万分の一の確率でパートナーが見つかるって、そんな事あるのか?

Gai

もう少し人生を楽しみたいんで

「少年よ、意識はあるか」

「・・・・・・意識はある。ただ、周囲の状況と目の前にいる神々しい爺さんが映っている俺の目が正常なのか気になる」

少年は自分に話しかけたお爺さんが人間には見えなかった。

(つーーか、頭の上に輪っかがあって後ろに羽が付いていて、杖を持っている時点でリアルに存在する人じゃないよな。そもそも人でも無いよな)

「気になるのはそこなのか。何故自分がこんな場所にいるのかは気にならないのか?」

「・・・・・・・・・・・・死んだんだろ、俺は。死因は多分鉄柱を頭にぶつけて」

少年は目の前の光景により自分の眼や頭が可笑しいのかと疑っている反面、少し前の自分の状況を考えるとここがどういった場所なのか見当は付いている。

「それで・・・・・・ここは天界か何かか?」

「まぁ、その解釈で合ってはいる。少年は人を助けて死に、その魂が今ここにある。今の少年は状態は霊体みたいな物だな」

「・・・・・・確かに体の感覚は無いに等しいな。妙にフワフワしているし。それで、俺はこれからどうなるんだ? 天国に行くのか? 地獄に行くような悪さはしていないと思うんだけどな。それとも記憶が真っ新になって生まれ変わるのか」

自身が死んだというのに未練を感じさせず先を見ている少年に対して、お爺さんは不思議に思いながら質問をした。

「少年は未練という物はないのか? まだ高校生だろ。もっと青春を楽しみたい時期の筈じゃろぅ。何故そんなにスッパリと割り切れているのだ?」

無表情な少年は別に割り切れてはいない。ただ、意識が無くなる前の光景はしっかりと覚えていた。

「未練がない訳では無い。それなりに楽しかったからな。ただ、俺が助けた人は生きているんだろ。怪我無く」

「ああ、勿論だ。少年が文字通り命を懸けたお陰で怪我は無い」

「それなら俺も命を懸けた甲斐があるってもんだ。それが分かったらもう殆ど未練はない。気持ちが変わってしまう前に早く俺の処遇を決めてくれ」

「・・・・・・・・・・・・はっはっは、はーーっはっはっは」

突然高笑いをし出したお爺ちゃんに驚いた少年は思わず後退りしてしまう。

「どうしたんだ爺さん。変な物でも食べたのか?」

「ここに人を急に笑わせるような食い物はない。少年・・・・・・お主本当に面白いな。どうだ、もう一度人生を送ってみないか? 今度は今まで生きて来た世界とは全く違う世界でだ」

「全く違う世界、か・・・・・・・・・・・・その世界では、金と権力を除いて何か重要な物ってあるのか?」

お爺ちゃんからの提案に少年は直ぐに乗り気にはなった。
未練は殆ど無くても、もう一度人生を送る事が出来るならそうしたいという思いはある。

ただ、もう一度人生を送れる世界がどういった世界なのかは知りたい。

「単純に言えば力だ。魔法や武器なんかが普通に使われている世界だ」

「魔法に武器か・・・・・・ド〇クエみたいな世界か?」

「そんなところだ。魔王なんて存在はいないけがな・・・・・・さて、どうする。赤子に戻って二度目の人生を送るか、それとも天国に行って不自由はないが刺激を感じられずに過ごすか・・・・・・お前はどちらを選ぶ?」

両手を横に広げて選択肢を尋ねるお爺さんに対し、少年は不敵な笑みを浮かべて答える。

「勿論・・・・・・違う世界でもう新しい人生を送らせてくれ」

「即答だな、少年・・・・・・よかろう。お主をこれから今まで生きて来た世界とは全く異なる世界・・・・・・異世界へと転生させよう。その前に少年、このサイコロを振ってくれ」

何もない空間からサイコロと杯を取り出したお爺さんは少年にサイコロを渡した。

なぜそんな事をするのか少年は全く分からないが、必要な事なのだろうと思って直ぐにサイコロを杯の中で転がす。

出た目は三だった。

「ほほぅ、三か・・・・・・まぁ、妥当だな」

「これ、何か意味があるんですか?」

「そうだな・・・・・・お主の場合だと、そう遠くない内にこの三という数がどういう物なのかが分かる。さて、これからお主を転生させる。今度は老衰できるよう頑張るんだぞ」

「老衰って・・・・・・難しそうだが、頑張ってみるよ」

少年の足元が光り始めると同時に少年の意識は薄れていった。

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