夢奪われた劣等剣士は銀の姫の守護騎士となり悪徳貴族に叛逆する
決戦(2)
ジャファルの振るった剣、それを止めたのはエルドとカイムの剣であった。
「カイムにエルド、随分遅い目覚めだったな」
「ああ、お陰様で良い夢が見れた」
「そうだね、心なしか身体が軽い」
二人がジャファルの剣を弾くと、エルドは追い討ちをかけるように宙に逃げたジャファルに斬りかかる。
ジャファルはたやすくそれを躱すが、その瞬間、剣をかすらせ"海"へと落下していくエルドの背に隠れていた風刃が一斉に飛びかかってきた。
「小癪な」
結界の切れたジャファルは水を指揮するように左手を振るうと、"海"から巻き上がった水で防壁を展開した。すると風刃は防壁に吸い込まれるように溶けて消え去ってしまった。
しかし、それで終わるカイムでは無く。今度はジャファルの足元に旋風を発生させてその身を切り刻もうとする。
「ぬぅっ!!」
ジャファルは足元に渦のような水流を生み出し、旋風にかち合わせてその攻撃を止める。
「そこだ!!」
しかし、その隙を突いて、突如エルドがジャファルの背に現れた。咄嗟に剣を背に回して防御しようとするが、エルドの渾身の袈裟斬りには耐えきれず、剣ごと背を斬られると、集中を切らして渦を消失させてしまった。
「いいぞ、エルド!」
カイムは更に魔力を込めて旋風を肥大化させると、その奔流でジャファルを呑み込み、岩壁に叩きつける。
するとエルドは自分の番と、着水と同時に"海"を蹴り上げてジャファルへ追撃した。
驚くことにエルドはこのほとんど足場の無い場所で、水面を蹴り上げるという荒業で三次元機動を行っていた。
「くっ、デタラメな」
ジャファルは咄嗟に右手を構えて、エルドに落雷を落として撃墜しようとする。
「それを待ってた」
エルドは剣を天に掲げるとその落雷をまともに受けた。
そして、剣に引かれるように雷撃が直撃した瞬間、雷光が周囲を覆わんばかりに光り輝いた。
「エルドっ!?」
予期せぬ行動で雷に打たれたエルドを案じて、カイムが叫び出した。
しかしその稲光の中、現れたのは全身に雷を帯電させたエルドの姿であった。
「エルド、その雷は……?」
それは雷帝……エルドの父・アルバートを彷彿とさせる光景であった。
エルドは雷撃によって巻き起こった黒煙を払い、まるで稲妻のように一直線にジャファルへと奔ると、剣を振るって雷電を飛ばした。ジャファルは周囲の水を操り、水弾を放ってそれらを撃ち落とす。
しかし、閃光のように飛来するエルドを止めるには足りず。今度はありったけの水流でエルドを押し返そうとする。
「させねえ!!」
カイムは再び旋風をエルドの目の前に発生させた。それはエルドを包み、その身から発せられる雷電を纏いながら、まるで掘削用のドリルのように螺旋を描いていく。
「カイム、ナイスアシストだ」
エルドは風と稲妻の穿孔でジャファルの放った水流を貫通すると、生身を晒したジャファルに帯電する大剣を思い切り叩きつけた。
「がぁあああああああああああ」
その斬撃の瞬間、エルドの重い一撃と共に眩いばかりの雷光が奔ると、同時にジャファルの絶叫が響いた。
「はぁ……はぁ……」
エルドは肩で息をしながら、かろうじて着地した足場で膝をつく。
「エルド、お前まさか魔法が……?」
カイムは驚きの表情を浮かべていた。
これまで、エルドは基礎魔法よりも複雑なものを発動させようとすると、その体内の霊子を暴走させていた。
しかし先程の、雷撃を身に纏ったエルドの攻撃、それは紛れもなく雷魔法であった。
「うん……賭けだったけど、今の僕なら出来ると思って」
「無理やり雷を食らって、まるで撃鉄のように体内に眠る雷を呼び起こすか……まったくでたらめなやつだ」
「本当ですよ。一歩間違えれば大怪我でしたよ」
どうやら目覚めていたのか、二人のもとにアリシアがやってきていた。
「ごめん。二人の言う通り。もう、くたくたみたいだ」
さすがに初めての魔法行使に消耗したのか、エルドもまた霊子欠乏症を起こしていた。
「無理もありません。エルドはしっかり休んでいてください。後は私達三人で」
その時、白い焔が空を舞った。それは花びらのようにはらりはらりと舞い落ちると、鳳仙花のように辺りに散った。そして辺り一面を覆わんばかりに燃え広がると、まるで蕾を描くように揺らめいた。
「何だこれは?」
突如舞い落ちる白焔に、カイムが警戒する。しかしそれらは、カイム達が触れても全く熱さのない不思議な焔であった。
そして次の瞬間、蕾が薔薇の花を開かせたと思うと、一瞬で辺りの"海"を蒸発させた。
「情けないけどどうやら寝坊したみたいね」
薔薇の華焔の中心にフレイヤが降り立った。
火炎魔法を極め、その果てに編み出した華焔とも呼べるほどに鮮烈で美しい白焔、それはフレイヤの得意とする魔法であった。フレイヤの放つ、あまりにも美しい焔の舞いに一同は見惚れる。
「《真紅の美姫》……恥ずかしい通り名だと思ったが、こうやって目の当たりにするとたしかにしっくり来るな」
カイムがぽつりと呟いた。
やがて、焔がかき消えた。
「"海"が消えたか……」
エルドの一撃をまともに食らい、消耗しきったジャファルが息も絶え絶えに起き上がる。その翼はエルドの攻撃でまともに飛べなくなるほどに千切れ飛んでおり、全身からはドクドクと血を流すなど、瀕死といった様子であった。
「しぶといな、おっさん。なんだってそこまで粘るんだ。いい加減、投降しろ。もう十分だろ」
ジャファルはこの場に集まった者達の力量を測らんと、魔神化して戦いを仕掛けてきた。しかし、力を示すのであれば先程の一連の攻撃で足りる、少なくともカイムはそう考えていた。
「黙れ……」
しかし、ジャファルは苛立ったようにぽつりと漏らした。
「娘が……ライラがあんな目に遭って、物分かりがよくなれるはずがないだろう」
ジャファルは立つのもやっとといった様子で声を絞り出した。
「これから先、ライラが傷付かず健やかに暮らせる保証がどこにある?」
ジャファルは片足を引きずりながら、歩いてくる。
「お前が、お前達が保証してくれるというのか?」
カイムはジャファルをキッと見返して、口を開く。
「あんたも見ただろう。アリシアによって、この国はほんの少しだが変化の兆しを見せた。フィリアはたった一人であんたに抗った。何が不満なんだ」
「確かにイシュメルの希望は見えた。フィリアも俺の想像を超えて成長していた。だが娘のこととなると別だ。ライラは命を失うところだった……その恐怖はいつまでも俺の心に重くのしかかる。次に何かあったら、俺では守りきれないかもしれん。そんな不安に苛まれる親の気持ちが貴様などにわかるか!!」
それは妻を失い、長く一人で娘を守ってきた一人の親の悲痛な思いであった。
常にその身を案じ、成長を見守ってきた者にとって、その子を失うのは身を引き裂かれるほどに辛く、苦しい。それは親の立場になったことのないカイムたちには、想像だにしえないものであろう。
その言葉を聞いて一同はしばらく沈黙した。
「ハハッ……」
しかし、それを裂いたのはカイムの嘲笑であった。
「何かと思えばくだらない」
カイムはジャファルの苦悩を一笑に付した。そして、まるでジャファルを嘲るかのように高笑いを浮かべたのである。
「カ、カイムくん!?」
その突然の行動にアリシアは戸惑いを見せた。側に控えていたフレイヤもまた同様であった。
しかし、カイムは構わずその口を開いた。
「なんてことねえ。ただ一人のバカ親が子離れできないってだけの話だ。あまりに下らなさ過ぎて笑えてきたぜ」
「何だと?」
安っぽい挑発であった。しかし、その一言が許せずジャファルは静かに激昂した。
「取り消せ」
どこに残っていたのか、ジャファルは全身に黒い闘気を漲らせ、右手に剣を生成すると、地を揺らしながらゆっくりとカイムの方へと歩みを進めた。
「お断りだ。イシュメルのため、国のためだの、随分大層な大義名分を並べて、これだけの事件を引き起こしておきながら、娘を失うのが怖いだと? あまりにもダサすぎるぜ」
カイムはなおも挑発を続ける。
「貴様……どこか気に入らん小僧だと思っていたが、そういう腹積もりなら容赦はしない。俺の全存在を賭けて殺してやる」
ジャファルは空中の水分を操作して剣を作り出すと、その切っ先をカイムに向けた。
「だ、駄目!! カイム、叔父様」
その様子を見かねて、戦いを見守っていたフィリアが二人を止めようとする。しかし――
「「黙っていろ!!!!」」
フィリアの静止は、息を合わせて叫んだ二人によって阻まれた。その怒号に気圧されて、フィリアは押し黙る。
「エルドの攻撃でボロボロな中年、余裕だな」
カイムは剣を構えて、全身に魔力を漲らせた。それは純粋な身体強化と、剣技のみで圧倒することを宣言していた。
「所詮は学生あがりの半端者だ。捻り潰してやる」
両者は得物を構えて対峙する。
「いかがされますか、殿下?」
アリシアとフレイヤはカイムの真意が読めなかった。何故あの様な見え透いた挑発を行い、ジャファルを激昂させるのか。
「やらせてあげてほしい……」
二人の疑問に答えたのはエルドであった。
「カイムは僕と同様、捻くれてるけど、他人の大切な想いを踏みにじるようなことは絶対にしない。だから、ああやって挑発するのはなにか理由があるはずなんだ。だから、お願い今は…………ぐっ」
エルドは無理に立ち上がった反動で苦しみを訴え、倒れ込んた。アリシアはそれをそっと抱き止めると、丁寧に地に横たわらせる。
「エルド……分かりました。一番の理解者であるあなたがそう言うのなら、私達は彼らを見守ることにします」
立ちはだかるのは魔人を超え、悪魔をも超えた魔神。たとえ翼もげ、霊子が僅かであろうとカイムの勝機はほとんどなかった。
しかし、カイムもまた尋常でない闘気をその身に宿らせて魔神に対峙していた。
やがて雨が上がり始め、曇り空の残った渓谷地、そこに残された微かな水たまりに最後の雨粒がぽとりと落ちた時――
――――二人の剣が火花を散らせた。
「カイムにエルド、随分遅い目覚めだったな」
「ああ、お陰様で良い夢が見れた」
「そうだね、心なしか身体が軽い」
二人がジャファルの剣を弾くと、エルドは追い討ちをかけるように宙に逃げたジャファルに斬りかかる。
ジャファルはたやすくそれを躱すが、その瞬間、剣をかすらせ"海"へと落下していくエルドの背に隠れていた風刃が一斉に飛びかかってきた。
「小癪な」
結界の切れたジャファルは水を指揮するように左手を振るうと、"海"から巻き上がった水で防壁を展開した。すると風刃は防壁に吸い込まれるように溶けて消え去ってしまった。
しかし、それで終わるカイムでは無く。今度はジャファルの足元に旋風を発生させてその身を切り刻もうとする。
「ぬぅっ!!」
ジャファルは足元に渦のような水流を生み出し、旋風にかち合わせてその攻撃を止める。
「そこだ!!」
しかし、その隙を突いて、突如エルドがジャファルの背に現れた。咄嗟に剣を背に回して防御しようとするが、エルドの渾身の袈裟斬りには耐えきれず、剣ごと背を斬られると、集中を切らして渦を消失させてしまった。
「いいぞ、エルド!」
カイムは更に魔力を込めて旋風を肥大化させると、その奔流でジャファルを呑み込み、岩壁に叩きつける。
するとエルドは自分の番と、着水と同時に"海"を蹴り上げてジャファルへ追撃した。
驚くことにエルドはこのほとんど足場の無い場所で、水面を蹴り上げるという荒業で三次元機動を行っていた。
「くっ、デタラメな」
ジャファルは咄嗟に右手を構えて、エルドに落雷を落として撃墜しようとする。
「それを待ってた」
エルドは剣を天に掲げるとその落雷をまともに受けた。
そして、剣に引かれるように雷撃が直撃した瞬間、雷光が周囲を覆わんばかりに光り輝いた。
「エルドっ!?」
予期せぬ行動で雷に打たれたエルドを案じて、カイムが叫び出した。
しかしその稲光の中、現れたのは全身に雷を帯電させたエルドの姿であった。
「エルド、その雷は……?」
それは雷帝……エルドの父・アルバートを彷彿とさせる光景であった。
エルドは雷撃によって巻き起こった黒煙を払い、まるで稲妻のように一直線にジャファルへと奔ると、剣を振るって雷電を飛ばした。ジャファルは周囲の水を操り、水弾を放ってそれらを撃ち落とす。
しかし、閃光のように飛来するエルドを止めるには足りず。今度はありったけの水流でエルドを押し返そうとする。
「させねえ!!」
カイムは再び旋風をエルドの目の前に発生させた。それはエルドを包み、その身から発せられる雷電を纏いながら、まるで掘削用のドリルのように螺旋を描いていく。
「カイム、ナイスアシストだ」
エルドは風と稲妻の穿孔でジャファルの放った水流を貫通すると、生身を晒したジャファルに帯電する大剣を思い切り叩きつけた。
「がぁあああああああああああ」
その斬撃の瞬間、エルドの重い一撃と共に眩いばかりの雷光が奔ると、同時にジャファルの絶叫が響いた。
「はぁ……はぁ……」
エルドは肩で息をしながら、かろうじて着地した足場で膝をつく。
「エルド、お前まさか魔法が……?」
カイムは驚きの表情を浮かべていた。
これまで、エルドは基礎魔法よりも複雑なものを発動させようとすると、その体内の霊子を暴走させていた。
しかし先程の、雷撃を身に纏ったエルドの攻撃、それは紛れもなく雷魔法であった。
「うん……賭けだったけど、今の僕なら出来ると思って」
「無理やり雷を食らって、まるで撃鉄のように体内に眠る雷を呼び起こすか……まったくでたらめなやつだ」
「本当ですよ。一歩間違えれば大怪我でしたよ」
どうやら目覚めていたのか、二人のもとにアリシアがやってきていた。
「ごめん。二人の言う通り。もう、くたくたみたいだ」
さすがに初めての魔法行使に消耗したのか、エルドもまた霊子欠乏症を起こしていた。
「無理もありません。エルドはしっかり休んでいてください。後は私達三人で」
その時、白い焔が空を舞った。それは花びらのようにはらりはらりと舞い落ちると、鳳仙花のように辺りに散った。そして辺り一面を覆わんばかりに燃え広がると、まるで蕾を描くように揺らめいた。
「何だこれは?」
突如舞い落ちる白焔に、カイムが警戒する。しかしそれらは、カイム達が触れても全く熱さのない不思議な焔であった。
そして次の瞬間、蕾が薔薇の花を開かせたと思うと、一瞬で辺りの"海"を蒸発させた。
「情けないけどどうやら寝坊したみたいね」
薔薇の華焔の中心にフレイヤが降り立った。
火炎魔法を極め、その果てに編み出した華焔とも呼べるほどに鮮烈で美しい白焔、それはフレイヤの得意とする魔法であった。フレイヤの放つ、あまりにも美しい焔の舞いに一同は見惚れる。
「《真紅の美姫》……恥ずかしい通り名だと思ったが、こうやって目の当たりにするとたしかにしっくり来るな」
カイムがぽつりと呟いた。
やがて、焔がかき消えた。
「"海"が消えたか……」
エルドの一撃をまともに食らい、消耗しきったジャファルが息も絶え絶えに起き上がる。その翼はエルドの攻撃でまともに飛べなくなるほどに千切れ飛んでおり、全身からはドクドクと血を流すなど、瀕死といった様子であった。
「しぶといな、おっさん。なんだってそこまで粘るんだ。いい加減、投降しろ。もう十分だろ」
ジャファルはこの場に集まった者達の力量を測らんと、魔神化して戦いを仕掛けてきた。しかし、力を示すのであれば先程の一連の攻撃で足りる、少なくともカイムはそう考えていた。
「黙れ……」
しかし、ジャファルは苛立ったようにぽつりと漏らした。
「娘が……ライラがあんな目に遭って、物分かりがよくなれるはずがないだろう」
ジャファルは立つのもやっとといった様子で声を絞り出した。
「これから先、ライラが傷付かず健やかに暮らせる保証がどこにある?」
ジャファルは片足を引きずりながら、歩いてくる。
「お前が、お前達が保証してくれるというのか?」
カイムはジャファルをキッと見返して、口を開く。
「あんたも見ただろう。アリシアによって、この国はほんの少しだが変化の兆しを見せた。フィリアはたった一人であんたに抗った。何が不満なんだ」
「確かにイシュメルの希望は見えた。フィリアも俺の想像を超えて成長していた。だが娘のこととなると別だ。ライラは命を失うところだった……その恐怖はいつまでも俺の心に重くのしかかる。次に何かあったら、俺では守りきれないかもしれん。そんな不安に苛まれる親の気持ちが貴様などにわかるか!!」
それは妻を失い、長く一人で娘を守ってきた一人の親の悲痛な思いであった。
常にその身を案じ、成長を見守ってきた者にとって、その子を失うのは身を引き裂かれるほどに辛く、苦しい。それは親の立場になったことのないカイムたちには、想像だにしえないものであろう。
その言葉を聞いて一同はしばらく沈黙した。
「ハハッ……」
しかし、それを裂いたのはカイムの嘲笑であった。
「何かと思えばくだらない」
カイムはジャファルの苦悩を一笑に付した。そして、まるでジャファルを嘲るかのように高笑いを浮かべたのである。
「カ、カイムくん!?」
その突然の行動にアリシアは戸惑いを見せた。側に控えていたフレイヤもまた同様であった。
しかし、カイムは構わずその口を開いた。
「なんてことねえ。ただ一人のバカ親が子離れできないってだけの話だ。あまりに下らなさ過ぎて笑えてきたぜ」
「何だと?」
安っぽい挑発であった。しかし、その一言が許せずジャファルは静かに激昂した。
「取り消せ」
どこに残っていたのか、ジャファルは全身に黒い闘気を漲らせ、右手に剣を生成すると、地を揺らしながらゆっくりとカイムの方へと歩みを進めた。
「お断りだ。イシュメルのため、国のためだの、随分大層な大義名分を並べて、これだけの事件を引き起こしておきながら、娘を失うのが怖いだと? あまりにもダサすぎるぜ」
カイムはなおも挑発を続ける。
「貴様……どこか気に入らん小僧だと思っていたが、そういう腹積もりなら容赦はしない。俺の全存在を賭けて殺してやる」
ジャファルは空中の水分を操作して剣を作り出すと、その切っ先をカイムに向けた。
「だ、駄目!! カイム、叔父様」
その様子を見かねて、戦いを見守っていたフィリアが二人を止めようとする。しかし――
「「黙っていろ!!!!」」
フィリアの静止は、息を合わせて叫んだ二人によって阻まれた。その怒号に気圧されて、フィリアは押し黙る。
「エルドの攻撃でボロボロな中年、余裕だな」
カイムは剣を構えて、全身に魔力を漲らせた。それは純粋な身体強化と、剣技のみで圧倒することを宣言していた。
「所詮は学生あがりの半端者だ。捻り潰してやる」
両者は得物を構えて対峙する。
「いかがされますか、殿下?」
アリシアとフレイヤはカイムの真意が読めなかった。何故あの様な見え透いた挑発を行い、ジャファルを激昂させるのか。
「やらせてあげてほしい……」
二人の疑問に答えたのはエルドであった。
「カイムは僕と同様、捻くれてるけど、他人の大切な想いを踏みにじるようなことは絶対にしない。だから、ああやって挑発するのはなにか理由があるはずなんだ。だから、お願い今は…………ぐっ」
エルドは無理に立ち上がった反動で苦しみを訴え、倒れ込んた。アリシアはそれをそっと抱き止めると、丁寧に地に横たわらせる。
「エルド……分かりました。一番の理解者であるあなたがそう言うのなら、私達は彼らを見守ることにします」
立ちはだかるのは魔人を超え、悪魔をも超えた魔神。たとえ翼もげ、霊子が僅かであろうとカイムの勝機はほとんどなかった。
しかし、カイムもまた尋常でない闘気をその身に宿らせて魔神に対峙していた。
やがて雨が上がり始め、曇り空の残った渓谷地、そこに残された微かな水たまりに最後の雨粒がぽとりと落ちた時――
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