異世界転移治療録 神とゴブリンと病院の卵
9話 先輩の気遣い
病室に戻ると、昼食と同意書が置いてあった。
同意書のサインをしようと思ったけれど、気分がのらない。
とりあえず、昼食を食べよう。
食前の血糖測定を行い、インシュリンを打つ。
透析で血糖値が少し下がったのかな、と思いきや166㎎/dl。
血糖値は良くなっているんだろうか。
もう、排尿は全くないのでリン吸着薬も飲む。
リンは尿から排泄されるが、腎不全では外に出せないので貯まっていくばかりになってしまう。
リン吸着薬でリンを吸着して便から排泄する。
血液中のリンが高くなると、血管が石灰化して石のようになってしまう。
昼食を食べ終わって、同意書にサインをしよう・・・と思ったけれど、やっぱ気分がのらない。
合併症の説明も何回も読んだけれど、まあ、そうだよね、ということが書いてある。
だいたい、どこの施設も一緒だ。
病院内の売店に行ってみた。
患者衣に、首になにかついているという格好は、普段なら恥ずかしいと思ったかもしれないけど、この時は病室から少しでも離れたくて仕方がなかった。
ブラブラしながら、雑誌の所を眺めてみたけれど気分が落ち込んで仕方がない。
小銭は持ってきたけど、別に買いたいものもない。
それでも、何か買えば少しは気分が晴れるかなと思い、食べもしないチョコレートバーを買った。
売店を出て、行き場がなくて病室に戻ることにした。
ふと、後ろから声を掛けられた。
「そこの~、えとあんた。透析をやっているんだろ?」
「はい?」
「おれも、透析患者なんだけどさ。ちょっと、そこで話しようぜ」
とりあえず、断れない自分は病院の休憩所に座った。
歳は60歳くらいのつるっぱげのおじいさんだった。
ジャージでサンダルを履いていて、どこか偉そうだ。
「おれは透析をやって10年位経つんだけど、この病院に併設されてる透析クリニックでやってる」
隣のクリニックで透析やってる人か。
「なんかあったら、相談しろよ。いろいろ教えてやるからな。あと、病院に騙されるなよ、殺されちまうぞ」
「どうしてですか?」
「あのな、病院はなんでも食べちゃいけないっていうんだよ。だけど、そんなことしてたら、透析やってるやつはみんな筋肉がなくなって、みんな弱っていっちまうんだ」
「そういう人がいたんですか?」
「リンが高い時あるだろ?」
「・・・」
「あるんだよ。そういう時に看護師とか栄養士とか、みんなメシを喰うな喰うなって言うんだよ。患者は言うこと聞くやつがほとんどだから、みんな肉を食わなかったりして、周りはみんな小さくなっていった・・・というか、今でもみんな小さくなっていってる」
「ああ、そいうことですか。確かに、医療従事者は食べ過ぎだって言ってるかもしれないですね」
「透析やっている人のタンパク質摂取量は普通の人と同じか、少し多いくらいだろ?リンが高い患者っていうのはリン吸着薬を飲み忘れてたり、食べている量に対して薬が少なすぎるということもあるだろ?」
「よく勉強してますね。話は合っていると思います。確かに、リンが高いと言われる人の中には薬をきちんと飲めていない人が多いっていうのはありますね」
「なんか、若い患者のくせに頭がいいな」
「すいません、実は病院で働いていたんです」
「あんた、看護師さんか。じゃあ、釈迦に説法だったな。若いし、暗いし、自殺しちまいそうだったから相談に乗ってやろうと思ったんだよ」
「え?」
「透析をやることになると、何人かは死んでしまおうなんて考えるもんなんだよ。俺だって、ハゲでジジイで性格が悪くて、偉そうだけどさ、生きてられるんだから・・・あんたも、死ぬんじゃないぞ」
「あ・・・ありがとうございます。少し救われた気がします」
別に死のうとか考えてなかったけれど、シャント造んなきゃ生きられないか。
まだ、全然受け入れきれてないし、問題は何も解決していない。
解決していないけど、病室に戻ることにした。
同意書のサインをしようと思ったけれど、気分がのらない。
とりあえず、昼食を食べよう。
食前の血糖測定を行い、インシュリンを打つ。
透析で血糖値が少し下がったのかな、と思いきや166㎎/dl。
血糖値は良くなっているんだろうか。
もう、排尿は全くないのでリン吸着薬も飲む。
リンは尿から排泄されるが、腎不全では外に出せないので貯まっていくばかりになってしまう。
リン吸着薬でリンを吸着して便から排泄する。
血液中のリンが高くなると、血管が石灰化して石のようになってしまう。
昼食を食べ終わって、同意書にサインをしよう・・・と思ったけれど、やっぱ気分がのらない。
合併症の説明も何回も読んだけれど、まあ、そうだよね、ということが書いてある。
だいたい、どこの施設も一緒だ。
病院内の売店に行ってみた。
患者衣に、首になにかついているという格好は、普段なら恥ずかしいと思ったかもしれないけど、この時は病室から少しでも離れたくて仕方がなかった。
ブラブラしながら、雑誌の所を眺めてみたけれど気分が落ち込んで仕方がない。
小銭は持ってきたけど、別に買いたいものもない。
それでも、何か買えば少しは気分が晴れるかなと思い、食べもしないチョコレートバーを買った。
売店を出て、行き場がなくて病室に戻ることにした。
ふと、後ろから声を掛けられた。
「そこの~、えとあんた。透析をやっているんだろ?」
「はい?」
「おれも、透析患者なんだけどさ。ちょっと、そこで話しようぜ」
とりあえず、断れない自分は病院の休憩所に座った。
歳は60歳くらいのつるっぱげのおじいさんだった。
ジャージでサンダルを履いていて、どこか偉そうだ。
「おれは透析をやって10年位経つんだけど、この病院に併設されてる透析クリニックでやってる」
隣のクリニックで透析やってる人か。
「なんかあったら、相談しろよ。いろいろ教えてやるからな。あと、病院に騙されるなよ、殺されちまうぞ」
「どうしてですか?」
「あのな、病院はなんでも食べちゃいけないっていうんだよ。だけど、そんなことしてたら、透析やってるやつはみんな筋肉がなくなって、みんな弱っていっちまうんだ」
「そういう人がいたんですか?」
「リンが高い時あるだろ?」
「・・・」
「あるんだよ。そういう時に看護師とか栄養士とか、みんなメシを喰うな喰うなって言うんだよ。患者は言うこと聞くやつがほとんどだから、みんな肉を食わなかったりして、周りはみんな小さくなっていった・・・というか、今でもみんな小さくなっていってる」
「ああ、そいうことですか。確かに、医療従事者は食べ過ぎだって言ってるかもしれないですね」
「透析やっている人のタンパク質摂取量は普通の人と同じか、少し多いくらいだろ?リンが高い患者っていうのはリン吸着薬を飲み忘れてたり、食べている量に対して薬が少なすぎるということもあるだろ?」
「よく勉強してますね。話は合っていると思います。確かに、リンが高いと言われる人の中には薬をきちんと飲めていない人が多いっていうのはありますね」
「なんか、若い患者のくせに頭がいいな」
「すいません、実は病院で働いていたんです」
「あんた、看護師さんか。じゃあ、釈迦に説法だったな。若いし、暗いし、自殺しちまいそうだったから相談に乗ってやろうと思ったんだよ」
「え?」
「透析をやることになると、何人かは死んでしまおうなんて考えるもんなんだよ。俺だって、ハゲでジジイで性格が悪くて、偉そうだけどさ、生きてられるんだから・・・あんたも、死ぬんじゃないぞ」
「あ・・・ありがとうございます。少し救われた気がします」
別に死のうとか考えてなかったけれど、シャント造んなきゃ生きられないか。
まだ、全然受け入れきれてないし、問題は何も解決していない。
解決していないけど、病室に戻ることにした。
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