異世界転移治療録 神とゴブリンと病院の卵
2話 病院の卵
景色はぐるぐると回って、変わっていった。
森の中の開けた場所に出た。
「小林さん申し訳ない。女神があんなので」
「レダンさんが謝ることじゃないですよ」
レダンさんはピカピカのハゲ頭を下げて、謝ってきた。太陽が反射して眩しい。
「やめてください、本当に(まぶしいので)」
そういえば、これからどうするんだろうか。
たくさん時間が経ったように感じたけど、太陽はまだ上の方にいる。
ここに、病院が建つのかな。
「女神様とは長いんですか?」
「高校が一緒です」
「高校?神様にも高校があるんですか」
「いろいろな世界があるんですよ。神として生まれても、初めから立派な神じゃないんです。小学校を出て、中学校を出て高校を出て、ようやく仕事を任されるんです」
「神様って、学校出るんですね。大学とかはないんですか」
「大学?その上、ということですか。そういうのは、ないですね。神様ポイントを膨大な量貯めれば、一つの世界の管理者を任されます。試用期間ですけどね。それで問題なければ、自分の世界作成権と管理権が認められて・・・実績が認められると、階級が上がっていくらしいです。階級のことは下っ端なのでよくわからないですけどね」
「え?女神様はどうして、管理者なんですか?」
「ドロシー様のお父上が神様として階級の高い方でして。高校を出た時のお祝いに、世界管理権の試用期間が受けられるようなポイントを神様協会に払い込んだそうです」
「親の力・・・。結局、神様もお金次第なんですね」
「お金・・・ああ、神様ポイントも通貨ですからね。そういう言い方もできるのか」
「女神様は、俺に何か与えたりするのがもったいないと思ったんですね」
「そう・・・・・・みたいですね」
「死んでほしいと思ってるんですかね」
「まあ・・・その辺はどうでしょうね」
そんなことを話しているうちに、後ろの方でボワンと煙が起こった。
きっと、病院ができたんだろう。
・・・これ、本当に病院?
四角い、ほんとに真四角な箱があるだけ。
大きさは2メートルくらい。立方体だから、2立法メートル?
入口はどこ?
「レダンさん?」
「なるほど・・・これなら、神様ポイントかからないな」
「レダンさん・・・?」
「これはですね、病院には違いないです。違いないですけど・・・。小林さんはモンスターと戦わないと中に入れません」
「どういうことですか?」
「この建物は、病院の卵みたいなものです」
「卵?」
「建物の横に、操作盤があるんですよ。そこのボタンを操作して倒したモンスターを吸収させるんです」
「へえ・・・吸収」
「モンスターってね、神様がこの世界に生きる存在が成長するように創ったと言われているんです。でも、それは建前で、・・・本当はただ眺めているとつまらないからだそうです」
「神様って、暇人なんですね」
「まあ、腐るほど時間がありますからね。モンスターを倒し続けることが、生き物にとって生きるのに必要なことで、同時に神様を楽しませているんです」
「神様って・・・尊敬できないかもしれません」
「でも、そんな時に神様のそういった考えが気に入らない悪魔がいました。まあ・・・悪魔ですからね、真面目な悪魔です。その悪魔はモンスターを倒すことで、逆に神様への冒涜へつなげられたらどうか、と考えたんです。その末に創り出したのが、この〈病院の卵〉です」
「医学が神様への冒涜・・・なるほど。血液を洗浄して身体に入れたり、心臓の弁を機械で置き換えたり・・・確かにね。病院の卵って悪魔が作ったなら、高そうですけど。安いんですか、意外ですね」
「ええ、たくさん数がありますから。買う必要もないです。この世界の人間には操作が難しいでしょうし、スライムをはじめに吸収させないと入り口も開きません。そして、この病院が治療をできるようにするためには、モンスターの死体がたくさん必要と・・・」
「めんどくさい設定なんですね」
「それに、この世界には回復術という魔法がありまして、大体の怪我は治ってしまいます」
「病気よりも傷のほうが需要は多そうですね。疫病もありそうだけどな」
「薬はありますよ。簡単な薬学ならね。でも、良い薬というのは魔力の込められた薬です。まさに、それは医学ではなくて、魔法学が発展しているということなんです」
この世界は医学より魔法の方が上なのか。
モンスターが居るくらいだから、それっぽい。
「この〈病院の卵〉のことを多くの神様は信仰する人々に、よくないものだと説明したから、近づく人はあまりいませんでした。他の悪魔族もなんとか利用しようとしましたけれど、見た目が怪しすぎるのと、扱いがめんどくさいもので・・・。だから、神界のゴミ捨て場に長い間、放置されてます」
「まあ、確かに怪しすぎか。それにしても、ゴミ捨て場からねえ・・・舐めてますね」
「異世界人1人に対して100万ポイントが神様協会から渡されますから、スキルで消費してから死なれるよりも、初めから渡さずに亡くなってもらったほうが、美味しいかもしれないですね」
「だったら、初めから介入しなくてもいいのでは?」
「申請義務があるんですよ、何人転移してきたかって。それで、転移してきた人数1人頭の経費の支給が100万ポイント。申請されている転移者が活躍したり、満足できるような生涯を過ごせると500万ポイントから1000万ポイントくらい戻ってきます」
「価値がわからないので、何とも言えませんが・・・」
「功績にもなるんですよ。試用期間が短くなったりしますし、試用期間満了後の給料が若干よくなってたりします。世界作成権を得た後に貰えるポイントも、若干増えるらしいです。功績が欲しい神様なんかは自腹の神様ポイントを使ってまで、良いものを与えようとするらしいですよ。100万ポイントじゃなくて、500万ポイント分使う神もいます。たとえば・・・強奪の魔眼とか、無限の魔力とか、強い武器とか」
「大した活躍もせずに、亡くなるのに関してはペナルティは特に何もないと・・・そういうことですか」
「残念ながら」
「・・・なんとかして、生きたいですね。あわよくば、冒険者になって、女神のヤツを驚かせてやりたい気分です」
「それでも、結果的にはドロシー様を喜ばせるだけなんですけど」
「でも、考え方によっては優しいじゃないですか。一応、何か与えてはくれたんですから」
「それは・・・一応、名目上、何かしないといけないという決まりがあるだけなんですけど・・・いや、これ以上は何も言いますまい」
森の中の開けた場所に出た。
「小林さん申し訳ない。女神があんなので」
「レダンさんが謝ることじゃないですよ」
レダンさんはピカピカのハゲ頭を下げて、謝ってきた。太陽が反射して眩しい。
「やめてください、本当に(まぶしいので)」
そういえば、これからどうするんだろうか。
たくさん時間が経ったように感じたけど、太陽はまだ上の方にいる。
ここに、病院が建つのかな。
「女神様とは長いんですか?」
「高校が一緒です」
「高校?神様にも高校があるんですか」
「いろいろな世界があるんですよ。神として生まれても、初めから立派な神じゃないんです。小学校を出て、中学校を出て高校を出て、ようやく仕事を任されるんです」
「神様って、学校出るんですね。大学とかはないんですか」
「大学?その上、ということですか。そういうのは、ないですね。神様ポイントを膨大な量貯めれば、一つの世界の管理者を任されます。試用期間ですけどね。それで問題なければ、自分の世界作成権と管理権が認められて・・・実績が認められると、階級が上がっていくらしいです。階級のことは下っ端なのでよくわからないですけどね」
「え?女神様はどうして、管理者なんですか?」
「ドロシー様のお父上が神様として階級の高い方でして。高校を出た時のお祝いに、世界管理権の試用期間が受けられるようなポイントを神様協会に払い込んだそうです」
「親の力・・・。結局、神様もお金次第なんですね」
「お金・・・ああ、神様ポイントも通貨ですからね。そういう言い方もできるのか」
「女神様は、俺に何か与えたりするのがもったいないと思ったんですね」
「そう・・・・・・みたいですね」
「死んでほしいと思ってるんですかね」
「まあ・・・その辺はどうでしょうね」
そんなことを話しているうちに、後ろの方でボワンと煙が起こった。
きっと、病院ができたんだろう。
・・・これ、本当に病院?
四角い、ほんとに真四角な箱があるだけ。
大きさは2メートルくらい。立方体だから、2立法メートル?
入口はどこ?
「レダンさん?」
「なるほど・・・これなら、神様ポイントかからないな」
「レダンさん・・・?」
「これはですね、病院には違いないです。違いないですけど・・・。小林さんはモンスターと戦わないと中に入れません」
「どういうことですか?」
「この建物は、病院の卵みたいなものです」
「卵?」
「建物の横に、操作盤があるんですよ。そこのボタンを操作して倒したモンスターを吸収させるんです」
「へえ・・・吸収」
「モンスターってね、神様がこの世界に生きる存在が成長するように創ったと言われているんです。でも、それは建前で、・・・本当はただ眺めているとつまらないからだそうです」
「神様って、暇人なんですね」
「まあ、腐るほど時間がありますからね。モンスターを倒し続けることが、生き物にとって生きるのに必要なことで、同時に神様を楽しませているんです」
「神様って・・・尊敬できないかもしれません」
「でも、そんな時に神様のそういった考えが気に入らない悪魔がいました。まあ・・・悪魔ですからね、真面目な悪魔です。その悪魔はモンスターを倒すことで、逆に神様への冒涜へつなげられたらどうか、と考えたんです。その末に創り出したのが、この〈病院の卵〉です」
「医学が神様への冒涜・・・なるほど。血液を洗浄して身体に入れたり、心臓の弁を機械で置き換えたり・・・確かにね。病院の卵って悪魔が作ったなら、高そうですけど。安いんですか、意外ですね」
「ええ、たくさん数がありますから。買う必要もないです。この世界の人間には操作が難しいでしょうし、スライムをはじめに吸収させないと入り口も開きません。そして、この病院が治療をできるようにするためには、モンスターの死体がたくさん必要と・・・」
「めんどくさい設定なんですね」
「それに、この世界には回復術という魔法がありまして、大体の怪我は治ってしまいます」
「病気よりも傷のほうが需要は多そうですね。疫病もありそうだけどな」
「薬はありますよ。簡単な薬学ならね。でも、良い薬というのは魔力の込められた薬です。まさに、それは医学ではなくて、魔法学が発展しているということなんです」
この世界は医学より魔法の方が上なのか。
モンスターが居るくらいだから、それっぽい。
「この〈病院の卵〉のことを多くの神様は信仰する人々に、よくないものだと説明したから、近づく人はあまりいませんでした。他の悪魔族もなんとか利用しようとしましたけれど、見た目が怪しすぎるのと、扱いがめんどくさいもので・・・。だから、神界のゴミ捨て場に長い間、放置されてます」
「まあ、確かに怪しすぎか。それにしても、ゴミ捨て場からねえ・・・舐めてますね」
「異世界人1人に対して100万ポイントが神様協会から渡されますから、スキルで消費してから死なれるよりも、初めから渡さずに亡くなってもらったほうが、美味しいかもしれないですね」
「だったら、初めから介入しなくてもいいのでは?」
「申請義務があるんですよ、何人転移してきたかって。それで、転移してきた人数1人頭の経費の支給が100万ポイント。申請されている転移者が活躍したり、満足できるような生涯を過ごせると500万ポイントから1000万ポイントくらい戻ってきます」
「価値がわからないので、何とも言えませんが・・・」
「功績にもなるんですよ。試用期間が短くなったりしますし、試用期間満了後の給料が若干よくなってたりします。世界作成権を得た後に貰えるポイントも、若干増えるらしいです。功績が欲しい神様なんかは自腹の神様ポイントを使ってまで、良いものを与えようとするらしいですよ。100万ポイントじゃなくて、500万ポイント分使う神もいます。たとえば・・・強奪の魔眼とか、無限の魔力とか、強い武器とか」
「大した活躍もせずに、亡くなるのに関してはペナルティは特に何もないと・・・そういうことですか」
「残念ながら」
「・・・なんとかして、生きたいですね。あわよくば、冒険者になって、女神のヤツを驚かせてやりたい気分です」
「それでも、結果的にはドロシー様を喜ばせるだけなんですけど」
「でも、考え方によっては優しいじゃないですか。一応、何か与えてはくれたんですから」
「それは・・・一応、名目上、何かしないといけないという決まりがあるだけなんですけど・・・いや、これ以上は何も言いますまい」
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