異世界転移治療録 神とゴブリンと病院の卵
1話 女神と使い
《異世界境界線を越えました》
(異世界境界線?)
「アタシの担当の世界へようこそ」
「ようこそ、よくきましたね、小林直樹さん」
声がする方を見ると、女の人と男の人が3メートルくらい先に立っていた。
「だれですか」
女の人は、黒い服でふわふわとした服を着ていて、杖っぽいものを持っている。あちらこちらに、デフォルメしたドクロの模様が描かれている。なんだか、ものすごい美人だと思う。どういう風に、とは言えないけれど、見とれてしまう美しさがある。
男の人は白い服を着ていて、片手に本みたいなもの。顔は細長くて頭には毛がない。くるんとしたヒゲを生やしている。
「アタシはこの世界を担当する女神ドロシーだよ」
「ワタクシは使いの者でレダンと申します」
「条件が満たされたから、異世界転移されたんだよ」
「異世界転移?」
「それで、小林さんはこの世界を選んで、いらっしゃった。今年の条件は、6という数字を一定個数集めた高エネルギー生命体でしたっけ」
そういえば、やたらに6をたくさん目にしたような気がする。
「転移というか徒歩なんだけどね~」
「異世界選択の草原で、選んだ方向が転移する世界なんです。偶然選んだかもしれないですけど、偶然も運命ですから」
「でも、いいんですか?自分は・・・長くないですよ。」
「なにがですか?」
「命です。多分、人工透析を受けないと・・・腎臓が悪いので。やらずに持って2週間くらいの命ではないでしょうか」
「ああ、確かにね~。アタシが見る限り、強いエネルギーが入ってるね。強すぎて腎臓がダメになってる。あと、強いエネルギーがあるせいで、血液の中のものが上手く身体に取り込めないみたいだよ」
「なるほど、だからこそ異世界転移の対象になったのかもしれないですね。その世界の異質なものを他の次元の世界に転移させて安定を保つためにあるシステムですからね。主にエネルギーが高い存在は引っかかりやすいですから」
「だから、せっかく歓迎して頂いても歓迎するだけ無駄なんです」
「ドロシー様。異世界転移特典は病気の治療にしたらどうですか?」
「うるさいねえ。アタシも考えていたところだよ。でもね、アタシの異世界転移特典の項目に病気の治療はないんだよ」
「ドロシー様って、案外使えないんですね」
「は?今なんて言った?」
「いえ、何も言ってないですよ」
「今、いったろ?ちゃんと聞こえてんだかんな。この、ボケ、ヒゲ、ハゲ、頭がまぶしいんだよ」
「ひどいこと言いますね、今度、ドロシー様を信仰している美容院に行って、スポーツ刈りにしてくださいって嫌がらせしてやりますからね」
「・・・」
「ほら、小林さんが引いちゃってますよ。折角、趣味が変だけど、美人だとか思ってたのに・・・。変な噂を流されて、信仰を失ってしまえ」
「趣味が変は余計だよ!どうして?ドクロンちゃんかわいい~」
「・・・」
「いっそのこと、すんごい秘薬を渡して治してもらうとか、どうです?」
「ああいうのは大体が腎臓で代謝されるから、小林のように腎臓が壊れているとダメなんだよ。副作用で命が危ないよ。危なくてもいいか・・・いや、神様消費ポイント高いしな」
「秘薬って、腎臓で代謝されるものは危ないんですか、初めて知りました」
あーでもこーでもないと、二人は話し合っている。
だんだん、疲れてきたな。
「ドロシー様、真面目に考えてますか?さっきから言ってることおかしいですよ」
ふと、女神様が思いついたように顔を上げる。
「そうだ、レダン。アンタに任せる。頭いいんだろ?」
「はい?」
「色々、転移者には優遇措置をする決まりは知ってるだろ?だから、アタシじゃなくて、レダンが優遇してあげなよ」
「言ってる意味が分かりませんが・・・。ワタクシにはドロシー様のような権限はありません。スキルも与えることができませんし、強い武器も与えられないんですよ」
「だからさ。・・・そうだな。病院みたいなのを建ててあげるよ。建てるから、治せるように一応頑張ってみればいいじゃんか。もし、アタシが援助をしても生かせないのだったら、援助したのが無駄になってしまうだろう?」
「それじゃあ、折角この世界にいらした小林さんを見殺しにするんですか?」
「見殺しにはしないよ。病院は建てるって言ってるじゃないか。ゴブリンも一匹つけるよ。レダンがいれば大丈夫だよ。レダンを信用してるからじゃないか。うん、そうだ、そうしよう」
「・・・ドロシー様」
「アタシは忙しいんだよ。じゃあね」
「レダンさん・・・」
レダンさんの表情は曇っていて、どこか悲しそうだ。
女神ドロシーが瞬間移動のようなものでサッと消えると、今までの星空が一斉に引いて行った。
景色はぐるぐると回って、変わっていった。
森の中の開けた場所に出た。
(異世界境界線?)
「アタシの担当の世界へようこそ」
「ようこそ、よくきましたね、小林直樹さん」
声がする方を見ると、女の人と男の人が3メートルくらい先に立っていた。
「だれですか」
女の人は、黒い服でふわふわとした服を着ていて、杖っぽいものを持っている。あちらこちらに、デフォルメしたドクロの模様が描かれている。なんだか、ものすごい美人だと思う。どういう風に、とは言えないけれど、見とれてしまう美しさがある。
男の人は白い服を着ていて、片手に本みたいなもの。顔は細長くて頭には毛がない。くるんとしたヒゲを生やしている。
「アタシはこの世界を担当する女神ドロシーだよ」
「ワタクシは使いの者でレダンと申します」
「条件が満たされたから、異世界転移されたんだよ」
「異世界転移?」
「それで、小林さんはこの世界を選んで、いらっしゃった。今年の条件は、6という数字を一定個数集めた高エネルギー生命体でしたっけ」
そういえば、やたらに6をたくさん目にしたような気がする。
「転移というか徒歩なんだけどね~」
「異世界選択の草原で、選んだ方向が転移する世界なんです。偶然選んだかもしれないですけど、偶然も運命ですから」
「でも、いいんですか?自分は・・・長くないですよ。」
「なにがですか?」
「命です。多分、人工透析を受けないと・・・腎臓が悪いので。やらずに持って2週間くらいの命ではないでしょうか」
「ああ、確かにね~。アタシが見る限り、強いエネルギーが入ってるね。強すぎて腎臓がダメになってる。あと、強いエネルギーがあるせいで、血液の中のものが上手く身体に取り込めないみたいだよ」
「なるほど、だからこそ異世界転移の対象になったのかもしれないですね。その世界の異質なものを他の次元の世界に転移させて安定を保つためにあるシステムですからね。主にエネルギーが高い存在は引っかかりやすいですから」
「だから、せっかく歓迎して頂いても歓迎するだけ無駄なんです」
「ドロシー様。異世界転移特典は病気の治療にしたらどうですか?」
「うるさいねえ。アタシも考えていたところだよ。でもね、アタシの異世界転移特典の項目に病気の治療はないんだよ」
「ドロシー様って、案外使えないんですね」
「は?今なんて言った?」
「いえ、何も言ってないですよ」
「今、いったろ?ちゃんと聞こえてんだかんな。この、ボケ、ヒゲ、ハゲ、頭がまぶしいんだよ」
「ひどいこと言いますね、今度、ドロシー様を信仰している美容院に行って、スポーツ刈りにしてくださいって嫌がらせしてやりますからね」
「・・・」
「ほら、小林さんが引いちゃってますよ。折角、趣味が変だけど、美人だとか思ってたのに・・・。変な噂を流されて、信仰を失ってしまえ」
「趣味が変は余計だよ!どうして?ドクロンちゃんかわいい~」
「・・・」
「いっそのこと、すんごい秘薬を渡して治してもらうとか、どうです?」
「ああいうのは大体が腎臓で代謝されるから、小林のように腎臓が壊れているとダメなんだよ。副作用で命が危ないよ。危なくてもいいか・・・いや、神様消費ポイント高いしな」
「秘薬って、腎臓で代謝されるものは危ないんですか、初めて知りました」
あーでもこーでもないと、二人は話し合っている。
だんだん、疲れてきたな。
「ドロシー様、真面目に考えてますか?さっきから言ってることおかしいですよ」
ふと、女神様が思いついたように顔を上げる。
「そうだ、レダン。アンタに任せる。頭いいんだろ?」
「はい?」
「色々、転移者には優遇措置をする決まりは知ってるだろ?だから、アタシじゃなくて、レダンが優遇してあげなよ」
「言ってる意味が分かりませんが・・・。ワタクシにはドロシー様のような権限はありません。スキルも与えることができませんし、強い武器も与えられないんですよ」
「だからさ。・・・そうだな。病院みたいなのを建ててあげるよ。建てるから、治せるように一応頑張ってみればいいじゃんか。もし、アタシが援助をしても生かせないのだったら、援助したのが無駄になってしまうだろう?」
「それじゃあ、折角この世界にいらした小林さんを見殺しにするんですか?」
「見殺しにはしないよ。病院は建てるって言ってるじゃないか。ゴブリンも一匹つけるよ。レダンがいれば大丈夫だよ。レダンを信用してるからじゃないか。うん、そうだ、そうしよう」
「・・・ドロシー様」
「アタシは忙しいんだよ。じゃあね」
「レダンさん・・・」
レダンさんの表情は曇っていて、どこか悲しそうだ。
女神ドロシーが瞬間移動のようなものでサッと消えると、今までの星空が一斉に引いて行った。
景色はぐるぐると回って、変わっていった。
森の中の開けた場所に出た。
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