賢者(魔王)の転生無双は反則です!

POSTMAN

……お嬢様、ポンコツじゃないの?もちろん。優秀ですとも




「《サンダー》!!」

 杖の先が光り、アリスの魔力が雷へと変換され、一直線に雷がこちらへと迫る。

 この《サンダー》はアリスの使える魔法の中で最速の魔法。

 普通、魔法を学び始めてから数ヶ月で覚えられる魔法ではない。

 雷の一閃が俺の目前まで迫る。もちろん素直に受けるつもりはない。

「《バニッシュ》」

 俺が魔法を使った瞬間に雷の一閃は消え去った。

 《バニッシュ》は宮廷魔導師クラスでないと使えない超高等魔法だ。
 効果はいたってシンプル。『相手の魔法を打ち消す』。以上。

 なぜ高等魔法とされているのかはいつか説明する時が来る……かもしれない。

 雷が消えた瞬間に連続して魔法を唱える。

連続詠唱ラピッドファイア・《フレイム》!」

「危な!?」

 アリスが慌てて横に避ける。なぜなら俺の魔法によって、アリスが居た位置に爆発と共に炎が生まれたからだ。

 『炎』は前世の俺が最も得意としていた魔法属性。
 転生してから受けた『属性鑑定』でも炎属性の適正がずば抜けて高かった。

 そして、魔王との最終決戦でも使った魔法技術『連続詠唱ラピッドファイア』。

 魔法を立て続けに放つことで性能や威力が上がる【賢者】のみが扱えて、最も使っていた技術。

 ちなみに、魔法を重ねれば重ねるほど後々の魔法が強化される。(確か《フレイム》だけ続けた場合は2発目から2倍、4倍、16倍と威力が強化された。)

「って?あれ?」

 アリスが避けた先の足元に赤い魔法陣が現れる。

 俺がこうなることを見越して《ファイア》の後に設置しといた罠魔法トラップだ。

 さっきまでの魔法と違うのは『無詠唱』だということ。

 罠が相手にバレてしまったら意味がない。

 しかし『無詠唱』ならば相手に自分が魔法を使ったことに感づかれることもないし、なにより発動までの時間が圧倒的に速い。

 もちろん『無詠唱』にもデメリットがある。
 例えば『無詠唱』を使用した魔法には、『連続詠唱ラピッドファイア』が適応しない。

 まあ、時と場合で使い分けろ、という事だ。

「キャー!」

 魔法陣から炎が空へと昇り、炎の柱が生まれる。

 これはアリスも避けれず直撃。

……まあ、威力は最小にしてあるから大丈夫だろ。

 そう、思った矢先だった。炎の柱が消えた瞬間……そこに居たはずのアリスの姿が消えており……。



 代わりに……水色の魔法陣が残っていた。



「《ウィンドカッター》!」



 アリスの声が後ろから聞こえる。声と共に風でできた刃が飛来する。

「マジか、アリス!」

 アリスは恐らく《フレイム》を避けたときから自分そっくりの虚像を作っていた。

 水色の魔法陣から見るに使用した魔法は《ミストドール》。

 俺が驚いたのはそれをアリスが『無詠唱』でおこなっていたということと、ここまでの行動パターンの違和感の無さ。

 霞で自分の偽物を『無詠唱』で作りだし、相手の背後から攻撃する。

 これは、俺が一昨日・・・の朝見せたばかりの行動だ。

 普通の魔法使いなら『無詠唱』を覚えるのに何年もかかるはずなのにアリスは2日で覚えてきた。
 
 それも俺のを一度見た・・だけで。
 

「《エア・ストリーム》!」

 とっさに空気を操る魔法を使い、アリスの空気の刃が向かう方向をずらした。

「《バインド》!」

 すぐさまアリスの次の魔法がとんでくる。

 俺の周りに紫色の魔法陣が4つ展開する。

 次の瞬間にはその魔法陣から魔力で形成された半透明の鎖が勢いよく射出された。

「おっと!」

  後ろに飛んで回避。鎖はからをきり放物線を描く。

 先端が地面に落ちていき、途中で魔力へと戻り空気中に霧散した。

 と、安心したのもつかの間。
 瞬き一回分ほどの時間もなく氷の魔弾が飛来した。

 またもや『無詠唱』。使ったのは《アイス・バレット》。

「ッ!《フレイム》!」

 あまりのスピードに回避は不可能だったため魔法で迎撃。空中に生まれた炎が氷の弾丸を飲み込んだ。

……つくづくアリスはとんでもない才能の持ち主だと思う。

 今の攻撃も《バインド》をおとりにしたモノ。
 俺がバインドを避けるのを予測して《アイス・バレット》を放ったのだろう。

 さっきはアリスを弱いと言ったがそんなことはない。今の攻防戦を見ていれば誰でも分かるだろう。

 毎朝思い知らされるがアリスはとにかく成長スピードがエグい。
 俺や彼女の先生の技術を見ただけですぐに自分のものにしてしまう。

 今はまだ前世の記憶があるから良いものの……。いつか追い抜かれる日が来るかもしれない。

 彼女が俺の前世の時代に生まれていたのならきっと、魔王を倒していたのは俺ではなくて……。

 と、そんな俺の心の内は露知らず浮遊魔法を使って上から目線を俺に送りつつ、お嬢様は自慢気な声をあげた。

「どう!驚いたでしょ、ミトラ!私の強さに!」

「意気揚々と言ってるのは良いんだけどさぁ、アリス。スカートで浮遊魔法は女子としてどうなの?」

「えっ?」

 すると、アリスはみるみる内に顔を赤くし……ボンッと変な音が聞こえた。

「ミ……ミトラの変態!もっと早く言ってよ~!!」

 お嬢様が油断した!油断大敵、今だ!

「《スタン・バレット》!」

 俺の杖の先から電気の魔弾が放たれる。

「そんな攻撃、当たる訳ないでしょ!」

 降りてきたアリスは怒りながらそれを避けた。

……怒っていたから判断を間違えてしまったのだろう。

 今の魔法は避けるべきではなく魔法で相殺するべきだったのに。

 次の瞬間。

 バチッ!

 と音がした。《スタン・バレット》がアリスの背中に当たったのだ。

 魔法の原則として、放った後の魔法の方向制御は不可能。

 しかし……他の魔法を放った魔法の進む先に仕込んでおけば無理矢理だが方向転換させることが可能だ。

 先ほど俺がアリスの《ウィンドカッター》を《エアスクリーム》で流したように。

 今回の場合、俺は《スタン・バレット》を放った後に、魔法を反射する空間をつくる魔法《ミラー》を『無詠唱』でアリスの後ろに展開しておいた。(ちなみに《ミラー》は【賢者】のオリジナル魔法だ)

 その結果反射した電気の弾丸にアリスは気づかず、背中に直撃してしまったのだ。

「おっと危ない、《エア・スクリーム》」

 《スタン・バレット》は名の通り相手をスタンさせる。少し出力を高めたせいで、アリスは気を失ってしまったようだ。

 倒れそうになるアリスを魔法で空気を操り、受け止める。

……こうしてレイヴァ家の毎朝の習慣が終わった。
 

 
 


 





 
 
 


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