? なんか綺麗だよ! スープがいつもと違う! 匂いも違うっ!」
スープの入った鍋を見てワンワンは目を輝かせる。これまで野草や木の実を使ったスープは作っていたが、様々な野菜が入ったスープはこれまでのスープと比べて色鮮やかで、香りもまるで違った。
「ワンワン、もう少し待ってくれ。他の料理もあるからな」
「他の料理? 何これ!? 美味しそうっ! わうぅぅぅっ♪」
モンスターの肉を葉物野菜で包み、スープを使って煮込んでいた料理を目にして、ワンワンは「早く食べたいっ!」とせがむ。ワンワンに尻尾が生えていたら、激しく振っていただろう。
「もう時間は掛からねえから、皿とか用意しといてくれ」
「分かった!」
ナエに言われて、クロ達と協力してワンワンは食器を出し、飲み水などの用意をする。そして準備を終えたところで料理が完成した。
「さあ、できたぜ!」
料理が目の前に並ぶとワンワンは「早く食べたい」「食べていい?」と言い、落ち着つきなくソワソワしていた。そんなワンワンも可愛らしくもあったが、焦らすのも可哀想だと思い、ナエは頷いて許可を出す。
許しが出るとすぐにワンワンは料理を口にする。そして一口スープを飲むと、すぐい顔を上げた。
「美味しいっ!」
ワンワンは笑顔でそう言うと、スプーンを使わずに皿を両手で持って一気に飲んでしまった。
「おかわりっ!」
そして、おかわりだ。ナエは気に入ってくれたようで安堵しながら、ワンワンの差し出して来た皿を受け取ってスープを注ぐ。
「そっちの野菜で包んだ肉も食べてみてくれよ。きっと美味しいぜ」
「本当っ? あむっんぐっ……美味しいっ!」
スープを渡しながらナエがもう一つの料理を勧めると、すぐにワンワンは一口食べた。するとこちらも気に入ったらしく、今度はそちらに夢中になってしまう。その様子にナエは満足げな溜息を漏らすのだった。
「うわぁ、美味しいっ! ナエちゃん、本当に料理が上手だね!」
「確かに、こいつは美味いな……。いや、元々作ってくれる料理は美味かったが、材料が増えた分、より美味く仕上げるのは凄いぜ」
「むうっ、確かに美味そうなのじゃ……。儂もこんな体でなければ食べてみたいのう」
「そ、そうか? それなら良かったぜ……えへへっ」
ワンワン以外からも好評で、ナエは照れ臭く、頬が熱くなるのを感じた。
「まだ沢山あるからな。いっぱい食べてくれっ!」
料理は幸い多めに作っておいたので、ワンワンたちが満腹になるまで食べられるはずだ。
そしてナエも自分の料理を口にして、満足のいく出来だと頬を緩めた。
「おかわりっ!」
ワンワンが再び「おかわり」と声を上げる。ワンワンはそれからも美味しそうに食べて、おかわりを繰り返す。食事が終わった頃には、見た事のないほどにワンワンのお腹は膨れていたのだった。
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