超能力者 神本くん
1時間目
今日から新学期を迎える。
新学期はいつも新鮮な気持ちで溢れている。クラス替えが行われたことにより、新しい友人も出来るかもしれない。
2年生になるということは単純に学年が上がったということだけでは無い。部活をやっている自分達にとっては一番大切なイベントがある。後輩が出来るのだ。
どうやって、コキ使ってやろうか.......
そんなことを考えつつ、学校に到着すると昇降口のところに大きな貼り紙でクラスの割り振りが示してある。
「ふーん、俺は何組だ?」
「君は、C組だよ」
「あっ、ホントだ、サンキュー!」
「どういたしまして、君とは今年も同じクラスだね。クヒヒヒッ…」
「そういえば、お前誰だ?」
後ろから聞こえてきた声を聞きいていた為、誰が喋っているのか分からなかった。
振り返ると、そこに居たのは….
「神本、お前か…」
「久々だねぇ、守谷くん」
「クッソ、天に見放されたか…....」
「そんなことないよ、天って神様の事だろう? それ僕みたいなとこあるからね」
「何言ってるのかさっぱり分からねぇ」
神本は一年生の時同じクラスだった。最初の方はあまり喋る事もなかったが、3学期の後半からいきなり喋りかけてくると学校内ではいつも俺の周りにくっついて来やがる。
「今年は悪いがお前と絡む気がねぇ、他を当たってくれ」
そういうと、守谷は指示されていたクラスに向かって歩き始めた。
「つれないこというなよぉ〜、君と僕の仲じゃ無いか!!」
「ウルセェ、テメェにされたこと忘れた訳じゃないからな」
神本から離れる様に足早にクラスに向かう。
「今年こそは上手にやるから心配しなくて良いよ守谷くん」
「お前と絡んで俺の得になった試しがねーんだよ!!!!」
ガラガラガラ…....
教室のドアを開けると数人の顔馴染みが声をかけてくる。
「おー、守谷同じクラスだったか!」
「そうだな、知ってる奴がいてくれてよかったぜ」
いつも通りの挨拶を交わすと、黒板に示してある席へと座った。
「ふぅ、一番後ろの席か…....神本はどこの席だ?」
教室を見渡すと、神本は一番前の右の席に座っている。
「よしよしよし、これで授業中の絡みはとりあえず無くなったな」
ほっと一息つくと、隣の席に女子生徒が座った。
「えーっと、守谷くんかな?初めまして、麻里です。よよしくねっ!」
「え? よよしく?」
「よろしくだよっ! 噛んじゃっただけなんだから、そんなにツッコまないでよっ、もーっ!」
「あぁ、ごめんごめんw よろしくね!」
なんとなくに挨拶を交わした守谷であったが、照れた表情で「もーっ!」なんていじらしそうに言われてしまったら、可愛さを意識しまう。
実際、クラスにいる他の女性陣と比べてもかなり可愛い方に位置するんじゃないか?
こんな可愛い子が隣にくるなんてラッキー、守谷はそんな風に思いながら先生の到着を待っていると、
「(守谷くん、その子が好みなんだね?)」
「はっ?」
「どうしたの? 守谷くん」
「いや別に…なんでも無いよー」
「(いきなりで悪かったね、これはテレパシーだから他の人には聞こえないよ)」
「(どうなってやがる。やっぱりお前と同じクラスになるとろくな事がねぇ…)」
「(いやいや、お褒めに預かり光栄だよ!!)」
「(褒めてねぇ、それより、なんでテレパシーなんて使って来やがったんだ?)」
「(さすが守谷くん他の人に同じことをやると怖がったり、気のせいかと思ったりするのにいつも僕の期待に応えてくれるのは君だけだよ)」
「(いやいや、俺も別に最初は同じ様な対応をしていただろ、お前が去年からしつこくやってくるから大抵の事には慣れたんだよ!)」
「(クヒヒヒッ…、嬉しいよ守谷くんそうしたら僕から新学期を迎えた君にプレゼントをあげよう)」
「(おいやめろ、お前のそれでよかった試しが一度もねぇ…)」
「(今回だけだぜっ!!)」
「(今回だけって、いつも勝手にやってるじゃねーか!!)」
「や、やめろーーー!!!!!」
ついつい、口に出してしまったが、もう関係ない。
教室の一番前の一番右の席で、神本は上に向かってアンテナの様な棒を伸ばすと、何かを呟き始めた。
パリンッ!
光が教室の中を包んだかと思うと、一瞬にして消えた。
「(クヒヒヒッ…休みの間に僕もパワーアップをしてね、このレベルまではできる様になったんだよ)」
「(何が起こった、変わってねーぞ!!)」
「(すぐにわかるよ、クヒヒヒっ…)」
言われた守谷はすぐに異変がないか教室の中を見渡した….
異変は….ない。
しかしそんなはずはない、あの男が絡んで今までろくな目にあった試しがないのだ…
何が起きたんだ?
何をされたか理解が追いつかずに教室を周りの状況を確認している守谷の肩にトンっと手が置かれた。
「えっ!?」
振り返るとそこにいたのは先ほどまで会話をしていた麻里ちゃん。
「どうしたの麻里ちゃん?」
「どうしたのじゃねぇ、なんでお前が椅子なんてものに座ってるんだ? 随分な身分じゃねーか!」
あれ、さっきまでの雰囲気と違うな、口調も少しおかしいし、この威圧的な表情は何?
「わかってるんだろ? 早くしやがれ!」
「へっ?」
「へっ? じゃねぇ、そこに手をついて四つん這いになれ!」
急変した麻里ちゃんの態度に恐怖を感じた守谷は言われるがままに、机の近くに四つん這いになった。
「遅ぇぞ、今度からは言われる前にやっておけよな!」
麻里ちゃんはそういうと、四つん這いになってる守谷の上にドカッと腰をかけた。
「うぐっ......はっ?」
守谷は意味が分からなそうに戸惑っていると....
ガラガラガラ…....
教室に担当となるであろう先生が入っていた。
「あらあら、聞いてはいたけど、麻里ちゃんと守谷くんは本当に仲良しなのねっ」
「はっ? 別にそんなんじゃねーよ!!」
少し動揺した様な照れを含んだ声質で先生からの返答を返した。
ど、そうゆう事だ? 仲がいいもクソもないこの状況下で、しかも聞いていたって、今年初めて喋った相手だぞ!?
「(仕方ないなぁ、守谷くんは…説明してあげようか?)」
「(そうだった、お前がやったんだよな!?どうやったらこんな状況になるんだ!!)」
「(説明しよう!! 麻里ちゃんに心惹かれてることはわかったからね恋のキューピットをやってあげたんだ)」
「(恋のキューピット?)」
「(そうだよっ! 麻里ちゃんが君のことを大好きにしてあげたんだ!)」
「(それでどうしたらこんな状況になるんだ?)」
「(ついでに、君がドMである事は親御さんから聞いていたからね! SMクラブの女王様と同じ様な性格に麻里ちゃんも変えといてあげたよ、ドヤァ!!)」
「ドヤァ!! じゃねぇ!このクソ野郎が!」
「誰に向かってそんな汚い言葉を使っているのかしら?」
バシンッ!
「痛ってーーーー!!! どこからそんな鞭出したんだ? け、ケツが割れる…...」
「(うーん、楽しそうだねぇ、僕も混ぜてもらえる設定にすればよかったかな?)」
「ふざけんなぁあああっっっーーー!!!」
こうして守谷の波乱の新学期が幕を開けた!!
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