異世界転移治療録 神とゴブリンと病院の卵

雲と空

11話 首の管の処置物品を頼もう

 それはそれとして、操作を続行してもらう。
 他のシャワー室とトイレ、厨房なども入れてもらった。
 ダレンさんがタブレットを操作すると、ガタンと音がした。
 部屋の奥の壁にドアがスーっと現れた。やっぱり、青いドア。創った人の好きな色は青かな。
 シャワー室とトイレだと思う。


 トイレは水洗トイレで、元の世界のものと遜色がない。
 シャワー室も一人用で狭いけれど、普通に使えそう。
 シャワー室の前に、更衣室があって、脱いだものを置いておく棚と、壁にランドリーボックスがついている。洗うものと洗わないものを区別するためなのかな。
 ランドリーボックスとわかるのは、カタカナでランドリーボックスと書いてあるからだ。
 誰か洗ってくれるんだろうか。
 洗ったものは、どっから返ってくるの・・・と思ったら。
 洗濯済み返却ボックスというのもある。
 やっぱ、異世界の魔法テクノロジーなんだろうか。
 洗濯機は見た限りだと周りにないし。
 外で洗濯物を干していたら、スライムに食べられてしまいそうだ。
 「ダレンさん、洗濯物はやっぱ魔法で洗ってくれるんですか?洗濯物を外に干しておいたら、危なそうですし・・・」
 「危ないというのは、下着泥棒?男の下着を盗む人なんているんですか?」
 「いや、ランドリーボックスがあって洗濯機がなくて、洗濯返済み返却ボックスがあるから・・・」
 「えっと・・・、そうですね。洗濯物はランドリーボックスに入れて、日付が変わると洗濯されて、洗濯済みボックスに移動するらしいですよ」
 「便利そうで、不便~。朝入れたら、できるのは真夜中じゃないですか」
 「大丈夫です、ちゃんと畳まれて出てきますから」
 「そういう問題じゃなくて、時間がかかり過ぎ・・・。でも、夜に洗濯しても真夜中にできるのか。それは便利だけど、クセが強い仕様だな~」


 シャワー室はなぜかショッキングピンク。どういう趣味しているんだろう。
 まるで、ビジネスじゃない方のホテルにあるやつみたいだ。
 男3人でいるにしては・・・いや、そうじゃなくてもやめてほしい。
 色の趣味はともかく、つくりとしては申し分ない出来だから・・・ま、いいか。


 厨房はよくわからないけれど、壁にパネルが出た。


 「それじゃあ、透析設備も作れるんですね。あと、シリンジと生理食塩水とヘパリンと・・・」
 「なにそれ?透析設備?」
 今まで、何も言わなかったのに、急に入ってきた。


 はは~ん、寂しかったんだな。可愛いやつめ。
 そういえば・・・何も説明してなかった。


 「えっと・・・、お兄ちゃんな、腎臓が悪いから。首の管から血液を出して洗って戻さないと、2週間くらいで死んじゃうの」


 「死んじゃうの?」
 「そう。だから、この不思議な病院の卵で血液を洗う設備を作って、なんとか死なないようにして・・・、最終的には腎臓を元通りにしたいんだ」


 「そのために、モンスターを倒すんだね。それは、できそう・・・」
 「うん、俺にも、ダレンにもできないから、よろしくお願い」
 「わかった」
 「それと・・・今日はもう済んでるから、明日でいいんだけど頼みがあるんだ」




 「なに?」
 「この・・・首の管の処置をしてくれないかな」
 今は、ガーゼにくるまっているけれど、透析用の管がテープで固定してある。
 「なにそれ?」


 「これは、血液を洗うために必要な管なんだ。この管は血管を通って心臓の近くまで入ってるんだけど、何もしないと詰まっちゃうんだよ。詰まると、血液を取り出して洗っても、身体に戻せないだろ?」


 「何すればいいの?」
 「1日1回この管の中に入っている液体を吸い出して、捨てて・・・また、新しく薬を入れ直して欲しいんだよ。処置は簡単だから、覚えて欲しいんだけど」


 「うん・・・わかった」


 ところで、それに必要な物品や薬は用意できるんだろうか。エネルギーはどれだけかかるんだろうか。


 「ダレンさん。10㏄のシリンジと、20㏄の生理食塩水。ヘパリン5㏄って出せます?」


 「ちょっと待ってください。リストにあれば出せますよ。残り100ポイントの範囲内なら」


 「お願いします・・・。ああ、そうだ。ガーゼとかの保護剤と固定用テープ、消毒液もお願いします」


 「えっと、とりあえず・・・10ccのシリンジが100本入りで1箱と、ヘパリン5000単位 5mlが5個入りを4箱。20ml生理食塩水×50個入り1箱でいいですか?」


 「それでお願いします」


 「固定用テープは12個入りを1箱と、ガーゼは8つ折り滅菌ガーゼ5枚包装20個入りを5箱・・・保護フィルムは救急絆創膏防水フィルム60mm×90mmパッド付き50枚入り1箱、22ゲージ注射針100本入り10箱、消毒はスワブスティックポピドンヨードM60包入り2箱。三方活栓のキャップのみ100個入り1箱、プラスチックグローブS、Mそれぞれ100枚入り2箱ずつでいいですか?」


 「あ、手袋もでした。三方活栓の蓋?ああ、カテーテルの蓋に使うやつですね。色々、足りないものまですみません。ダレンさん・・・それでいいのですけど。よくそこまで、病院で発注してるのと同じ規格のものがありますね」


 「いや、このタブレットで透析用の処置で検索したら、物品おすすめが出てきました。言ってる処置はこれかなって思って、選択したのが今の内容です」


 「ポイント足りそうですか?」


 「全部で75ポイントです」
 「透析設備は?」
 「入ってません、というか、選択不可。ポイントがたくさん必要みたいです」


 「残り25ポイントか・・・明日も、モンスターを倒しに行かないとかな」
 「それは、いかないとダメでしょう・・・透析の機械がないと透析できないのでは?」
 ポンっとダンボールが玄関の前に現れた。
 結構、大きいダンボールだ。
 みかんのダンボールより、まだ大きい。
 うん、きちんと不足なく入ってる。欠品や不良品があったら、誰に言うのだろう。
 だけど、置き場がない。棚もないし・・・。段ボールごと端っこに置いておいて、必要な分だけ開けて使えばいいか。


 ゴブリンを呼び寄せて、一緒に中を見てもらう。
 「こういう物品を使うんだよ」
 「なんだか、難しそう」
 「説明しながら、やってもらうから大丈夫」


 でも、処置した時の医療廃棄物とかどうやって捨てればいいのかな。
 「ダレンさん。ゴミの処理についてなんか書いてないですか」
 「えっと・・・ゴミの処理に関してはマジックアイテムの医療廃棄物BOX、一般廃棄物BOX、残飯処理BOXを設置してご使用ください」


 「何ポイント?」
 「10ポイントです」
 「なんか、ポイントの基準がよくわからないんですけど」
 「えっと~、気分で決めてるって言ってましたよ」
 「気分か~、悪魔らしいですね」
 神様だといい加減な気がして、悪魔だとそれっぽいな~と思うのは、差別だろうか。
 むしろ、気分で決めている悪魔の方に好感に近い感情が持てる。





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