異世界へ行く準備をする世界~他人を気にせずのびのびと過ごします~
第18話 久し振りに我が家
コボルト、トコトコクサを倒し、その後はファンタジーが好きで知らない人はいないであろうスライムと遭遇した。
ただしゲームで見たような愛嬌ある見た目ではなく、目や口はない粘り気がある青い液体という印象の魔物だった。
青い液体の身体は半透明で、その中に赤い核があるのが分かる。核を少し傷付ければ容易に倒せた。Fランクの魔物の中で最も弱いのではないかと思ったが、ラピスは群れで現れたら最も恐ろしい魔物だと語った。
スライムの身体は弱いが酸でできていて、ゆっくりと獲物を溶かしていく。すぐに核を破壊できればいいが、もし群れで囲まれて核を破壊するのに手間取れば、スライムが体に付着して溶かされてしまう。
生きながら溶かされる恐怖を味わう事になると脅されて、俺はスライムの認識を改めた。
昼になると近くにあるコンビニで昼食を取り、その後は再び魔物と戦った。そして三時になったあたりで今日は終わりにする。
「それでは帰りましょう! この時間なら暗くなる前にホテルに戻れそうですね!」
「いや、その前に寄りたいところがあるんだ」
「寄りたいところ? 別にいいですけど……でも、時間を掛けてたら夜になっちゃいますよ?」
「大丈夫だ。ちょっと反則だが……こいつを使おう」
俺は近くにあった軽自動車を叩いた。車内を見ると、鍵がさしたままになっている。
それから俺たちは軽自動車で移動を始めた。
「凄い! 速いですマスター! これがこの世界の移動手段なんですね!」
「そっちの世界だと馬車が一般的な移動手段なのか?」
「そうですね。魔法やスキルで空を飛んだりする人はいますが……」
さすが異世界。空を飛べる人がいるのか……箒を使って飛ぶのだろうか?
「人が空を飛ぶのか……。こいつじゃ飛べないが、飛行機っていうものを使えば、一度に数百人を空を飛んで運べるぞ」
「数百っ!? 凄いですねぇ……ところで私たちは何処に向かっているんですか?」
「ん? ああ、言ってなかったな。俺の家だ。ちょっとホテルに持って行きたいものがあってな……服とか……あっ、お前の服も必要だよな? 帰りに服屋にも寄るか……」
服は俺にとってついでだったが、ラピスには服が必要だ。今ラピスは従業員の制服以外に服はなく、ついでに下着もない。
俺もさすがにずっとジャージを着ているわけにもいかず、ジャージを洗濯している時は従業員の制服を着ている。下着も一枚しかないので、履いたり履かなかったりだ。
自分が同じ服を着ようが、下着を履かない時があっても別に構わない。だが、マジックドールといえど見た目は人間の女性。いつまでも同じ服、ノーブラノーパンで過ごさせるわけにはいかない。
「下着はコンビニでも手に入ったのにな……。まあ服屋に行けば、そっちも手に入るか」
「マスター、服でしたら希望があります」
「ん? 何か欲しい服があるのか?」
食事以外でラピスが何か希望するのは珍しいが、俺が服を選ばなくて済むなら助かると安堵する。男性のおしゃれな服装さえも正直よく分からないのに、女性の服なんてもっとよく分からない。
「あの……マスターと同じような服がいいんです」
「同じようなって……ジャージか?」
「はいっ! 同じものがいいですっ!」
この世界で毎日のように来ている黒いジャージ。
動きやすくて魔物と戦う事を考えると良いかもしれないが、折角の優れた容姿が台無しになってしまうのが惜しいと思った。
ただラピスの目を見ると、本当にジャージを欲しているのが分かる。食事のリクエストをする時と同じ目をしているのだ。
「……分かった。これとまったく同じものがあるかは分からないが、探してみよう」
本人が、それが良いと言うのだからそうしよう。俺はそう思う事にした。
それに俺がジャージを用意しようと言うと、ラピスは食事をしている時よりも嬉しそうに笑顔になった。彼女がここまで喜んでくれるのなら、この選択は間違いではないと確信する。
それから車を走らせて二十分ほどで家に到着する。俺は契約していなかったが、マンションの一階部分にある駐車場に空きがあったのでそこに止めた。ここであれば建物内という事で魔物は入って来ないかもしれない。
俺はラピスを連れて自分の部屋に向かう。魔物はホテルやコンビニと同様に、マンション内にも入れないらしく遭遇する事はなかった。
そして鍵のかかっていない俺の部屋の扉を開けた。
「ここがマスターの家ですか?」
「そうだ。散らかってて悪いが、色々持って行きたいものがあるんだ」
俺が今日自分の家に来た最大の目的は、レンタルショップなどから集めたDVD、そしてそれを観る為のプレイヤーの為だ。
魔物と戦うようになってからは、生前のように五日間働いたら二日間休むようにしていた。ただ、テレビは映らないし、外には魔物がいるので気軽に出歩く事はできない。だから休日を楽しむものが欲しいと思った。
色々店を回って手に入れる事もできたが、自分の家に行けば一度で済む。だから自分の家に来たのだ。
「マジックマックに持って行くものを入れていくから、ラピスは待って」
「マスター! この本は何ですか? 綺麗な女の人の絵が描かれてて……読んでみてもいいですか?」
「駄目だ」
即、却下してマジックバックに入れた。
ラピスが指さしたベッドの上に置かれた一冊の本。表紙は幸いそこまで露出が激しいわけではないが、それは十八歳以上でなくては読む事ができないエロ漫画。
人を家の中に招く事はないと思っていたので油断していた。
俺はラピスにくれぐれも読まないように念押しして、何もせずに荷物を纏めるまで待つように言う。彼女は俺の言葉に従ってくれたが、気になるのか隠すようにエロ漫画を入れたマジックバックをジッと見ていた。
そんなラピスの視線に不安を感じながらも、俺は持って行くものを次々とマジックバックに入れていった。
ただしゲームで見たような愛嬌ある見た目ではなく、目や口はない粘り気がある青い液体という印象の魔物だった。
青い液体の身体は半透明で、その中に赤い核があるのが分かる。核を少し傷付ければ容易に倒せた。Fランクの魔物の中で最も弱いのではないかと思ったが、ラピスは群れで現れたら最も恐ろしい魔物だと語った。
スライムの身体は弱いが酸でできていて、ゆっくりと獲物を溶かしていく。すぐに核を破壊できればいいが、もし群れで囲まれて核を破壊するのに手間取れば、スライムが体に付着して溶かされてしまう。
生きながら溶かされる恐怖を味わう事になると脅されて、俺はスライムの認識を改めた。
昼になると近くにあるコンビニで昼食を取り、その後は再び魔物と戦った。そして三時になったあたりで今日は終わりにする。
「それでは帰りましょう! この時間なら暗くなる前にホテルに戻れそうですね!」
「いや、その前に寄りたいところがあるんだ」
「寄りたいところ? 別にいいですけど……でも、時間を掛けてたら夜になっちゃいますよ?」
「大丈夫だ。ちょっと反則だが……こいつを使おう」
俺は近くにあった軽自動車を叩いた。車内を見ると、鍵がさしたままになっている。
それから俺たちは軽自動車で移動を始めた。
「凄い! 速いですマスター! これがこの世界の移動手段なんですね!」
「そっちの世界だと馬車が一般的な移動手段なのか?」
「そうですね。魔法やスキルで空を飛んだりする人はいますが……」
さすが異世界。空を飛べる人がいるのか……箒を使って飛ぶのだろうか?
「人が空を飛ぶのか……。こいつじゃ飛べないが、飛行機っていうものを使えば、一度に数百人を空を飛んで運べるぞ」
「数百っ!? 凄いですねぇ……ところで私たちは何処に向かっているんですか?」
「ん? ああ、言ってなかったな。俺の家だ。ちょっとホテルに持って行きたいものがあってな……服とか……あっ、お前の服も必要だよな? 帰りに服屋にも寄るか……」
服は俺にとってついでだったが、ラピスには服が必要だ。今ラピスは従業員の制服以外に服はなく、ついでに下着もない。
俺もさすがにずっとジャージを着ているわけにもいかず、ジャージを洗濯している時は従業員の制服を着ている。下着も一枚しかないので、履いたり履かなかったりだ。
自分が同じ服を着ようが、下着を履かない時があっても別に構わない。だが、マジックドールといえど見た目は人間の女性。いつまでも同じ服、ノーブラノーパンで過ごさせるわけにはいかない。
「下着はコンビニでも手に入ったのにな……。まあ服屋に行けば、そっちも手に入るか」
「マスター、服でしたら希望があります」
「ん? 何か欲しい服があるのか?」
食事以外でラピスが何か希望するのは珍しいが、俺が服を選ばなくて済むなら助かると安堵する。男性のおしゃれな服装さえも正直よく分からないのに、女性の服なんてもっとよく分からない。
「あの……マスターと同じような服がいいんです」
「同じようなって……ジャージか?」
「はいっ! 同じものがいいですっ!」
この世界で毎日のように来ている黒いジャージ。
動きやすくて魔物と戦う事を考えると良いかもしれないが、折角の優れた容姿が台無しになってしまうのが惜しいと思った。
ただラピスの目を見ると、本当にジャージを欲しているのが分かる。食事のリクエストをする時と同じ目をしているのだ。
「……分かった。これとまったく同じものがあるかは分からないが、探してみよう」
本人が、それが良いと言うのだからそうしよう。俺はそう思う事にした。
それに俺がジャージを用意しようと言うと、ラピスは食事をしている時よりも嬉しそうに笑顔になった。彼女がここまで喜んでくれるのなら、この選択は間違いではないと確信する。
それから車を走らせて二十分ほどで家に到着する。俺は契約していなかったが、マンションの一階部分にある駐車場に空きがあったのでそこに止めた。ここであれば建物内という事で魔物は入って来ないかもしれない。
俺はラピスを連れて自分の部屋に向かう。魔物はホテルやコンビニと同様に、マンション内にも入れないらしく遭遇する事はなかった。
そして鍵のかかっていない俺の部屋の扉を開けた。
「ここがマスターの家ですか?」
「そうだ。散らかってて悪いが、色々持って行きたいものがあるんだ」
俺が今日自分の家に来た最大の目的は、レンタルショップなどから集めたDVD、そしてそれを観る為のプレイヤーの為だ。
魔物と戦うようになってからは、生前のように五日間働いたら二日間休むようにしていた。ただ、テレビは映らないし、外には魔物がいるので気軽に出歩く事はできない。だから休日を楽しむものが欲しいと思った。
色々店を回って手に入れる事もできたが、自分の家に行けば一度で済む。だから自分の家に来たのだ。
「マジックマックに持って行くものを入れていくから、ラピスは待って」
「マスター! この本は何ですか? 綺麗な女の人の絵が描かれてて……読んでみてもいいですか?」
「駄目だ」
即、却下してマジックバックに入れた。
ラピスが指さしたベッドの上に置かれた一冊の本。表紙は幸いそこまで露出が激しいわけではないが、それは十八歳以上でなくては読む事ができないエロ漫画。
人を家の中に招く事はないと思っていたので油断していた。
俺はラピスにくれぐれも読まないように念押しして、何もせずに荷物を纏めるまで待つように言う。彼女は俺の言葉に従ってくれたが、気になるのか隠すようにエロ漫画を入れたマジックバックをジッと見ていた。
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