夢奪われた劣等剣士は銀の姫の守護騎士となり悪徳貴族に叛逆する
方針
イシュメル人街の消火と救護が一段落し、エルド達は一度アリシアの別宅に戻っていた。ジャファルは消火後そのまま自分の家に戻ったため、その場に居たのはエルド・アリシア・カイム・フィリアの四人であった。
「そんな、そんなことって……」
エルドは十年前、帝国との休戦協定締結の日に起こった《グリューネの落日》に前後する記憶を失っていること、そしてたった今思い出した記憶の断片についてアリシア達に語った。
「昔から火を間近で見ると胸がざわつくことがあったんだ。それがなんでかは分からないし、普段目にするような火ぐらいだったら気に留めることもなかった。だけど、イシュメル人街を火が包み、人々の怒号と悲鳴が響き渡るのを聞いた時、頭と胸が張り裂けそうな痛みと一緒に記憶の一片が頭に流れ込んできた」
アリシア達は言葉を失っていた。子供の頃に見せられた母の死の情景、それを耳にして彼女たちに紡げる言葉は何もなかった。
「僕の両親はどうやって死んだのか、今までどうしても思い出せなかった。でも思い出そうとする度に心から黒い感情が湧き上がるのは感じていた。その理由がわかったよ。母さんはあの厄災を起こしたという濡れ衣を着せられて火炙りにされたんだ」
静かにゆっくりと語るエルドであったが、その拳は強く握りしめられていた。
「でもあの厄災の日、母さんは僕と一緒にいた。厄災が起きてからは父さんと一緒に厄災を止めようとして……だからそんなことできるわけがないんだ」
「エルドくん、もしかして貴方の両親は……」
その話を聞いたアリシアには心当たりがあるようだ。
「うん。アルバート・シェフィールド、クラリス・シェフィールド、それが僕の両親の名前だ」
「先代の守護騎士にしてお父様の股肱の臣だなんて……そんなことって……」
吟遊詩人の歌に出る先代公王の騎士たち、それがエルドの両親であった。
「ちょっと待てよ、エルド。アルバートとクラリスは、あの厄災を引き起こした魔導兵器を倒した英雄じゃないのか? それがなんだって火炙りにされたんだ」
「わからない。それこそが僕が追い求めてる真実だ。母さんは厄災を止めた英雄として名を残し、その一方で厄災を起こした魔女として顔も名も伏せられて処刑された。だけどそうなら誰があの厄災を? どうして母さんが殺されなくてはいけなかったのか、僕は記憶を取り戻してそれを知りたいんだ」
「エルドは確か、元々国境警備隊の志望でしたね? それも記憶を取り戻したいがためだったんですね。すみません。そうとも知らずに私のわがままに巻き込んでしまって……」
アリシアは頭を下げる。
「そんなことないよ。確かに最初はそういった考えから国境警備隊を志望した。でも、アリシアの話を聞いてアリシアの実現したいことに賛同して僕はついていくことを決めたんだ。だから、これは僕の意志だし、アリシアが謝ることなんて何一つ無いよ」
「エルド……」
「そして何より父さんも母さんもこの国を変えたいと願っていた。アルスターは良いところだけど、地方は必ずしもそうじゃない。フェリクサイトの採掘に人々が従事させられたり、重い税を掛けられて苦しんでいる地方だってある。だけど、アリシアと一緒なら父さんたちが理想としていた、貴族と平民の別なく幸せに暮らせる国が実現出来るかもしれない。だからそのきっかけを与えてくれたアリシアには感謝してるよ」
エルドの心からの言葉にアリシアは思わず顔を伏せた。それを見たフィリアがそっと背中をさすった。
「ところでこの話を知ってるのは私達だけかな?」
「ううん。みんなの他にはクライド中将とレオン、それからフレイヤ少佐が知ってるよ」
「な……あのクソじじい知ってたのかよ」
クライドは平民出身の将校で、カイムの育ての親に当たる人物である。しかしその名前を聞いたカイムが悪態をつき始める辺り、二人の家族関係が伺われるようであった。
「うん。追手に追われていた僕とレオンの死を偽装して新しい戸籍をくれたのは中将なんだ。その後はイーグルトン家に引き取られて――――」
「待てよ……そうするとお前、フレイヤ少佐は実の姉じゃないのか?」
「え? それ今関係ある?」
「当たり前だ! お前そんな――――」
「カイム、うるさい。話が進まない」
突然興奮しだすカイムであったが、フィリアがその耳をつまんで引っ張り上げて黙らせた。
「さ、続けて」
「あ、うん」
「でもまさか、フレイヤの家がエルドを引き取ったなんて聞いたことありませんでした。そうなると、もしかしてレオン少佐も?」
「レオンは僕の兄で、フレイヤと一緒に引き取られたんだ。今となっては唯一の肉親だよ」
「さすがに理解が追いつかねえ。女受けする童顔だけじゃなくて、血統書付きのサラブレッドだったのか? しかも貴族の家に引き取られて美人な義理の姉が出来るって設定まで? おかしいだろ! なんで俺が引き取られたのはあんなジジイなんだ!? 不公平だ。この世界は間違ってる」
相も変わらずカイムはぶつぶつと何か騒いでいた。その様子に呆れてエルドがため息をつく。さすがのアリシアも苦笑いを浮かべていた。
「……でも、巡り合わせだったのかもしれません」
「どういうこと?」
「あの地竜を討伐した演習の時です。とある領主の治める村を荒らす蜥蜴種を討伐するだけの簡単な任務のはずだった。だけどあの魔獣たちを背後で操っていた巨大な地竜が姿を表し村を襲った時、貴族生徒の一部は我先にと逃亡し、貴族の領主だけでも逃がそうとした。残った生徒たちも怯え竦んでいた。でもそんな中、あなた達だけが竜に果敢に挑んだ。その背に守るべき人たちのために遥かに強大な敵に立ち向かうあなた達の姿に、かつて平民と貴族の別なく民たちのために苦心した父の背中を見た気がしました。だから私はあなた達を守護騎士に任命しようと決めたのです。でもまさかその一人が、父が最も信頼していた騎士のご子息だったなんて」
「アリシア……」
しばらく沈黙する。かつて王とその直属の騎士として名を馳せた二人の子がこうして巡り会えたことに二人は運命的なものを感じていた。
「まあ、その守ろうとした人の一人だった太ったおっさんを餌にして地竜を森ごと焼き払おうって言い出したのはこいつなんだけどな」
「茶化すな」
その神妙な雰囲気も程なくカイムの横槍で台無しにされてしまった。
「確かに手段は過激でしたけど……あはは」
アリシアは苦笑いした。
「まあ、そんなわけで今回はあの火事を見てお前は過去の記憶が蘇ったってわけ。でも何だって記憶を失ったんだろうな」
「そうだね……どうやら僕の記憶は誰かに封じられてたみたいだ」
「どういうことだ?」
「さっき母さんの死の光景を思い出した時、ついでに思い出したんだけど、あの後誰かが僕のもとにやってきて何かの術を掛けたんだ」
「誰かというのは思い出せないのですか?」
「うん、顔だけは靄がかかったようにしか思い出せなくて、声もはっきりしない」
「なんだか謎だらけだな」
「あの事件によって私の父も命を落としました。その背景に何者かの陰謀が隠れているのであれば、いずれエルドくんの記憶を辿る必要があるでしょうね」
「そうだね。でもまずはこれまでの整理とこれからのことを話し合おうか」
本題はそこだ。イシュメル人とアルスターの民の対立は極まり、一つの悲惨な事件が起こった。これ以上の争いの拡大を抑えるためにも、次の行動を考えなければいけなかった。
「そうだな。まず事の始まりは水源の汚染とアーケードの襲撃事件だ。後者がイシュメル人が首謀者で、前者もそうだと噂されてるな」
「でも後者には不自然な点があったね。公国では珍しい、騎竜の運用と獣化したイシュメルの人達、これらの手段はどこで用意したのかな」
フィリアが首をかしげる。
「獣化はともかく、騎竜に関してはヒントがあった。わかるかエルド?」
「うん。イシュメル人達に食料を売っていた商人だね。彼はシュネーヴァイスの品を扱っていた。シュネーヴァイスといえば騎竜の産地だ」
「そういった事情から、私は一連の事件を扇動した何者かが居るのではと睨みました。そして実際に、カーティスという男が彼らに戦闘訓練を施していた事がわかりました」
「私はキシュワードさんと一緒にイシュメルの人達と戦ったけど、たしかに彼らの中には戦いに不慣れな若い人も居たよ。付け焼き刃だけど何らかの訓練を受けていたような動きだったと思う」
「ぶっちゃけ、アリシアの見当は当たってるんじゃないか? もちろん証拠はないがこうしてイシュメル人とアルスターの人間の間の対立が極まった以上、早々に連中を追うべきだと思うぞ」
「…………」
エルドたちも同意であった。しかし、アリシアはなにか考え込んでいる様子であった。
「どうしたの、アリシア? 何か気になることがあるの?」
フィリアが尋ねる。
「ええ、先程の暴動、いくらなんでも早すぎると思いました。アーケードの事件については箝口令を敷いていたはずなのに」
「でもマスターも事件の事を知ってたし、事件に遭った人達の口から伝わった噂が彼らを駆り立てたんだと思うけど」
「それにしては準備が良すぎるのです。彼らの家屋が燃えにくいことを考慮してわざわざ猛火油を用意する。頭に血が昇った状態で周到に準備できるでしょうか? 加えて、あの事件がイシュメル人の主導であったという情報まで広まっているのはおかしいです。ただあの事件に遭遇したというだけでは、その首謀者が誰かということまでは確証が得られないはずです」
「確かにな。襲撃にイシュメル人が参加していた場面を見たとしても、それがイシュメル人だけの仕業なのか、あるいはイシュメル人も含めた何らかの集団の仕業なのかまでは特定できないはずだな。無論、怒りに我を忘れてそんなことまで考えられずにイシュメル人達を犯人と決めつけた可能性も十分考えられるが」
「ええ。ですが今回の一連の騒動については、まだ私達の知らない裏が隠されている、そんな予感がするのです」
「確かにアリシアの言うとおりかも。あのときの暴徒たち、とても怖い目をしていた。まるで何かに取り憑かれたみたいに」
「でもアリシアの予感通り何か別の裏があるとして、それをどう探ろうか」
「水源に行ってみませんか? あの水源の汚染について、私たちはまだ何も調査していませんし」
「そうだな。時間はあまりないがここはアリシアの予感に従ってみよう」
そうして四人はアリシアの別宅を後にした。
「そんな、そんなことって……」
エルドは十年前、帝国との休戦協定締結の日に起こった《グリューネの落日》に前後する記憶を失っていること、そしてたった今思い出した記憶の断片についてアリシア達に語った。
「昔から火を間近で見ると胸がざわつくことがあったんだ。それがなんでかは分からないし、普段目にするような火ぐらいだったら気に留めることもなかった。だけど、イシュメル人街を火が包み、人々の怒号と悲鳴が響き渡るのを聞いた時、頭と胸が張り裂けそうな痛みと一緒に記憶の一片が頭に流れ込んできた」
アリシア達は言葉を失っていた。子供の頃に見せられた母の死の情景、それを耳にして彼女たちに紡げる言葉は何もなかった。
「僕の両親はどうやって死んだのか、今までどうしても思い出せなかった。でも思い出そうとする度に心から黒い感情が湧き上がるのは感じていた。その理由がわかったよ。母さんはあの厄災を起こしたという濡れ衣を着せられて火炙りにされたんだ」
静かにゆっくりと語るエルドであったが、その拳は強く握りしめられていた。
「でもあの厄災の日、母さんは僕と一緒にいた。厄災が起きてからは父さんと一緒に厄災を止めようとして……だからそんなことできるわけがないんだ」
「エルドくん、もしかして貴方の両親は……」
その話を聞いたアリシアには心当たりがあるようだ。
「うん。アルバート・シェフィールド、クラリス・シェフィールド、それが僕の両親の名前だ」
「先代の守護騎士にしてお父様の股肱の臣だなんて……そんなことって……」
吟遊詩人の歌に出る先代公王の騎士たち、それがエルドの両親であった。
「ちょっと待てよ、エルド。アルバートとクラリスは、あの厄災を引き起こした魔導兵器を倒した英雄じゃないのか? それがなんだって火炙りにされたんだ」
「わからない。それこそが僕が追い求めてる真実だ。母さんは厄災を止めた英雄として名を残し、その一方で厄災を起こした魔女として顔も名も伏せられて処刑された。だけどそうなら誰があの厄災を? どうして母さんが殺されなくてはいけなかったのか、僕は記憶を取り戻してそれを知りたいんだ」
「エルドは確か、元々国境警備隊の志望でしたね? それも記憶を取り戻したいがためだったんですね。すみません。そうとも知らずに私のわがままに巻き込んでしまって……」
アリシアは頭を下げる。
「そんなことないよ。確かに最初はそういった考えから国境警備隊を志望した。でも、アリシアの話を聞いてアリシアの実現したいことに賛同して僕はついていくことを決めたんだ。だから、これは僕の意志だし、アリシアが謝ることなんて何一つ無いよ」
「エルド……」
「そして何より父さんも母さんもこの国を変えたいと願っていた。アルスターは良いところだけど、地方は必ずしもそうじゃない。フェリクサイトの採掘に人々が従事させられたり、重い税を掛けられて苦しんでいる地方だってある。だけど、アリシアと一緒なら父さんたちが理想としていた、貴族と平民の別なく幸せに暮らせる国が実現出来るかもしれない。だからそのきっかけを与えてくれたアリシアには感謝してるよ」
エルドの心からの言葉にアリシアは思わず顔を伏せた。それを見たフィリアがそっと背中をさすった。
「ところでこの話を知ってるのは私達だけかな?」
「ううん。みんなの他にはクライド中将とレオン、それからフレイヤ少佐が知ってるよ」
「な……あのクソじじい知ってたのかよ」
クライドは平民出身の将校で、カイムの育ての親に当たる人物である。しかしその名前を聞いたカイムが悪態をつき始める辺り、二人の家族関係が伺われるようであった。
「うん。追手に追われていた僕とレオンの死を偽装して新しい戸籍をくれたのは中将なんだ。その後はイーグルトン家に引き取られて――――」
「待てよ……そうするとお前、フレイヤ少佐は実の姉じゃないのか?」
「え? それ今関係ある?」
「当たり前だ! お前そんな――――」
「カイム、うるさい。話が進まない」
突然興奮しだすカイムであったが、フィリアがその耳をつまんで引っ張り上げて黙らせた。
「さ、続けて」
「あ、うん」
「でもまさか、フレイヤの家がエルドを引き取ったなんて聞いたことありませんでした。そうなると、もしかしてレオン少佐も?」
「レオンは僕の兄で、フレイヤと一緒に引き取られたんだ。今となっては唯一の肉親だよ」
「さすがに理解が追いつかねえ。女受けする童顔だけじゃなくて、血統書付きのサラブレッドだったのか? しかも貴族の家に引き取られて美人な義理の姉が出来るって設定まで? おかしいだろ! なんで俺が引き取られたのはあんなジジイなんだ!? 不公平だ。この世界は間違ってる」
相も変わらずカイムはぶつぶつと何か騒いでいた。その様子に呆れてエルドがため息をつく。さすがのアリシアも苦笑いを浮かべていた。
「……でも、巡り合わせだったのかもしれません」
「どういうこと?」
「あの地竜を討伐した演習の時です。とある領主の治める村を荒らす蜥蜴種を討伐するだけの簡単な任務のはずだった。だけどあの魔獣たちを背後で操っていた巨大な地竜が姿を表し村を襲った時、貴族生徒の一部は我先にと逃亡し、貴族の領主だけでも逃がそうとした。残った生徒たちも怯え竦んでいた。でもそんな中、あなた達だけが竜に果敢に挑んだ。その背に守るべき人たちのために遥かに強大な敵に立ち向かうあなた達の姿に、かつて平民と貴族の別なく民たちのために苦心した父の背中を見た気がしました。だから私はあなた達を守護騎士に任命しようと決めたのです。でもまさかその一人が、父が最も信頼していた騎士のご子息だったなんて」
「アリシア……」
しばらく沈黙する。かつて王とその直属の騎士として名を馳せた二人の子がこうして巡り会えたことに二人は運命的なものを感じていた。
「まあ、その守ろうとした人の一人だった太ったおっさんを餌にして地竜を森ごと焼き払おうって言い出したのはこいつなんだけどな」
「茶化すな」
その神妙な雰囲気も程なくカイムの横槍で台無しにされてしまった。
「確かに手段は過激でしたけど……あはは」
アリシアは苦笑いした。
「まあ、そんなわけで今回はあの火事を見てお前は過去の記憶が蘇ったってわけ。でも何だって記憶を失ったんだろうな」
「そうだね……どうやら僕の記憶は誰かに封じられてたみたいだ」
「どういうことだ?」
「さっき母さんの死の光景を思い出した時、ついでに思い出したんだけど、あの後誰かが僕のもとにやってきて何かの術を掛けたんだ」
「誰かというのは思い出せないのですか?」
「うん、顔だけは靄がかかったようにしか思い出せなくて、声もはっきりしない」
「なんだか謎だらけだな」
「あの事件によって私の父も命を落としました。その背景に何者かの陰謀が隠れているのであれば、いずれエルドくんの記憶を辿る必要があるでしょうね」
「そうだね。でもまずはこれまでの整理とこれからのことを話し合おうか」
本題はそこだ。イシュメル人とアルスターの民の対立は極まり、一つの悲惨な事件が起こった。これ以上の争いの拡大を抑えるためにも、次の行動を考えなければいけなかった。
「そうだな。まず事の始まりは水源の汚染とアーケードの襲撃事件だ。後者がイシュメル人が首謀者で、前者もそうだと噂されてるな」
「でも後者には不自然な点があったね。公国では珍しい、騎竜の運用と獣化したイシュメルの人達、これらの手段はどこで用意したのかな」
フィリアが首をかしげる。
「獣化はともかく、騎竜に関してはヒントがあった。わかるかエルド?」
「うん。イシュメル人達に食料を売っていた商人だね。彼はシュネーヴァイスの品を扱っていた。シュネーヴァイスといえば騎竜の産地だ」
「そういった事情から、私は一連の事件を扇動した何者かが居るのではと睨みました。そして実際に、カーティスという男が彼らに戦闘訓練を施していた事がわかりました」
「私はキシュワードさんと一緒にイシュメルの人達と戦ったけど、たしかに彼らの中には戦いに不慣れな若い人も居たよ。付け焼き刃だけど何らかの訓練を受けていたような動きだったと思う」
「ぶっちゃけ、アリシアの見当は当たってるんじゃないか? もちろん証拠はないがこうしてイシュメル人とアルスターの人間の間の対立が極まった以上、早々に連中を追うべきだと思うぞ」
「…………」
エルドたちも同意であった。しかし、アリシアはなにか考え込んでいる様子であった。
「どうしたの、アリシア? 何か気になることがあるの?」
フィリアが尋ねる。
「ええ、先程の暴動、いくらなんでも早すぎると思いました。アーケードの事件については箝口令を敷いていたはずなのに」
「でもマスターも事件の事を知ってたし、事件に遭った人達の口から伝わった噂が彼らを駆り立てたんだと思うけど」
「それにしては準備が良すぎるのです。彼らの家屋が燃えにくいことを考慮してわざわざ猛火油を用意する。頭に血が昇った状態で周到に準備できるでしょうか? 加えて、あの事件がイシュメル人の主導であったという情報まで広まっているのはおかしいです。ただあの事件に遭遇したというだけでは、その首謀者が誰かということまでは確証が得られないはずです」
「確かにな。襲撃にイシュメル人が参加していた場面を見たとしても、それがイシュメル人だけの仕業なのか、あるいはイシュメル人も含めた何らかの集団の仕業なのかまでは特定できないはずだな。無論、怒りに我を忘れてそんなことまで考えられずにイシュメル人達を犯人と決めつけた可能性も十分考えられるが」
「ええ。ですが今回の一連の騒動については、まだ私達の知らない裏が隠されている、そんな予感がするのです」
「確かにアリシアの言うとおりかも。あのときの暴徒たち、とても怖い目をしていた。まるで何かに取り憑かれたみたいに」
「でもアリシアの予感通り何か別の裏があるとして、それをどう探ろうか」
「水源に行ってみませんか? あの水源の汚染について、私たちはまだ何も調査していませんし」
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