世界は繰り返す

狼眠_ロミ

Ep.0 終わりの始まり

かつて、この世界には勇者が居た。

頼りになる仲間と共に魔物の軍勢を切り伏せ、魔王の支配下に置かれた村や街を次々と救い、強大な力を持つ魔王を打ち倒し、人々に平和をもたらした。

そんな伝説を持つ勇者が、居た。



かつて、この世界には魔王が居た。

数多の魔物を統べ、世界を我が手中に収めようと暴虐の限りを尽くして人々を苦しめ、最期は勇者に打ち倒された。

そんな伝説に残る魔王が、居た。


勇者が救った世界は永い間平和と安寧に包まれ、大きな厄災も無く人々は恙無つつがなく暮らしていた。
しかし、世界は永劫とも思える平和を良しとしなかった。
善と悪はコインの表と裏。どちらかが失われれば、もう一方も成り立たなくなる。世界はそれを恐れた。
そして、世界は考えた。光のみでは世界は成り立たない、と。
不幸や絶望の存在が人々から遠くなれば、幸福や希望のみが残され、それ等へ対する喜びが必ず薄れゆく、と。

均衡を取り戻さねばならない、と。

世界は壊した。永きにわたる安寧の時を。
目に見える変化はまだ無い。ゆるりとした変化が顕現する時はいずれ訪れる。


世界の意思に反応し、その意思を実現せんとする存在が、人知れず目を覚ました。
そして、粛々と暗躍を始める。


勇者がもたらした平和を清算し、バランスを取るには一体どれ程の絶望を迎えねばならないのか。世界は静かに思案する。



--人々よ、これが私の…世界の意思なのです--

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