赤ずきんは高校生

雨羇ーウター

Interlude ⒈

ぽかぽかと暖かい陽がさす午後の教室は退屈な経済の授業の真っ最中で、
何となく周りを見るとみんな眠たそうな顔をしている。
この分だとあと数分で前の席のこいつは眠りにつくだろう。

「はい、ではあとの残りの時間はこのプリントうめてください」
今までお経を唱えるように喋っていた教師が、そう言った瞬間
前に座っているあいつはあっという間に机突っ伏して眠りだした。

居眠り常習犯の彼が何故教師に注意されないのか、その理由は単純だ。
うちの学校がユルいっていうのももちろんある。
だけど最大の理由は、こいつがものすごく頭がいい事だ。
腹が立つことに、教科書を見れば大体のことは掴めてしまうらしい。
成績がいいこいつをわざわざ注意する教師はうちの学校にはいない。

そんなことを考えながらプリントをうめていくと、
あっという間に終業のチャイムがなった。さて、こいつを起こすとしますか。

「大神、おい大神、授業終わったぞ、起きろ」

軽く揺するとゆっくり目を開け、

「んお~、おーじさま、おはよ」

なんて言いやがってイラッとしたので、

「アホか!寝ぼけてないでさっさと起きろ。次掃除だろ」

軽く頭をはたいてやる。

「悪かったって、大路。でもはたくことないだろ〜。
それに掃除だってまただれもやんないでしょ、俺ら以外」

「お前なぁ、、、今さらそれ言うか?」

なんて軽口を叩きながら大神にホウキを渡し、自分はモップを手に取る。
おれ達以外掃除をしないのは事実だ。他に8人もいるくせに全員面倒くさがって、
散らばって話して駄弁っているか、サボって帰るか。
真面目にやっているのは、ハグレモノのおれと大神だけ。
そんなことにももう慣れた。
おれはこういう事は真面目にしないと性に合わないのだ。
そんなおれに、大神はいつも付き合ってくれる。

「さ、俺、人待たせちゃうからさっさと終わらせちゃおう」

「そうだな。でも珍しいな、お前が人と何かあるの」

「そうか?」

珍しいなんてレベルじゃない。初めてって言ってもいいくらいだ。
おれはこいつと高1からずっと同じクラスで出席番号も隣だった。
多分こいつと学年の中で1番親しいのはおれだ。だから分かっている事がある。
こいつは人に心を開かない。誰に対しても程良い距離感を保って、
決して深く立ち入ることはない。それはおれに対しても。
何かと立ち回りが上手いから、誰にも嫌われることもないし。
ま、だからハグレモノでハンパモノのおれと話してても、
誰からも何も言われることがないんだろう。

「委員会とか何か?」

「いやー、個人的な用だけど」

「ふーん」

そりゃあますます珍しい。
普段誰かに何か誘われても、適当に理由をつけてそれとなく断ってるくせに。

あ、そういえば。
最近こいつ、やけに帰るの早くなってる気がする。
元々帰宅部だから帰るの早くて気にしてなかったけど。
時々教室の隅でぼんやりと本を読んでいることがあったりする
のに、
最近はそれもしなくなった。
もしかして、これと今日の用事が関係してるのだろうか。

そんなことを考えながらも、おれ達は手早く掃除を終わらせた。
最初の頃よりかはだいぶ速く終わるようになった気がする。
あとはゴミ箱のゴミを捨てるだけ。

ゴミ箱を持って、教室のドアを開けたその時

「あっ!すみません!」

目の前には女の子が立っていた。制服のリボンの色からして1年生。そして

「お〜赤月!悪い、待たせてる?」

大神が用事があるのはこの子だったのだ。
にしてもこの子、かなりカワイイ。

「今きたところです!私のクラス、今日終わるの早かったので!」

小動物系?というのだろうか。
背が低いからこうやって手をパタパタ振ったりするととてもかわいい。
おーおー、大神も何かデレっとしてるし。
ていってもかなり分かりずらいんだけどね。

「ねー大神、その子彼女?」

これくらいの茶々いれてもいいだろ?
そしたら案の定、女の子は顔真っ赤にしちゃって

「わ〜っ、違います違います!!!」

なんて大慌てだからもうかわいくってかわいくって。

「ごめんなー赤月。コイツこういうやつなんだ。
あ、これ捨ててきたらすぐ戻るから、待ってて。」

「あ、いーよ大神。お前の分もおれがやっとくから。」

おれは大神のゴミ箱も持って、サッと教室を出た。

「いいのか?結構入ってるぞ、それ」

「いいっていいって。元々おれが付き合ってもらってるわけだし」

それに2人の邪魔するのも悪いじゃんね?

「でも、、、」

渋られていい加減ちょっとイラッとする。これくらい大丈夫だっつーの。

「いいからおれが行くって!」

多少強引に進むと、女の子の心配そうな顔がチラッと視界に入った。
別にめちゃくちゃ怒ってるわけじゃないんだけどな。
女の子を安心させるため、クルっとおれは振り向いて

「そーのーかーわーり、明日詳しく聞かせてもらうからな、大神!」

と言ってやった。女の子が途端に真っ赤になって少しほっとする。

おれはそのままスタスタと真っ直ぐゴミ置き場に向かった。
少しのニヤニヤ笑いを顔に携えながら。



















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どうも、雨羇ーウターです!
皆さま、お久しぶりです、、、(((

めちゃくちゃ更新遅くなってすみませんm(_ _)m
もうちょっと早く更新できるように、頑張ります。

さて、今回の話は番外編でした。
大神のクラスメイトの視点から語られています。

ここで新キャラの紹介を。

大路オオジ  ケイ
高校3年生。大神とは1年からずっと同じクラス。
ある理由から、周りから浮いた存在になっているため、
自分がハンパモノでハグレモノだと感じることがよくある。

番外編は、主にこの『おーじさま』の視点で語ることが多いと思います。
浮いている理由はまた後ほど。

次の話は普通にストーリーに戻ります。
もっと早く更新できるようになるので、、、(m*_ _)m

それでは。








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