夢奪われた劣等剣士は銀の姫の守護騎士となり悪徳貴族に叛逆する
燻る情念
とある上空、そこではいくつかの竜たちが飛翔していた。さほど大きくはないが、数人を乗せるには十分な中型の竜だ。
飛竜種の一種で、特に騎乗様に調教されたものは騎竜と呼ばれる。男たちは巧みに騎竜を操りながら、公都アルスターへと向かっていた。
「センセイの言った通り、空の警戒は薄いな。流石に守備隊も飛翔してくるこちらには気付いただろうが」
「放っておけ、奴らなど恐れるに足りん。それよりも問題なのは……」
リーダー格の男が目の前の空を睨みつけた。そこでは数頭の天馬が美しい白の翼をはためかせ、それに乗った騎士達が槍を構えていた。
「王室親衛隊だ。貴様たち、何者だ? 騎竜など用いて何を企んでいる」
「どうやらあの《真紅の美姫》は居ないみたいだな。それならば恐れる必要もないな」
男たちは問いかけを無視して得物を構えた。
「侮られたものだな。全騎散開して各個撃破せよ。街には決して近づけるなよ」
隊長の合図で数人の騎士たちが、不審な男たちの視界を撹乱する様に散開した。そして巧みな天馬捌きで、男たちを翻弄すると槍から火炎の柱を放った。
「あれを使え、一気に片付けるぞ」
リーダー格の言葉を合図に不審な男たちは、注射器のようなものを一斉に騎竜に射し込んだ。
「何を――」
その不審な動きに疑問を差し挟む暇もなく、目の前の騎竜はこの世のものとは思えない不快な雄叫びをあげると、黒い靄を身にまといながらその肉体を不自然に隆起させた。
「な、なんなんだアレは……」
目の前の騎竜は、騎士たちの駆る天馬の二倍はある巨獣へと変貌した。
巨獣は火柱を躱し、一瞬で騎士たちの視界の外へと飛翔すると、まるで獲物を狩る猛禽類のように天馬たちを上空から急襲した。
「クッ、何としても撃ち落せ!」
騎士たちは咄嗟に火柱を放って応戦する。しかしそれらは、分厚い皮膚に焦げ一つ与えないままかき消されてしまう。
「無駄だ。そんなものは通用しない」
抵抗虚しく、急下降した竜の爪に、隊長はその胴を天馬ごと貫かれてしまった。
「ごふっ」
隊長は口から吐血をすると、だらりと腕を下ろして槍を落とした。他の騎士達も巨獣によって引き裂かれ、血の雨がしとしとと地上に垂れていった。
「許せ。これも全て我が同胞の未来のためだ」
男たちは竜の爪を引き抜くと、自由落下する天馬たちを背に公都へと飛んでいった。
「我らを虐げた忘恩の民達に、我が同胞たちの無念、思い知らせてくれる」
男たちは昏い情念をその胸に抱えて、公都の上空へと迫る。
飛竜種の一種で、特に騎乗様に調教されたものは騎竜と呼ばれる。男たちは巧みに騎竜を操りながら、公都アルスターへと向かっていた。
「センセイの言った通り、空の警戒は薄いな。流石に守備隊も飛翔してくるこちらには気付いただろうが」
「放っておけ、奴らなど恐れるに足りん。それよりも問題なのは……」
リーダー格の男が目の前の空を睨みつけた。そこでは数頭の天馬が美しい白の翼をはためかせ、それに乗った騎士達が槍を構えていた。
「王室親衛隊だ。貴様たち、何者だ? 騎竜など用いて何を企んでいる」
「どうやらあの《真紅の美姫》は居ないみたいだな。それならば恐れる必要もないな」
男たちは問いかけを無視して得物を構えた。
「侮られたものだな。全騎散開して各個撃破せよ。街には決して近づけるなよ」
隊長の合図で数人の騎士たちが、不審な男たちの視界を撹乱する様に散開した。そして巧みな天馬捌きで、男たちを翻弄すると槍から火炎の柱を放った。
「あれを使え、一気に片付けるぞ」
リーダー格の言葉を合図に不審な男たちは、注射器のようなものを一斉に騎竜に射し込んだ。
「何を――」
その不審な動きに疑問を差し挟む暇もなく、目の前の騎竜はこの世のものとは思えない不快な雄叫びをあげると、黒い靄を身にまといながらその肉体を不自然に隆起させた。
「な、なんなんだアレは……」
目の前の騎竜は、騎士たちの駆る天馬の二倍はある巨獣へと変貌した。
巨獣は火柱を躱し、一瞬で騎士たちの視界の外へと飛翔すると、まるで獲物を狩る猛禽類のように天馬たちを上空から急襲した。
「クッ、何としても撃ち落せ!」
騎士たちは咄嗟に火柱を放って応戦する。しかしそれらは、分厚い皮膚に焦げ一つ与えないままかき消されてしまう。
「無駄だ。そんなものは通用しない」
抵抗虚しく、急下降した竜の爪に、隊長はその胴を天馬ごと貫かれてしまった。
「ごふっ」
隊長は口から吐血をすると、だらりと腕を下ろして槍を落とした。他の騎士達も巨獣によって引き裂かれ、血の雨がしとしとと地上に垂れていった。
「許せ。これも全て我が同胞の未来のためだ」
男たちは竜の爪を引き抜くと、自由落下する天馬たちを背に公都へと飛んでいった。
「我らを虐げた忘恩の民達に、我が同胞たちの無念、思い知らせてくれる」
男たちは昏い情念をその胸に抱えて、公都の上空へと迫る。
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