人生の続きを異世界で!〜天界で鍛えて強くなる〜
不意打ち
「事情はわかったけど、具体的な作戦はどうするわけ?」
馬車の中で事情を聴き終わったメリアは、次に作戦について話を移す。
「時間がないもんね〜。すぐに考えなくちゃ、無策で行くことになっちゃうよ」
今馬車を動かしているのはヨハンで、無理のない範囲でソフィアと交代しながら行けば、1日でウナアーダとの国境に入る。
それまでに作戦を考えなければならないのだが、
「もちろん考えていましたが、悪魔がいるとなれば、想定する敵戦力も変わってきます」
「そもそもさ、私は悪魔についてよく知らないんだけど、強さとか知っておきたいな!」
「確かにそうね。作戦を立てる上で、情報の共有は大事だし」
「……あ、俺が説明するのか」
「ミツキ様が1番詳しいでしょうから」
どうやって突入するか考えていたミツキに、悪魔の説明を全員が求める。
普通、悪魔についての詳しい勉強などしている人間は少ないため、天界で学んだミツキの方が詳しいのは当然だろう。
「じゃあ、俺が知ってることを話しておくか。ヨハンも聞こえてるな」
「おーう。頼むぜ」
前方で魔法を使っているヨハンに確認をとって、説明を始める。
「まず、悪魔の見た目は人間とほとんど同じだ」
「へー! てっきり、絵本で見たようなわかりやすい姿だと思ってけど、違うの?」
「この世界の悪魔は、基本的に全員受肉しているはずだからな」
「強さは? 全部が全部、化け物みたいな強さってわけじゃねぇだろ?」
「悪魔は個体によって差が激しい。並の悪魔なら脅威じゃないけど、爵位持ちの個体は桁違いだと思ってくれ」
「爵位って、公爵とかそういうの?」
「そうそう。騎士から大公まで。悪魔に王はいなくて、4人の大公がそれぞれ膨大な悪魔を支配してる」
「はーい! 今回の相手が大公の可能性はあるの?」
「それはほとんどないと思う。大公クラスが出てくるなんて、それこそ稀だって聞いてるからな」
天界で学んでいた時も、大公の悪魔を見たことがある神は、ほんのひと握りだと聞いていた。
「ミツキ様、爵位持ちの悪魔ですが、どこまでなら対処可能ですか?」
「俺も戦ったことがないから断言できないけど……子爵までだ。それ以上は厳しいな」
おおよその強さは把握しているが、子爵であれば街一つを造作もなく滅ぼす、といった程度だ。
それくらいならば、まだ対処可能だろう。
「見分け方とかはあるわけ?」
「爵位持ちの悪魔は、だいたい自分から名乗るらしい。爵位を誇りに思ってるらしいからな」
「でしたら、見分けるのは簡単ですね。もしも、子爵よりも上の爵位持ちがいた場合、無理せず撤退も考えましょう」
「よし。それじゃあ、具体的な突入案を考えよう」
そこから5人は、馬車を休まずに走らせながら、時間の許す限り作戦を練る。
ミツキからさらに詳しい悪魔の情報、予想される攻撃手段や、人数などを聞いておく。
もし悪魔が子爵の場合は、部下も合わせて10体ほどの悪魔がいるだろう、というのがミツキの予想だった。
その後、ヨハンからウナアーダ首都の構造を聞き、目指す場所を城の最深部に決定。
基本的にミツキは単独、ソレーユとソフィア、メリアとヨハンの3組で動くことになった。
「基本的に2人1組は崩さないようにしましょう。ミツキ様は別ですが」
「ミツキの火力だと、逆に邪魔になっちゃうもんね!」
「そういうことだな。で、最終目的は、ウナアーダの王女に取り憑いている悪魔を殺すことだ」
「悪魔って普通の武器で死ぬわけ?」
「受肉している悪魔ならな。武器でも魔法でも殺せる」
「なら安心ね」
作戦も固まってきて、目的も決まった。
そんなところで、遂に法国とウナアーダの国境に差し掛かる。
「お前ら、そろそろ戦闘準備しとけよ」
「ここから首都まではどのくらいかかるんだ?」
「ま、ざっと2時間ってとこだろうな。そこまで広い国じゃねぇし」
「なら、最終確認といくか」
ミツキ達がそれぞれ、装備や作戦の確認をしようとした瞬間だった。
全員の視界が真っ白に染まると、5人は馬車から姿を消した。
* * *
「デニス様、侵入者の転移に成功した模様です」
ウナアーダ首都にある王城
その玉座にて、デニスとよばれる人間の姿をした男は、部下の男のその報告に気味悪い笑みを浮かべる。
「ひゃははっ! 国から出たバカが居たと思って警戒してれば、案の定来やがったか。転移先はどうなってる?」
「はい。既に何人も兵を配置しております。並の人間なら、すぐに死ぬでしょう」
「お手並み拝見ってわけだ。なぁ、おい!」
デニスが背後に言葉をかけると、そこにはガラス細工のような、精巧な顔立ちの少女が座っていた。
少女は瞳を閉じて微動だにせず、デニスの言葉にも反応しない。
「けっ、面白くもねぇ。おい、お前も行ってこい」
代わりに声をかけた先には、1本の剣を携えた騎士、アランが立っている。
「俺は、この場に留まると言ったはずだ」
「あ? 逆らう気か? 別にいいんだぞ。俺はこの女王様の命なんざ、惜しくねぇからな!」
そう言ってデニスは自らの右腕に爪を立て、血が出るほどの力で引っ掻く。
「あ、んっ!?」
すると、その背後にいた少女が小さな悲鳴を漏らしたと思うと、デニスが血を流している場所と、まったく同じ場所を手で抑える。
「わかった、言う通りにする。だから……頼む、やめてくれ」
その様子に耐えかねたアランは、奥場を噛み締めながらデニスの言いなりになる。
「最初からそうしとけばいいんだよ。おら、行ってこい」
心底楽しそうにその様子を見たデニスは、アランに近づいて肩に触れると、その場から転移させる。
「デニス様、私も行った方がよろしいでしょうか?」
「お前はここに残れ、ドルベン。お前が殺されるのが1番めんどくせぇ」
「わかりました」
「そうだ、王国への進軍はどうなってんだ?」
「順調です。魔国の軍とも合流し、明後日にでも攻撃を開始するでしょう」
「素晴らしい! 全てが順調だ!」
侵入者にも先手を打ち、王国侵略に向けての軍も問題はない。
理想の展開に、つり上がった口角が下がらない。
「この世界を征服すれば、デニス様の爵位も伯爵から上がることでしょう」
「ああ、大公になれる日もそう遠くねぇ」
伯爵の爵位を持つ悪魔、デニスは玉座に座り直し、魔法によって映し出された侵入者たちの様子を見るのだった。
馬車の中で事情を聴き終わったメリアは、次に作戦について話を移す。
「時間がないもんね〜。すぐに考えなくちゃ、無策で行くことになっちゃうよ」
今馬車を動かしているのはヨハンで、無理のない範囲でソフィアと交代しながら行けば、1日でウナアーダとの国境に入る。
それまでに作戦を考えなければならないのだが、
「もちろん考えていましたが、悪魔がいるとなれば、想定する敵戦力も変わってきます」
「そもそもさ、私は悪魔についてよく知らないんだけど、強さとか知っておきたいな!」
「確かにそうね。作戦を立てる上で、情報の共有は大事だし」
「……あ、俺が説明するのか」
「ミツキ様が1番詳しいでしょうから」
どうやって突入するか考えていたミツキに、悪魔の説明を全員が求める。
普通、悪魔についての詳しい勉強などしている人間は少ないため、天界で学んだミツキの方が詳しいのは当然だろう。
「じゃあ、俺が知ってることを話しておくか。ヨハンも聞こえてるな」
「おーう。頼むぜ」
前方で魔法を使っているヨハンに確認をとって、説明を始める。
「まず、悪魔の見た目は人間とほとんど同じだ」
「へー! てっきり、絵本で見たようなわかりやすい姿だと思ってけど、違うの?」
「この世界の悪魔は、基本的に全員受肉しているはずだからな」
「強さは? 全部が全部、化け物みたいな強さってわけじゃねぇだろ?」
「悪魔は個体によって差が激しい。並の悪魔なら脅威じゃないけど、爵位持ちの個体は桁違いだと思ってくれ」
「爵位って、公爵とかそういうの?」
「そうそう。騎士から大公まで。悪魔に王はいなくて、4人の大公がそれぞれ膨大な悪魔を支配してる」
「はーい! 今回の相手が大公の可能性はあるの?」
「それはほとんどないと思う。大公クラスが出てくるなんて、それこそ稀だって聞いてるからな」
天界で学んでいた時も、大公の悪魔を見たことがある神は、ほんのひと握りだと聞いていた。
「ミツキ様、爵位持ちの悪魔ですが、どこまでなら対処可能ですか?」
「俺も戦ったことがないから断言できないけど……子爵までだ。それ以上は厳しいな」
おおよその強さは把握しているが、子爵であれば街一つを造作もなく滅ぼす、といった程度だ。
それくらいならば、まだ対処可能だろう。
「見分け方とかはあるわけ?」
「爵位持ちの悪魔は、だいたい自分から名乗るらしい。爵位を誇りに思ってるらしいからな」
「でしたら、見分けるのは簡単ですね。もしも、子爵よりも上の爵位持ちがいた場合、無理せず撤退も考えましょう」
「よし。それじゃあ、具体的な突入案を考えよう」
そこから5人は、馬車を休まずに走らせながら、時間の許す限り作戦を練る。
ミツキからさらに詳しい悪魔の情報、予想される攻撃手段や、人数などを聞いておく。
もし悪魔が子爵の場合は、部下も合わせて10体ほどの悪魔がいるだろう、というのがミツキの予想だった。
その後、ヨハンからウナアーダ首都の構造を聞き、目指す場所を城の最深部に決定。
基本的にミツキは単独、ソレーユとソフィア、メリアとヨハンの3組で動くことになった。
「基本的に2人1組は崩さないようにしましょう。ミツキ様は別ですが」
「ミツキの火力だと、逆に邪魔になっちゃうもんね!」
「そういうことだな。で、最終目的は、ウナアーダの王女に取り憑いている悪魔を殺すことだ」
「悪魔って普通の武器で死ぬわけ?」
「受肉している悪魔ならな。武器でも魔法でも殺せる」
「なら安心ね」
作戦も固まってきて、目的も決まった。
そんなところで、遂に法国とウナアーダの国境に差し掛かる。
「お前ら、そろそろ戦闘準備しとけよ」
「ここから首都まではどのくらいかかるんだ?」
「ま、ざっと2時間ってとこだろうな。そこまで広い国じゃねぇし」
「なら、最終確認といくか」
ミツキ達がそれぞれ、装備や作戦の確認をしようとした瞬間だった。
全員の視界が真っ白に染まると、5人は馬車から姿を消した。
* * *
「デニス様、侵入者の転移に成功した模様です」
ウナアーダ首都にある王城
その玉座にて、デニスとよばれる人間の姿をした男は、部下の男のその報告に気味悪い笑みを浮かべる。
「ひゃははっ! 国から出たバカが居たと思って警戒してれば、案の定来やがったか。転移先はどうなってる?」
「はい。既に何人も兵を配置しております。並の人間なら、すぐに死ぬでしょう」
「お手並み拝見ってわけだ。なぁ、おい!」
デニスが背後に言葉をかけると、そこにはガラス細工のような、精巧な顔立ちの少女が座っていた。
少女は瞳を閉じて微動だにせず、デニスの言葉にも反応しない。
「けっ、面白くもねぇ。おい、お前も行ってこい」
代わりに声をかけた先には、1本の剣を携えた騎士、アランが立っている。
「俺は、この場に留まると言ったはずだ」
「あ? 逆らう気か? 別にいいんだぞ。俺はこの女王様の命なんざ、惜しくねぇからな!」
そう言ってデニスは自らの右腕に爪を立て、血が出るほどの力で引っ掻く。
「あ、んっ!?」
すると、その背後にいた少女が小さな悲鳴を漏らしたと思うと、デニスが血を流している場所と、まったく同じ場所を手で抑える。
「わかった、言う通りにする。だから……頼む、やめてくれ」
その様子に耐えかねたアランは、奥場を噛み締めながらデニスの言いなりになる。
「最初からそうしとけばいいんだよ。おら、行ってこい」
心底楽しそうにその様子を見たデニスは、アランに近づいて肩に触れると、その場から転移させる。
「デニス様、私も行った方がよろしいでしょうか?」
「お前はここに残れ、ドルベン。お前が殺されるのが1番めんどくせぇ」
「わかりました」
「そうだ、王国への進軍はどうなってんだ?」
「順調です。魔国の軍とも合流し、明後日にでも攻撃を開始するでしょう」
「素晴らしい! 全てが順調だ!」
侵入者にも先手を打ち、王国侵略に向けての軍も問題はない。
理想の展開に、つり上がった口角が下がらない。
「この世界を征服すれば、デニス様の爵位も伯爵から上がることでしょう」
「ああ、大公になれる日もそう遠くねぇ」
伯爵の爵位を持つ悪魔、デニスは玉座に座り直し、魔法によって映し出された侵入者たちの様子を見るのだった。
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