寺生まれのざーさん

ケッキング祖父

濡れ衣

俺の名前は馬場正幸うまばまさゆき八幡旗やはたはた高校に通う高校三年生だ。
受験生として多忙な日々を送っている俺には、1つだけ重大な問題があった。

「おい馬場!お前のせいで僕は蟻山さんに嫌われちゃったじゃないか!」
俺が朝、学校に登校すると、面識のない男子生徒必死の形相で迫られた。
「僕はお前のせいで通販でジョークグッズを買って夜な夜な励んでることが皆にばれたぞ!」
「俺は…」「私も…」
それと同時に何人もの生徒が僕に絡んでくる。
そう。これこそが僕の悩みなのだ。
もちろん、彼らが言うようなことは一切していないし、覚えもない。
つまり、濡れ衣を着せられているのだ。
しかも不思議なことにどれだけ言い分が理にかなっていなくとも、誰もが疑うことなく俺のせいだと信じきっている。

俺は押し寄せる生徒たちを軽くいなして自分の席に座り始業を待つ。

その時。僕の席の脇を一人の男子生徒、名前を清水という男が通り抜けて行き、一番前の席に座っていた女子生徒の首を思い切りチョップした。

べきっ。

枯れ枝を戯れに折った時のような音がした。
目の前には女子生徒。しかし、首が90度近く曲がっている。
教室は静まり、まだ事態を把握できていない廊下の方から笑い声が聞こえてきた。

数瞬おいて教室内は騒然とした。
立ち尽くす者、女子生徒に駆け寄る者、週間少年ジャンプを食う者、
各々が感情のままに行動する。
しかし、混沌も数分で鳴りを潜め、
そしてクラスの全員が、

僕を見た。

まずい。そう思ったときにはもう遅かった。
全員が俺を憎悪の目で見ていた。
「待て!俺はやってない!そこで突っ立ってる清水がやったんだろう!?皆もみたはずだ!」
そういっては見るが今までの経験から話は通じないだろう、と直感的に理解していた。
諦めるように目を伏せたその時、

がらららっ

教室の引き戸が開く音がした。
「なんの騒ぎだ。」
そこに現れたのは、俺たちのクラス担任の桶狭間宗仁郎おけはざまそうじろうだった。
彼はこの八幡旗高校の英語教師でヘビースモーカー、そして由緒正しい寺社の息子だった。愛称はざーさんである。
ざーさんは教室をぐるりと見渡し、死んだ女子生徒、そしてクラスの連中に目を向けた。そしてなにかを悟ったように目を伏せ、

「破ぁ!!」

急にざーさんは叫び声をあげ、てを上空にかざした。すると光の棒が幾重にもわかれ、生徒たちに飛び込んで行く。その光は先だけが赤く光り、さながら煙草のようだった、
クラスの全員が悶え苦しみながら消滅し、その場に残ったのはざーさんと俺、女子生徒の死体と食いちぎられたジャンプだけだった。

その後、ざーさんと俺は殺人の容疑で逮捕され、死刑を宣告された。

しかし、風の噂によるとざーさんは煙草を吸いたいがあまり、看守を殺して脱獄したらしい。

     寺生まれってすごい。

俺は天井から吊り下がる縄を見ながらそう思った。


コメント

  • オナ禁マッスル

    1話完結なんですか!?

    0
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