寺生まれのざーさん
猿夢
私、局家浜名は、八幡旗高校に通う高校三年生だ。件の事件が起こり、図らずも長期の休暇を得た私は何処かに出掛けるでもなく家で勉強をしていた。
山ほどある塾の宿題を全て終わらせた頃には夜中の一時を回っており、私はいつもと同じように電気を消し就寝した。
「あれ…?ここは…?」
唐突に意識が覚醒する。驚いて辺りを見回すとそこは寂れた駅だった。
突拍子もない光景に、私はすぐにこの場が夢の世界であることを察した。
明晰夢を見るのは初めてなので半ば興奮しながら自分にできることを確認していると、
遠くからメルヘンチックな音楽が聞こえてきた。夢の国や水瀧敬ランドで流れてそうな音楽はどこか、この駅とはミスマッチに思え不気味に感じた。
段々と音が近づいてくる。音の方向をみやると、これまた寂れた電車がやって来た。
その電車はいつも私たちが使っているようなものではなく、遊園地などで見かけるお猿さん電車の様な装丁をしていた。更に既に乗客がいるのも確認できた。
そして私は初めて見た明晰夢を堪能したいという一心でその電車に乗り込んだ。
中に入り空いている席に座り、暫く待つと、天井に備えられたスピーカーから
「出発します~。」
との声が聞こえ、電車は動き出した。
電車内には生暖かい空気が流れており、あまり居心地はよくなかった。
「次は活け作り~活け作りです。」
とアナウンスが聞こえてくる。
どういうことかと私が首をかしげていると、後ろからけたたましい叫び声が聞こえてきた。
何事かと振り向くと、乗客の男性が小人に腹を切り裂かれて、臓物や血を飛び散らせていた。こぼれ落ちる内蔵を泣きながら腹にかき戻そうとするもうまくいかず、男性はさながら活け作りのようにされてしまった。
その光景をみて、私はすぐに夢から覚めようとする。
「次はひき肉~ひき肉です。」
しかし、覚めない。調理は後ろの席から順に行われているようで、私の番はまだ遠い。
「次はえぐりだし~えぐりだしです。」
「次は針切り~針切りです。」
「次は~…」
何度試みてもこの悪夢を逃れることができない。
「次は飾り切り~飾り切りです。」
私の一つ後ろにまで順番は回ってきていた。
私は全てを諦め、せめて楽な死に方が良いと、目を閉じて祈っていた。
「うるさいんじゃ阿呆、お前はぁ^~!」
どこかで聞いたことのある声。
この声は。この独特な伸ばし方の声は。
振り返るとそこには、煙草を片手に佇む痩せ形の男。
英語教師でヘビースモーカー。絶賛全国指名手配中の寺生まれ、桶狭間宗次郎ことざーさんがそこにいた。
小人はざーさんを細切れにせんと飛び掛かってくる。
「消えろ糞餓鬼!顔も見たくない!」
そう叫ぶとざーさんの体からヤニ臭くも美しい光が溢れ出す。
「破ぁ!!」
その瞬間、光は全てを包み込み、消滅させる。小人も、電車も、夢自体さえも。
もちろんアナウンスをしていた車掌も死んだ。
光の余波は、私や私の前の席に座っていた人達の体から放出され半径20㎞圏内の全てを粉に変え、やがて行き場を失い旅客機を3機撃墜しながら宇宙へと飛び立っていった。
あれから一週間後。夢が無理やり破壊されたことにより、私の脳には大きな負荷がかかりその機能の凡そ半分を失った。しかしそれでもどうにか一命をとりとめ、今は病院で集中治療を受けている。
更地となった私の町の写真を見ながら私はこう思った。
「寺生まれってすごい。」
山ほどある塾の宿題を全て終わらせた頃には夜中の一時を回っており、私はいつもと同じように電気を消し就寝した。
「あれ…?ここは…?」
唐突に意識が覚醒する。驚いて辺りを見回すとそこは寂れた駅だった。
突拍子もない光景に、私はすぐにこの場が夢の世界であることを察した。
明晰夢を見るのは初めてなので半ば興奮しながら自分にできることを確認していると、
遠くからメルヘンチックな音楽が聞こえてきた。夢の国や水瀧敬ランドで流れてそうな音楽はどこか、この駅とはミスマッチに思え不気味に感じた。
段々と音が近づいてくる。音の方向をみやると、これまた寂れた電車がやって来た。
その電車はいつも私たちが使っているようなものではなく、遊園地などで見かけるお猿さん電車の様な装丁をしていた。更に既に乗客がいるのも確認できた。
そして私は初めて見た明晰夢を堪能したいという一心でその電車に乗り込んだ。
中に入り空いている席に座り、暫く待つと、天井に備えられたスピーカーから
「出発します~。」
との声が聞こえ、電車は動き出した。
電車内には生暖かい空気が流れており、あまり居心地はよくなかった。
「次は活け作り~活け作りです。」
とアナウンスが聞こえてくる。
どういうことかと私が首をかしげていると、後ろからけたたましい叫び声が聞こえてきた。
何事かと振り向くと、乗客の男性が小人に腹を切り裂かれて、臓物や血を飛び散らせていた。こぼれ落ちる内蔵を泣きながら腹にかき戻そうとするもうまくいかず、男性はさながら活け作りのようにされてしまった。
その光景をみて、私はすぐに夢から覚めようとする。
「次はひき肉~ひき肉です。」
しかし、覚めない。調理は後ろの席から順に行われているようで、私の番はまだ遠い。
「次はえぐりだし~えぐりだしです。」
「次は針切り~針切りです。」
「次は~…」
何度試みてもこの悪夢を逃れることができない。
「次は飾り切り~飾り切りです。」
私の一つ後ろにまで順番は回ってきていた。
私は全てを諦め、せめて楽な死に方が良いと、目を閉じて祈っていた。
「うるさいんじゃ阿呆、お前はぁ^~!」
どこかで聞いたことのある声。
この声は。この独特な伸ばし方の声は。
振り返るとそこには、煙草を片手に佇む痩せ形の男。
英語教師でヘビースモーカー。絶賛全国指名手配中の寺生まれ、桶狭間宗次郎ことざーさんがそこにいた。
小人はざーさんを細切れにせんと飛び掛かってくる。
「消えろ糞餓鬼!顔も見たくない!」
そう叫ぶとざーさんの体からヤニ臭くも美しい光が溢れ出す。
「破ぁ!!」
その瞬間、光は全てを包み込み、消滅させる。小人も、電車も、夢自体さえも。
もちろんアナウンスをしていた車掌も死んだ。
光の余波は、私や私の前の席に座っていた人達の体から放出され半径20㎞圏内の全てを粉に変え、やがて行き場を失い旅客機を3機撃墜しながら宇宙へと飛び立っていった。
あれから一週間後。夢が無理やり破壊されたことにより、私の脳には大きな負荷がかかりその機能の凡そ半分を失った。しかしそれでもどうにか一命をとりとめ、今は病院で集中治療を受けている。
更地となった私の町の写真を見ながら私はこう思った。
「寺生まれってすごい。」
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