賢者(魔王)の転生無双は反則です!
【賢者】たるものパフォーマンスも出来なければ?
家に設置してある転移魔法陣を使えば、王都の城へとひとっ飛び。
かつては軍事用の魔法で、兵士達を戦場に送ったり情報の伝達を速くするために開発された魔法だが、それもこのように日常で使われるようになったと思うと平和になったものだなぁ、としみじみ感じる。
それにしても……
「王城ひっろ………」
やはり平和になり国が栄えたからだろうか?
城の大きさが昔のそれとは桁違いになっている。
「ミトラ~!早くついて来ないと迷子になるわよ!」
俺が呆然としている内に先に進んでいたアリスが手を振りながら言う。
「あぁ!今行く!」
アリス達を見失わない内に小走りで追いかける。
その途中。曲がり角の死角に隠れている人物に気付いた。
自分の身を隠すようにフード付きのローブを着ていて顔つきはよく分からない。
だが、体格がだいぶ華奢なので恐らく女性かと思われる。まあ、ただただ細い男性かも知れないが。
「「!?」」
気付かれないと思っていたのか、向こうも驚いたようで、俺も向こうも目を丸くする。
その時一瞬だけフードで隠されていた顔が見えた。やはり女性のようで、かなり美しい顔立ちをしているように見える。
「…………!!」
彼女は早口で何かを呟いた。きっと魔法の詠唱だろうが聞き取ることができなかった。
次の瞬間。強烈な光がその場で発生した。
反射的に目をつむる。
そして目を開くと彼女の姿は無かった。
「何だったんだ……?」
またもや呆然とする。
「もう!ミトラ遅い!」
ぼーっとその場で立ち尽くしていると、痺れを切らした様子のアリスが戻ってきた。
「母さんも父さんも待ってるわよ」
「あぁ、ごめん。初めての王城に驚いてた」
さっきの人物について話すべきかとも思ったが、アリスのこの様子だと信じてくれそうもないので後で話すことにした。
アリスに連れられてパーティーの会場となる大広間へと着いた。
俺を大広間で出迎えていたのは……大人達の途轍もなく冷たい視線だった。
元貧民の分際で……、あれがレイヴァ家の養子か……という声が耳に入る。
俺がこの空間に置いてとにかく卑下されているのは手に取るように分かった。
いくらアリスでもその空気には気づいたようで、縮こまっていた。
「アリス。そんなに怖がらなくても大丈夫」
「だって……」
アリスは今にでも泣きそうな顔をしている。
アリスのこんな顔は見たくない。そこで父さんの方をちらりと見た。
父さんと母さんは、この異質な空間の中でも笑っており……父さんは不敵な笑みを返してくれた。まるで『お前の力を見せつけてやれ』と言っているかのよう。
それに応えるように俺も父さんを真似て不敵な笑みを浮かべる。
何を笑っているんだ、ふざけているのかという小さな声が聞こえる。
もう、そんな声はシャットアウト。今から見せる魔法で歓声に変えてみせよう。
まずは『無詠唱』で幻覚魔法をこの場にいる全員にかける。
大広間に雪が降る。季節も違う上に、ここには天井があるのにも関わらず。
もちろん本物ではない。俺が見せている幻覚だ。
「雪?」
貴族の誰かが呟く。魔法である事には気付いているようだが誰が使っているのかは認識できていないようだ。
次の瞬間。しんしんと降っていた白雪が、パッと、色とりどりの花びらへ変わった。
「《エア・スクリーム》!」
すかさず空気を操る魔法、《エア・スクリーム》によって大広間にそよ風を吹かす。
今度はあえて、詠唱する。ここに居る全員に誰がこの状況を作っているのかを認識してもらうために。
風に乗って大量の花びらが大広間の中心に流れていく。
その間に花の香りがパーティーの参加者の鼻孔をくすぐる。
なお、この花の香りも俺の作り出した幻である。
広間の中心で花びらが渦を巻き始める。参加者は全員がその光景に注目している。
全員の視線がそちらを向いている隙に俺は『無詠唱』で姿を消しておく。
花びらが完全に一ヶ所で渦巻くようになった瞬間。それらがパッと四方八方に弾けた。
俺はその中から派手に登場する。
ポンポンポンと小さな可愛い音をたてながら幻の花びらが全て消え去る。
その光景におおっと声が上がる。
静かになった所で、俺自身のアピールをする。この場に居る全員に聞こえるようできるだけ大声で。それでいて物腰柔らかに聞こえるように。
「皆様方。レイヴァ家の長男、ミトラ・ウル・レイヴァと申します。これまで、このような公の場に出ることは無かったため、皆様のお目にかかるのは初めてですが……どうかお見知り置きを」
静寂は続く。なので構わずに続けて言う。
「今皆様に見ていただいたのは、私の幻覚魔法が作り出した幻覚です。僭越ながらこの場にいらっしゃる全員に掛けさせていただきました」
今のは全部自分一人で行ったということをアピールする。これによってミトラ・ウル・レイヴァという少年が魔法を得意としている
ことを理解しただろう。
周囲が一瞬静まり返る。が、静寂を破るように拍手と歓声が上がった。
先ほどまでの貧民を見下す雰囲気はどこへやら。
まだ扉の前に立っているアリスと目が合う。
俺はアリスに向けて最大級の笑みを浮かべた。
アリスもまた、笑顔とVサインを返してくれた。
うん。やっぱりアリスは笑顔が一番似合う。
かつては軍事用の魔法で、兵士達を戦場に送ったり情報の伝達を速くするために開発された魔法だが、それもこのように日常で使われるようになったと思うと平和になったものだなぁ、としみじみ感じる。
それにしても……
「王城ひっろ………」
やはり平和になり国が栄えたからだろうか?
城の大きさが昔のそれとは桁違いになっている。
「ミトラ~!早くついて来ないと迷子になるわよ!」
俺が呆然としている内に先に進んでいたアリスが手を振りながら言う。
「あぁ!今行く!」
アリス達を見失わない内に小走りで追いかける。
その途中。曲がり角の死角に隠れている人物に気付いた。
自分の身を隠すようにフード付きのローブを着ていて顔つきはよく分からない。
だが、体格がだいぶ華奢なので恐らく女性かと思われる。まあ、ただただ細い男性かも知れないが。
「「!?」」
気付かれないと思っていたのか、向こうも驚いたようで、俺も向こうも目を丸くする。
その時一瞬だけフードで隠されていた顔が見えた。やはり女性のようで、かなり美しい顔立ちをしているように見える。
「…………!!」
彼女は早口で何かを呟いた。きっと魔法の詠唱だろうが聞き取ることができなかった。
次の瞬間。強烈な光がその場で発生した。
反射的に目をつむる。
そして目を開くと彼女の姿は無かった。
「何だったんだ……?」
またもや呆然とする。
「もう!ミトラ遅い!」
ぼーっとその場で立ち尽くしていると、痺れを切らした様子のアリスが戻ってきた。
「母さんも父さんも待ってるわよ」
「あぁ、ごめん。初めての王城に驚いてた」
さっきの人物について話すべきかとも思ったが、アリスのこの様子だと信じてくれそうもないので後で話すことにした。
アリスに連れられてパーティーの会場となる大広間へと着いた。
俺を大広間で出迎えていたのは……大人達の途轍もなく冷たい視線だった。
元貧民の分際で……、あれがレイヴァ家の養子か……という声が耳に入る。
俺がこの空間に置いてとにかく卑下されているのは手に取るように分かった。
いくらアリスでもその空気には気づいたようで、縮こまっていた。
「アリス。そんなに怖がらなくても大丈夫」
「だって……」
アリスは今にでも泣きそうな顔をしている。
アリスのこんな顔は見たくない。そこで父さんの方をちらりと見た。
父さんと母さんは、この異質な空間の中でも笑っており……父さんは不敵な笑みを返してくれた。まるで『お前の力を見せつけてやれ』と言っているかのよう。
それに応えるように俺も父さんを真似て不敵な笑みを浮かべる。
何を笑っているんだ、ふざけているのかという小さな声が聞こえる。
もう、そんな声はシャットアウト。今から見せる魔法で歓声に変えてみせよう。
まずは『無詠唱』で幻覚魔法をこの場にいる全員にかける。
大広間に雪が降る。季節も違う上に、ここには天井があるのにも関わらず。
もちろん本物ではない。俺が見せている幻覚だ。
「雪?」
貴族の誰かが呟く。魔法である事には気付いているようだが誰が使っているのかは認識できていないようだ。
次の瞬間。しんしんと降っていた白雪が、パッと、色とりどりの花びらへ変わった。
「《エア・スクリーム》!」
すかさず空気を操る魔法、《エア・スクリーム》によって大広間にそよ風を吹かす。
今度はあえて、詠唱する。ここに居る全員に誰がこの状況を作っているのかを認識してもらうために。
風に乗って大量の花びらが大広間の中心に流れていく。
その間に花の香りがパーティーの参加者の鼻孔をくすぐる。
なお、この花の香りも俺の作り出した幻である。
広間の中心で花びらが渦を巻き始める。参加者は全員がその光景に注目している。
全員の視線がそちらを向いている隙に俺は『無詠唱』で姿を消しておく。
花びらが完全に一ヶ所で渦巻くようになった瞬間。それらがパッと四方八方に弾けた。
俺はその中から派手に登場する。
ポンポンポンと小さな可愛い音をたてながら幻の花びらが全て消え去る。
その光景におおっと声が上がる。
静かになった所で、俺自身のアピールをする。この場に居る全員に聞こえるようできるだけ大声で。それでいて物腰柔らかに聞こえるように。
「皆様方。レイヴァ家の長男、ミトラ・ウル・レイヴァと申します。これまで、このような公の場に出ることは無かったため、皆様のお目にかかるのは初めてですが……どうかお見知り置きを」
静寂は続く。なので構わずに続けて言う。
「今皆様に見ていただいたのは、私の幻覚魔法が作り出した幻覚です。僭越ながらこの場にいらっしゃる全員に掛けさせていただきました」
今のは全部自分一人で行ったということをアピールする。これによってミトラ・ウル・レイヴァという少年が魔法を得意としている
ことを理解しただろう。
周囲が一瞬静まり返る。が、静寂を破るように拍手と歓声が上がった。
先ほどまでの貧民を見下す雰囲気はどこへやら。
まだ扉の前に立っているアリスと目が合う。
俺はアリスに向けて最大級の笑みを浮かべた。
アリスもまた、笑顔とVサインを返してくれた。
うん。やっぱりアリスは笑顔が一番似合う。
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