異世界へ行く準備をする世界~他人を気にせずのびのびと過ごします~
第11話 ゴブリンの大群と戦います
声を上げたゴブリンは力尽き、魔石を残して消えた。
魔石を拾わず俺は坂を駆け上がろうとした。このままではゴブリンが集まって来るはずだ。どれだけ集まるか分からないが、数が多ければこちらが不利になる。分が悪い戦いはすべきではないし、イズも逃げるように言っていた。
「マスター! 横に跳んでください!」
「えっ、うおっ!?」
イズの言葉に反応して咄嗟に横に跳ぶと、先程俺がいた場所を一本の矢が通過した。
後ろを振り返ると弓を手にしたゴブリン、そして剣や槍を手にしたゴブリンが十匹くらい集まっているのが見えた。
「もう集まって来やがったか……ととっ」
再び飛んで来た矢を今度は余裕を持って避ける。矢を射って来る場所が分かれば、今の俺であれば避けられない事もない。
だが、次々と弓を手にしたゴブリンが集まって来て、矢の数が増えていく。そして他のゴブリンが矢を避けるのに精いっぱいの俺に迫る。坂を駆け上がって全力で走れば逃げたいが、背を向けたら確実に矢の餌食だ。
「一か八か戦うか……」
迫り来るゴブリン達と戦いが始まれば、仲間に当たらないように矢は控えるだろう。そうなれば目の前のゴブリンに集中できる。
問題は数だ。こちらへと駆けて来るゴブリンは少なくても二十はいる。魂が多少強化されて身体能力的には俺はゴブリンより強い。だが、剣や槍を持った集団を相手するとなれば話は別だ。
俺には一振りで海や大地を割るほどの力は持っていない。
戦ってまともに相手できるのは二、三体といったところだろう。それ以上の数になると正直勝ちは微塵も想像する事ができない。
だが、幸い創造神の計らいで死ぬ事はない。死んでも昨日のように拠点のホテルに戻されるだけだ。
逃げられないなら無謀でも戦った方がいいか……。
そう俺は覚悟を決めて剣を握り直して、迫り来るゴブリン達を迎え撃つ準備をする。
「マスター!」
「イズ? お、おい、どうして来たんだ!」
「マスターの戦意を感じ取りました。私は戦闘支援型のマジックドール、マスターが戦うのでしたらお手伝いするのは当然です。先程はマスターの意思を尊重して待機しておりましたが、これは想定外です。務めを果たさせていただきます」
イズはそう言って、坂の上に置いて来た盾を渡してくれる。盾を持って来てくれたのは有難い。それに大剣を手にして構えるイズは、とても頼もしく見えた。
どちらにせよ矢で狙われる為、再び坂を駆け上がって逃げる事は困難だ。ここはイズと一緒に戦って乗り切るしかない。
「よしっ! ゴブリンがここまで来たら仕掛けるぞ!」
「はいっ!」
そしてほどなくして剣や槍を手にしたゴブリンが俺達のところまで来た。
すると仲間に当たらないよう、離れたところで矢を射っていたゴブリンたちは弓を下ろしていた。これなら目の前のゴブリンたちに集中できる。
「はあああああっ!」
イズが全身を使って大剣を振るう。その一撃で近くにいたゴブリン三体が纏めて薙ぎ払われ、首と胴が離ればなれとなった。
一瞬で絶命するゴブリン。その光景に他のゴブリンたちが怯んだように見えたが、すぐに気を取り直し手にする武器を振るって攻撃をしてくる。
まだ数は優勢だから問題ない……といったところだろうか。実際ゴブリン達の方が優勢である事には違いない。もっと接近されてしまえば、あのような大振りはできない。今のは初撃だからこそ、できた芸当だと思う。
「おおおおっ!」
そして俺もイズに負けじと、盾で攻撃を受けながらゴブリンを倒していく。
落ち着いて避け切れない攻撃を盾で防ぎ、剣を振るう。息をするのを忘れてしまうほど集中して身体を動かす。
戦いに集中はしているが、内心では自分がここまで戦えている事に驚いた。
最初にゴブリンの隙を突いて接近して攻撃した時は、倒す事だけを考えて剣を振るっただけ。今こうして戦っているのと比べれば、戦いと言うにはおこがましいものだった。
だからこそこうして冷静で戦えている。命の遣り取りを平然としている自分に驚いている。
自分の思わぬポテンシャルを発揮し、またイズの活躍もあって少しずつだが着実にゴブリンの数が減っていく。弓を使うゴブリンはまだ無傷で残っているものの、目の前のゴブリン達はどうにかできそうだ。
しかし、そう簡単にはいかなかった。
先に気付いたのはイズだった。
俺の視界にゴブリンと戦っている彼女の姿があった。だが、突然相手していたゴブリンを蹴り飛ばしたと思えば、俺の背後に回ったのだ。
目の前のゴブリンの攻撃を盾で防ぎながら、隙を作らないように背後を見る。
そこには、俺を守るように立つ、右肩と腹部に矢が刺さったイズがいた。
「イズっ!?」
「マスター! 目の前の敵から目を離してはいけませんっ!」
「っ!」
イズに慌てて駆け寄ろうとしたが、イズの声にそれは愚行である事を諭されて目の前のゴブリンを再び相手に剣を振るう。
「マスター申し訳ございません。気付くのが遅れました。坂の上に弓を持ったゴブリンが」
「そんな事よりイズ! 傷は大丈夫か!」
「私は大丈夫です。ですが坂の上にも徐々に集まって来ているようです。完全に退路が断たれてしまいました」
「……そうか」
ゴブリンに前も後ろも塞がれた。どちらにせよ弓の攻撃があったので逃げる事は困難だったが、これで完全に退路は断たれてしまった。
坂の上にはどれだけのゴブリンがいるか分からない。だが、イズが退路を断たれたというくらいだから、目の前のゴブリン達と同等の数がいると考えた方がいいだろう。
これは……もう時間の問題か……。
先程よりも増えたゴブリン。この大群を相手にできる気がまるでしない。
負けは確定だが、最後の最後まで戦ってできるだけ魂を強化する事しかやれる事はない。
そう思って改めて俺は覚悟を決める。だが、ふと全身の血の気が引くような事に気付いてしまう。
俺は死んだら拠点に戻される……だが、イズは?
魔石を拾わず俺は坂を駆け上がろうとした。このままではゴブリンが集まって来るはずだ。どれだけ集まるか分からないが、数が多ければこちらが不利になる。分が悪い戦いはすべきではないし、イズも逃げるように言っていた。
「マスター! 横に跳んでください!」
「えっ、うおっ!?」
イズの言葉に反応して咄嗟に横に跳ぶと、先程俺がいた場所を一本の矢が通過した。
後ろを振り返ると弓を手にしたゴブリン、そして剣や槍を手にしたゴブリンが十匹くらい集まっているのが見えた。
「もう集まって来やがったか……ととっ」
再び飛んで来た矢を今度は余裕を持って避ける。矢を射って来る場所が分かれば、今の俺であれば避けられない事もない。
だが、次々と弓を手にしたゴブリンが集まって来て、矢の数が増えていく。そして他のゴブリンが矢を避けるのに精いっぱいの俺に迫る。坂を駆け上がって全力で走れば逃げたいが、背を向けたら確実に矢の餌食だ。
「一か八か戦うか……」
迫り来るゴブリン達と戦いが始まれば、仲間に当たらないように矢は控えるだろう。そうなれば目の前のゴブリンに集中できる。
問題は数だ。こちらへと駆けて来るゴブリンは少なくても二十はいる。魂が多少強化されて身体能力的には俺はゴブリンより強い。だが、剣や槍を持った集団を相手するとなれば話は別だ。
俺には一振りで海や大地を割るほどの力は持っていない。
戦ってまともに相手できるのは二、三体といったところだろう。それ以上の数になると正直勝ちは微塵も想像する事ができない。
だが、幸い創造神の計らいで死ぬ事はない。死んでも昨日のように拠点のホテルに戻されるだけだ。
逃げられないなら無謀でも戦った方がいいか……。
そう俺は覚悟を決めて剣を握り直して、迫り来るゴブリン達を迎え撃つ準備をする。
「マスター!」
「イズ? お、おい、どうして来たんだ!」
「マスターの戦意を感じ取りました。私は戦闘支援型のマジックドール、マスターが戦うのでしたらお手伝いするのは当然です。先程はマスターの意思を尊重して待機しておりましたが、これは想定外です。務めを果たさせていただきます」
イズはそう言って、坂の上に置いて来た盾を渡してくれる。盾を持って来てくれたのは有難い。それに大剣を手にして構えるイズは、とても頼もしく見えた。
どちらにせよ矢で狙われる為、再び坂を駆け上がって逃げる事は困難だ。ここはイズと一緒に戦って乗り切るしかない。
「よしっ! ゴブリンがここまで来たら仕掛けるぞ!」
「はいっ!」
そしてほどなくして剣や槍を手にしたゴブリンが俺達のところまで来た。
すると仲間に当たらないよう、離れたところで矢を射っていたゴブリンたちは弓を下ろしていた。これなら目の前のゴブリンたちに集中できる。
「はあああああっ!」
イズが全身を使って大剣を振るう。その一撃で近くにいたゴブリン三体が纏めて薙ぎ払われ、首と胴が離ればなれとなった。
一瞬で絶命するゴブリン。その光景に他のゴブリンたちが怯んだように見えたが、すぐに気を取り直し手にする武器を振るって攻撃をしてくる。
まだ数は優勢だから問題ない……といったところだろうか。実際ゴブリン達の方が優勢である事には違いない。もっと接近されてしまえば、あのような大振りはできない。今のは初撃だからこそ、できた芸当だと思う。
「おおおおっ!」
そして俺もイズに負けじと、盾で攻撃を受けながらゴブリンを倒していく。
落ち着いて避け切れない攻撃を盾で防ぎ、剣を振るう。息をするのを忘れてしまうほど集中して身体を動かす。
戦いに集中はしているが、内心では自分がここまで戦えている事に驚いた。
最初にゴブリンの隙を突いて接近して攻撃した時は、倒す事だけを考えて剣を振るっただけ。今こうして戦っているのと比べれば、戦いと言うにはおこがましいものだった。
だからこそこうして冷静で戦えている。命の遣り取りを平然としている自分に驚いている。
自分の思わぬポテンシャルを発揮し、またイズの活躍もあって少しずつだが着実にゴブリンの数が減っていく。弓を使うゴブリンはまだ無傷で残っているものの、目の前のゴブリン達はどうにかできそうだ。
しかし、そう簡単にはいかなかった。
先に気付いたのはイズだった。
俺の視界にゴブリンと戦っている彼女の姿があった。だが、突然相手していたゴブリンを蹴り飛ばしたと思えば、俺の背後に回ったのだ。
目の前のゴブリンの攻撃を盾で防ぎながら、隙を作らないように背後を見る。
そこには、俺を守るように立つ、右肩と腹部に矢が刺さったイズがいた。
「イズっ!?」
「マスター! 目の前の敵から目を離してはいけませんっ!」
「っ!」
イズに慌てて駆け寄ろうとしたが、イズの声にそれは愚行である事を諭されて目の前のゴブリンを再び相手に剣を振るう。
「マスター申し訳ございません。気付くのが遅れました。坂の上に弓を持ったゴブリンが」
「そんな事よりイズ! 傷は大丈夫か!」
「私は大丈夫です。ですが坂の上にも徐々に集まって来ているようです。完全に退路が断たれてしまいました」
「……そうか」
ゴブリンに前も後ろも塞がれた。どちらにせよ弓の攻撃があったので逃げる事は困難だったが、これで完全に退路は断たれてしまった。
坂の上にはどれだけのゴブリンがいるか分からない。だが、イズが退路を断たれたというくらいだから、目の前のゴブリン達と同等の数がいると考えた方がいいだろう。
これは……もう時間の問題か……。
先程よりも増えたゴブリン。この大群を相手にできる気がまるでしない。
負けは確定だが、最後の最後まで戦ってできるだけ魂を強化する事しかやれる事はない。
そう思って改めて俺は覚悟を決める。だが、ふと全身の血の気が引くような事に気付いてしまう。
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