異世界へ行く準備をする世界~他人を気にせずのびのびと過ごします~
第14話 創造神と娯楽神
何処までも白く平らな地面と天井が広がる不思議な空間。
普通の人が足を踏み込めば一日と経たずに気がおかしくなりそうだ。
だが、そのような空間に二人の少女の姿があった。
一人は顎に手をあてて真剣そうな表情をしており、もう一人は対照的にニコニコと微笑んでいる。
「なんとか無事に終わったようだね」
真剣な表情をしていた表情をしていた少女は、強張っていた顔を緩めて安堵の息を吐いた。
笑顔の少女も「良かった!」と言わんばかりに、大きく手を挙げて万歳をする。
「そうだね! 無事に終わったようで何よりだよ! いやはや彼の魂がある程度、強化されていたおかげで助かった! 【道化師】の適正もあって良かった! それ以外だと誰にでも渡せるような戦闘の役に立たないものばかりだからね! でも、ごめんね! 本当はもっと強化されたら凄いスキルを創造神から渡そうとしてたんだよね? 今回私が渡しちゃったからスキルは当分お預けだよね? ごめんね!」
「いや、気にしないでいいよ娯楽神。すぐに与えられるスキルを持っていたのは、私の知り合いで君ぐらいだったし。それに康太は死なないけど、あのマジックドールの子が破壊されたらどうしようもできないからね」
ここは神々が住まう神界にある、創造神が作った準備の世界に関わる作業をする空間。
創造神と娯楽神はここで、康太がゴブリンたちと戦っている様子を終始見ていた。
「でも、良かったの? いくら私が作ったお試しの世界でも、準備もなしに世界に干渉したから神格が削れちゃったんじゃない?」
神は簡単には世界に干渉する事はできない。
神は全知全能などと思われているが、神は自身の司るもの以外は難しい。創造神であれば創造する事はできるが、例えば破壊を苦手とする。
神は上位的な存在であるが不完全。世界に干渉して良い結果に繋がるとは限らないのだ。だから簡単には世界に干渉できないようになっている。
もし、無理に干渉しようとすれば、神格の剥奪もあり得る。
今回、娯楽神の場合は強引に康太と会話、そしてスキルを与えた事が問題となる。それによってはく奪とまではいかなかったものの、神格は大きく削がれてしまった。
だが、娯楽神は特に気にした様子はない。
「神格なんてまたすぐに戻るよ! なにせ私はどの世界にも必ずある娯楽の神様なんだからね! ありとあらゆる娯楽が全世界から消滅しない限りは、神格がごっそり削がれても私は何度だって元に戻る!」
神格は信仰心によって維持する事ができる。娯楽神の場合はどの世界でも崇められるような事は少ないが、己の司るものが人間に使われる場合も信仰心に繋がる。その為、娯楽など幅広く存在するものを司る神は、神格の維持をしやすいのだ。
だから娯楽神は神格がどれほど弱くなっても問題ないと笑う。ただ、これは神の中でも珍しい部類だ。普通の神の場合は自分の神格を元に戻るとしても、自分の威厳を損なうような事をしない。
「それに、私がうっかりフライングしちゃったお詫びもできただろうしね! いやぁ、了承得たらいいのかと思って、魔物を準備の世界に持って来ちゃったのは申し訳なかったね! 創造神もごめんね!」
「その事についてはいいよ。協力してくれるだけでも有難いんだから。それに一度死ぬ事で、私が言っていた事が本当だっていう事が分ってくれただろうし」
「そう言って貰えると助かるよ!」
「さすがにAランクの魔物まで持って来ようとしたのは驚いたけど……」
康太との会話を慌てて打ち切った原因だ。Dランクまでの魔物にしようと考えていたのに、それ以上のランクの魔物を娯楽神は準備の世界に入れようとしていたのだ。
娯楽神は気の良い神なのだが、うっかりミスをやらかす事が多い。神が全知全能ではないというのが彼女でよく分かるだろう。
「本当にごめんね! いやぁ、創造神の話をよく聞いていたつもりだったんだけどさ、仕事をする前に、戦神と会っちゃってさ! 早く送れ送れってうるさく言われてね! 創造神の話が頭の中から抜け落ちちゃったんだよ、きっと!」
「あぁ、あいつか……。それは災難だったね……」
異世界への召喚に耐えられる魂が少なくなっている今。神界には二つの派閥があった。一つは創造神の魂を強化させてから送り出そうとする準備派。そして、もう一つはこれまでのように異世界へと送り続けようとする保守派だ。
「魂の質が悪くなっている中で、異世界に考えもなしに送るのは自殺行為だというのにね……どうしてそれが分からないんだろう?」
「馬鹿だからね! きっと!」
「ストレートに言うねぇ……」
創造神は娯楽神の歯に衣着せない言葉に苦笑する。
現状保守派の方が多く、準備派は肩身が狭い思いをしている。その為、質の良い魂を確保するのも難しく、康太の魂を確保するのも至難の業だった。数少ない協力者のおかげで康太の魂を確保できたのだ。
康太にはそういった神のいざこざを悟らせまいと、そのあたりは伏せている。
「彼が良い結果を残してくれるといいんだけど……」
「きっと大丈夫だよ! 彼なら上手くやってくれると思うし、他の神もきっと賛成してくれる! うん、きっとね!」
「そうだね。きっとそうなるよね」
創造神はそう言って、何もない遠くに向ける。その目は準備の世界にいる康太を優しく見つめるのだった。
普通の人が足を踏み込めば一日と経たずに気がおかしくなりそうだ。
だが、そのような空間に二人の少女の姿があった。
一人は顎に手をあてて真剣そうな表情をしており、もう一人は対照的にニコニコと微笑んでいる。
「なんとか無事に終わったようだね」
真剣な表情をしていた表情をしていた少女は、強張っていた顔を緩めて安堵の息を吐いた。
笑顔の少女も「良かった!」と言わんばかりに、大きく手を挙げて万歳をする。
「そうだね! 無事に終わったようで何よりだよ! いやはや彼の魂がある程度、強化されていたおかげで助かった! 【道化師】の適正もあって良かった! それ以外だと誰にでも渡せるような戦闘の役に立たないものばかりだからね! でも、ごめんね! 本当はもっと強化されたら凄いスキルを創造神から渡そうとしてたんだよね? 今回私が渡しちゃったからスキルは当分お預けだよね? ごめんね!」
「いや、気にしないでいいよ娯楽神。すぐに与えられるスキルを持っていたのは、私の知り合いで君ぐらいだったし。それに康太は死なないけど、あのマジックドールの子が破壊されたらどうしようもできないからね」
ここは神々が住まう神界にある、創造神が作った準備の世界に関わる作業をする空間。
創造神と娯楽神はここで、康太がゴブリンたちと戦っている様子を終始見ていた。
「でも、良かったの? いくら私が作ったお試しの世界でも、準備もなしに世界に干渉したから神格が削れちゃったんじゃない?」
神は簡単には世界に干渉する事はできない。
神は全知全能などと思われているが、神は自身の司るもの以外は難しい。創造神であれば創造する事はできるが、例えば破壊を苦手とする。
神は上位的な存在であるが不完全。世界に干渉して良い結果に繋がるとは限らないのだ。だから簡単には世界に干渉できないようになっている。
もし、無理に干渉しようとすれば、神格の剥奪もあり得る。
今回、娯楽神の場合は強引に康太と会話、そしてスキルを与えた事が問題となる。それによってはく奪とまではいかなかったものの、神格は大きく削がれてしまった。
だが、娯楽神は特に気にした様子はない。
「神格なんてまたすぐに戻るよ! なにせ私はどの世界にも必ずある娯楽の神様なんだからね! ありとあらゆる娯楽が全世界から消滅しない限りは、神格がごっそり削がれても私は何度だって元に戻る!」
神格は信仰心によって維持する事ができる。娯楽神の場合はどの世界でも崇められるような事は少ないが、己の司るものが人間に使われる場合も信仰心に繋がる。その為、娯楽など幅広く存在するものを司る神は、神格の維持をしやすいのだ。
だから娯楽神は神格がどれほど弱くなっても問題ないと笑う。ただ、これは神の中でも珍しい部類だ。普通の神の場合は自分の神格を元に戻るとしても、自分の威厳を損なうような事をしない。
「それに、私がうっかりフライングしちゃったお詫びもできただろうしね! いやぁ、了承得たらいいのかと思って、魔物を準備の世界に持って来ちゃったのは申し訳なかったね! 創造神もごめんね!」
「その事についてはいいよ。協力してくれるだけでも有難いんだから。それに一度死ぬ事で、私が言っていた事が本当だっていう事が分ってくれただろうし」
「そう言って貰えると助かるよ!」
「さすがにAランクの魔物まで持って来ようとしたのは驚いたけど……」
康太との会話を慌てて打ち切った原因だ。Dランクまでの魔物にしようと考えていたのに、それ以上のランクの魔物を娯楽神は準備の世界に入れようとしていたのだ。
娯楽神は気の良い神なのだが、うっかりミスをやらかす事が多い。神が全知全能ではないというのが彼女でよく分かるだろう。
「本当にごめんね! いやぁ、創造神の話をよく聞いていたつもりだったんだけどさ、仕事をする前に、戦神と会っちゃってさ! 早く送れ送れってうるさく言われてね! 創造神の話が頭の中から抜け落ちちゃったんだよ、きっと!」
「あぁ、あいつか……。それは災難だったね……」
異世界への召喚に耐えられる魂が少なくなっている今。神界には二つの派閥があった。一つは創造神の魂を強化させてから送り出そうとする準備派。そして、もう一つはこれまでのように異世界へと送り続けようとする保守派だ。
「魂の質が悪くなっている中で、異世界に考えもなしに送るのは自殺行為だというのにね……どうしてそれが分からないんだろう?」
「馬鹿だからね! きっと!」
「ストレートに言うねぇ……」
創造神は娯楽神の歯に衣着せない言葉に苦笑する。
現状保守派の方が多く、準備派は肩身が狭い思いをしている。その為、質の良い魂を確保するのも難しく、康太の魂を確保するのも至難の業だった。数少ない協力者のおかげで康太の魂を確保できたのだ。
康太にはそういった神のいざこざを悟らせまいと、そのあたりは伏せている。
「彼が良い結果を残してくれるといいんだけど……」
「きっと大丈夫だよ! 彼なら上手くやってくれると思うし、他の神もきっと賛成してくれる! うん、きっとね!」
「そうだね。きっとそうなるよね」
創造神はそう言って、何もない遠くに向ける。その目は準備の世界にいる康太を優しく見つめるのだった。
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