夢奪われた劣等剣士は銀の姫の守護騎士となり悪徳貴族に叛逆する
不穏な影
一方、アリシアとローレンスは魔導機工場を経営する領主、キャドバリー侯の居城へと訪れていた。湖の畔に築かれ、リヴィエラをぐるりと一周する城壁の結節点となっている一際豪華な城がその居城、リヴィエラ城である。
しかし、湖に浮かぶ白鷺の如き美しさと形容されるその威容も、湖の発する黒い霧に覆われてすっかり薄汚れた景観となっていた。
「これはこれはよくお越しくださいました、姫殿下。それにローレンス卿も」
出迎えた執事は丁寧な対応で二人を出迎えた。
「事前の連絡も無く、失礼とは存じますが、キャドバリー侯にお目通りはかなうでしょうか?」
アリシアが尋ねた。しかし、執事は首を縦には振らず、渋い顔をした。何か事情があるのだろうか。
「申し訳ございません。旦那様はご病気でして、我々でもお会いになられないのです」
「ご病気……ですか? では侯爵夫人が世話をされているのですか?」
「いえ、奥様も例外ではなく、今は食客の者としか会われないといった様子で……」
「それは妙だね。素性も知れない者とばかり会うなんて、どの様な人物なんだい?」
「それが、いつもフードを被られており、我々とは挨拶程度しか交わさないのでどのような方かほとんどわからないのです。下働きの者がちらりと顔を垣間見て、見目麗し女性らしいということは分かったのですが」
「奥様を放って、美女ばかり部屋に招いて閨を共にするなんて随分と羨ましいことだ。俺も見習いたいな」
「ローレンス、そういうことではないでしょう」
アリシアが呆れを口にした。
「いえ、旦那様に限ってその様なことはありえません。あの者が来てからというもの、旦那様が倒れられたり、街に異変が起こったりと妙なこと続きです。今ではすっかり領主業と工場経営まで代行されて」
「待ってください。この地方の統括を行っているのは、その方なのですか?」
アリシアは大いに驚いた。体調を理由に領主の仕事を代行してもらうことこそ決して珍しくはないが、それを素性の知れぬものに任せるなどありえないことであった。
「ええ。本人は旦那様の委任を受けていると言っていますが、法外な徴税に強制労働、とても旦那様のされることとは思えません」
「確かにキャドバリー侯は貴族派ではありますが、気の弱いながら領民想いの良い領主でした。それが、この様な異変を見過ごして徴税に勤しむなど妙かもしれません」
「姫殿下、このようなことを頼めた義理ではないのですが、この状況をなんとかしていただけないでしょうか?」
執事は必死な想いで懇願した。
「ローレンス、その人物、この地方の異様な事態に関わっていると思いますか?」
「確証こそ無いですが、このタイミングで現れた不審な人物、とても無関係とは思えませんよ」
「やはりそう思いますか……あの、その方はいつ頃からこちらへ?」
「半年ほど前でしょうか? 行き場もなく倒れていたところを旦那様が見つけ、城に客人として招かれたのです」
「普段はどちらへ?」
「ええ、どうやら工場経営に勤しまれているようで普段はそちらの執務室に」
「わかりました。ありがとうございます。キャドバリー侯に近づくその人物、私達で探ってみたいと思います」
アリシア達は城を後にした。
しかし、湖に浮かぶ白鷺の如き美しさと形容されるその威容も、湖の発する黒い霧に覆われてすっかり薄汚れた景観となっていた。
「これはこれはよくお越しくださいました、姫殿下。それにローレンス卿も」
出迎えた執事は丁寧な対応で二人を出迎えた。
「事前の連絡も無く、失礼とは存じますが、キャドバリー侯にお目通りはかなうでしょうか?」
アリシアが尋ねた。しかし、執事は首を縦には振らず、渋い顔をした。何か事情があるのだろうか。
「申し訳ございません。旦那様はご病気でして、我々でもお会いになられないのです」
「ご病気……ですか? では侯爵夫人が世話をされているのですか?」
「いえ、奥様も例外ではなく、今は食客の者としか会われないといった様子で……」
「それは妙だね。素性も知れない者とばかり会うなんて、どの様な人物なんだい?」
「それが、いつもフードを被られており、我々とは挨拶程度しか交わさないのでどのような方かほとんどわからないのです。下働きの者がちらりと顔を垣間見て、見目麗し女性らしいということは分かったのですが」
「奥様を放って、美女ばかり部屋に招いて閨を共にするなんて随分と羨ましいことだ。俺も見習いたいな」
「ローレンス、そういうことではないでしょう」
アリシアが呆れを口にした。
「いえ、旦那様に限ってその様なことはありえません。あの者が来てからというもの、旦那様が倒れられたり、街に異変が起こったりと妙なこと続きです。今ではすっかり領主業と工場経営まで代行されて」
「待ってください。この地方の統括を行っているのは、その方なのですか?」
アリシアは大いに驚いた。体調を理由に領主の仕事を代行してもらうことこそ決して珍しくはないが、それを素性の知れぬものに任せるなどありえないことであった。
「ええ。本人は旦那様の委任を受けていると言っていますが、法外な徴税に強制労働、とても旦那様のされることとは思えません」
「確かにキャドバリー侯は貴族派ではありますが、気の弱いながら領民想いの良い領主でした。それが、この様な異変を見過ごして徴税に勤しむなど妙かもしれません」
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