異世界転移治療録 神とゴブリンと病院の卵

雲と空

4話 未知のエネルギー

 今日は休みだったので、家でダラダラ過ごしている。


 休みになると、何もやる気にならない。


 眠気と脱力感と、疲労感と・・・たくさんのマイナスなものに潰されて動けなくなる。


 エアコンがあるから、暑いのはまだいくらかいいのだけど、虫が多い・・・。


 ここは、ちょっと山っぽいところだから、しょうがないかな。


 特にコバエがうるさい。


 エアコンの吐き出す涼しい風を懸命に締め切って閉じ込めているのだけれど、どこからはいってくるのかコバエがいる。


 一体どこから入ってくるのか。謎だ。


 台所の排水口だって、専用の洗剤で綺麗にしている。


 トイレだって黄ばみは無いようにしている。


 お風呂の排水口も専用の洗剤で洗浄しているし・・・網戸だって穴は空いてない。


 ブーンと音がした。


 「うっとうしいな」


 ついつい、声に出してしまう。




 眠気を感じながらも起き上がってみる。


 もう3時か。


 カーテンの隙間から外を覗いてみる。


 太陽はすっかり上がり、眩しい焼けそうな光が外に広がっている。


 朝方4時頃、心臓カテーテルの緊急呼び出しがあって働いてきたばかりだった。


 ちょっと、寝るはずが結構寝てしまった。




 まあ、とりあえずゲームでもしよう。


 パソコンの電源を入れた。






 すると、さっきまでブンブン飛んでいたコバエはあたりを飛ばなくなった。


 ・・・パソコンの画面に集まってきている。


 ただ、量がちょっと多い。


 画面が見えない。


 「キ・・・キモイ」


 もう・・・、これは耐えられない。


 立ち上がり、居間の方へ武器をとりに行った。


 伝家の宝刀、殺虫スプレー!






 目をつぶり


 画面に向かって、思いっきり殺虫剤を噴霧した。


 どうなってるかはわからない。


 殺虫剤を気の済むまでぶちまけた。


 見るのが怖くて、後ろを向いて台所の方へ走る。




 オマケにこれだ!


 「くらえ、ばあちゃんが贈って来た美肌用の粗塩!」


 きっと、清めるのにいいはずだ。


 実家の祖母が肌にいいとか言って贈ってきていたものが、たくさんあったので台所の机の上から持ってきて、一掴み投げかけた。


 更に投げかける。


 投げかける。


 先週の日曜日に届いて、お風呂場に持っていこうとしていたけれど、置いたままだった。




 「・・・やりすぎたかな」


 ちょっと後悔した。






 パソコン壊れてないだろうか。


 パソコンの上には、塩と虫がごっちゃりしてる。


 こんな時は、掃除機だ掃除機。






 え~と、掃除機は・・・玄関の収納に入れてたはず。


 玄関までダッシュして、掃除機を取りに行った。






 戻ってくるまで、すぐだった。ホントに10秒くらいで戻ったはず。






 ・・・なんだけど。


 パソコンの上に降り積もっていた塩も、虫も、殺虫剤の匂いさえもすっかり消えていた。


 ん?


 パソコンの画面になんだかメッセージが出ている。


『ベルゼブブの手下を退治しました』 




 パソコンが壊れた・・・かな?


 だけど、体が熱くなる。


『未知なエネルギーを得ました』


 続いてメッセージが加えられていく。


 ひょっとして、超人的な何かを得てしまったりして。


『身体プログラムにエラーが発生しました、パソコンを強制終了します』




 え・・・強制終了?


 ゲームがやりたかったんだけどな。


 身体プログラムとパソコンは関係ないと思う。


 関係ないのに、なんでパソコンを閉じるのか?


 パソコンを再起動させると、何もなかったかのようにパソコンは立ち上がった。


 よし、ゲームしよう・・・と思ったけれど体がだるい。


 急に体がだるくなった。


 でも、これは何か起こったのかも、と思った。


 そうだ・・・これは、どこかで読んだやつ。


 ゲームの世界へ旅立つんじゃないかな。


 だけど・・・待てど暮らせど、何も起こらない。


 違うかあ。


 ならひょっとして・・・。




 RPG的なステータスオープンとかできるかな。


「ステータスオープン」


 声に出してみる。


(ステータスオープン)


 念じてみる。


 なにも出ない。






 そんな、面白いこと起こることないか。


 疲れてるんだね。


 さっきのは、全部幻覚だったんだね。


 よし・・・寝よう。


 間もなく睡魔が襲ってきた。今日はこんなに体調悪かったっけ。


 さっきまでは、そうでもなかったのに・・・。

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