夢奪われた劣等剣士は銀の姫の守護騎士となり悪徳貴族に叛逆する
公都の日常(1)
エルドがカウチに目をやると、ぐがーぐがーといびきをかきながらレオンがだらしなく眠りこけていた。ブランケットはこぼれ落ち、服はめくれてへそが露わになっている。
早朝の稽古を終え、朝食を平らげたかと思うとカウチに横になり、今の今までこの状態だ。仮にも英雄の名を冠し、教会から聖騎士の称号も贈られた人間とは思えないだらしのなさである。
(早く言わないとな……)
結局、騎士学校の件は伝えられず終いであった。
(よし)
エルドは意を決して、レオンに卒業の件を告げることに決めた。
「レオン、もうすぐ昼前だよ。起きなよ」
早速、レオンを起こそうと肩を揺すってみるが、起きる気配は一向にない。それどころかエルドの揺すりを疎ましく感じたのか、それから逃れようと背を向ける様に寝返りを打ってしまった。
「レオン!」
構わずさらに強く揺すってみる。しかし、今度はその手を強くはたかれた。
こっちは散々悩んでようやく意を決したというのに、その態度はなんだろう。
稽古で一本も取れず散々に叩きのめされたこともあってエルドは徐々に腹を立てた。
「…………」
脇腹を強くくすぐることにした。レオンはそこが敏感で、こうされると悶絶する。ここまですればさすがに目が覚めるだろうとエルドは容赦のない攻めを加える。
「んあっ!」
するとレオンは素っ頓狂な声をあげて物凄い勢いでのたうったかと思うとエルドの腹部を思い切り蹴飛ばした。
「な、何するんだよ!」
その暴挙に思わず憤るが、レオンは相変わらずいびきをかいている。彼の寝起きの悪さは知っていたがさすがにあんまりだろう、エルドはもう知らんと放っておくことにした。
一ヶ月後に巡礼の儀を控え、その準備としてエルドには共に旅立つ友人と、やるべきことがそれなりにある。いや、あったのだ……
友人にもまだ卒業の件は伝えていなかった。しかし、かといって用事をキャンセルするわけにも行かず、出かける支度をする。
そして書き置きに、昼食と戸締まりについての言伝とちょっぴりの恨み言を添えると玄関へと向かった。
さて、エルドが家の戸を開けるとパッと白い光が部屋に差し込んできた。そのあまりの眩しさに思わず目を瞑る。
冬が明け、街を覆う雪雲もすっかりと晴れたためか日差しは強く、石灰で塗られた家々の白壁に反射してまばゆく照っていた。
この街は付近で石灰岩が豊富に採掘されるため白い建物が数多く並んでおり、晴れの日の街並みはとても美しい。
街の西部にあるリキア山の白く壮麗な威容と相まって白亜の公都と形容されるほどだ。
エルドは心地よい光を全身に浴びながら深く呼吸をする。朝に比べると潮風も暖かで過ごしやすい。春の陽気を一通り堪能するとエルドは街を駆け出した。
白亜の壁に囲まれた緩やかな坂道を進み、二又に分かれた道の右側を通ると小さな広場に出た。
近所の子供達が集まってボール遊びをしている。エルドは彼らに軽く挨拶すると壁伝いの狭く急な階段を登っていった。
そこは街の中央と西の海岸を繋ぐ大通りだ。プランターやベンチ、小洒落た噴水の並ぶ公園が中央を貫いて、往きと帰りに分けられた道を港からの水産物を運ぶ馬車が行き交っている。
近くの停留所には丁度、中央へと向かう乗合馬車が停まっていた。御者に賃料を渡すと、エルドは車両後ろの螺旋階段から二階に上がり込んだ。
アルビオン公国最大の都市である公都アルスターにおいて乗合馬車は交通の要だ。隅の座椅子に腰掛けると、ちょうど出発の時間だったようでがたがたと馬車が走り出した。
「おや、エルドかい?」
さっそく誰かが声をかけてきた。馬車ではこの様に他人同士が談笑する光景は珍しくない。とはいえ今回話しかけてきた人物はエルドもよく知る者だった。
「ベンおじさん、奇遇だね。小麦の買い付け?」
早朝から焼き立てのパンの香りを漂わせていた近所のパン屋の主人だ。
「ああ。今日は月に一度の行商団が来る日だからな。それにしばらくは鉄道のお披露目に巡礼の儀とイベントも盛りだし」
「おじさんも出店をやるの?」
「ああ。イベントに合わせた新作も売り出すつもりだ。鉄道や姫殿下を象ったパンなんかきっと売れるぞ」
きらきらと目を輝かせながらベンは今後の展望を語る。ベンは昔からパン作りに情熱を燃やし、新作の研究に余念がない程であった。
とはいえ殿下の顔まで再現するのはどうなのだろうか、エルドは心の中で疑問を浮かべつつも愛想笑いを浮かべた。
「そういや聞いたか? 南西の水道の話」
「聞いたよ。水源が汚染されたって話だよね?」
「ああ。おかげで街の南西部じゃ、まともに水が飲めやしない。イシュメルの連中が好意で浄化してくれてるそうだが、如何せん汚染被害の規模が大きくて追いつきやしない。それに人によっては浄化の方法に抵抗があるらしくてな」
イシュメル人とは公国に植民してきた流浪の民のことである。
彼らは故郷の砂漠化によって住む場所を失くし大陸中をさすらいながら移民先を探していたが、先代の王の好意により公都の南西を始めとした国内の各地に住むことを許されたという経緯がある。
その恩から入植以来、国の公共事業や魔導の研究に従事するなどして彼らはアルビオンに対して貢献してきた。
「善意でなんていい話だと思うけど、どんな方法なんだろう」
「さてな、俺も詳しくは知らん。だが問題なのは水源の件、イシュメル人の仕業だって騒ぐ連中がいるらしい」
「彼らにそんな事するメリットがあるとは思えないけど……」
「まあ、外から来た人間に対して神経質になるやつ自体は別段珍しくはない。だが、問題なのは議会がイシュメル商人の交易権を剥奪したことだ。噂に過ぎない与太話をまんまと信じたのか理由は分からんが、おかげで小麦の流通量も少なくなった。とばっちりだぜ」
ベンがため息を付いて頭を悩ませる。パン屋としては原材料の有無は死活問題なのだろう。しかし、そういう事情であるのならエルドもやや申し訳なくなってくる。
「ごめんおじさん、レオンが大量に買って……」
兄のレオンは公都に戻って以来、大量にパンを買い付けていた。
元々健啖家でもあったが何よりもベンのパンを愛し、滅多にない帰宅の際には大量にパンを買い込むというのが彼の習慣であった。
今回の休暇の際も帰って早々にパン屋に寄っていた。
「いやいや美味しそうに食ってくれるんだからパン職人としてはむしろ嬉しいよ。だけどあんなに買い込んで流石に飽きちまわないのかね?」
「おじさんのパンは種類が豊富だからね。味に飽きることは絶対にないよ。ただ食感がね……」
いくらアルビオン人の国民食だからといって、パンばかりとなればさすがに食感に飽きが来るというもの。
そのためエルドは惣菜のバリエーションを豊かにして工夫しているのだが今回のレオンの休暇は長い。
この食感を味わい続ければどうなるのだろうか。今後のことを想像するとやや憂鬱になる。
「お前さんも大変だねえ。そういや、エルドも夕飯の買い出しかい?」
「まあね。他にも用はあるけど、レオンに任せると多分ポテトフライ尽くしになっちゃうし」
「やれやれ聖騎士様は偏食が過ぎるな……でもそうだ、せっかく行商団が来るんだ。ライスなんか買ってくと良いんじゃないか?」
「ライス……?」
確かにパン食ばかりではライスですら恋しくなる可能性もある。だがエルドはあのパサパサとした無味乾燥な食感を苦手としていた。わざわざ買うかとなるとためらわれる。
「今この国で採れるライスを想像しただろう? 俺が言ってるのはそれとは違う、アルマーレ産のライスだ」
「アルマーレの? 帝国の占領政策で取引が制限されてるから、市場に出回ってるところなんか見たことないけど」
「どうやら先日からアルマーレのレジスタンスの活動が激しくなってな。それで方針転換なのか現地の商人や企業を優遇しようってことらしい。停戦協定の締結もあってか徐々に商売に関する制限が撤廃されていくらしい」
「うーん、レジスタンスへの協力をやめさせる代わりに見返りをってところかな。占領政策への協力になるのは複雑だけど、アルマーレの食材が食べられるのは良い知らせかもね。だけどライスか……」
「俺達がサラダとして食べるライスとはありゃ別モンだよ。もちっとしてみずみずしいんだ。ちょうどアルマーレ人が店を出してるんだが、そこでハンバーグと一緒に食べたライスは絶品だった。どうやらアルマーレ人にとってのライスは、俺らにとってのパンみたいな感覚らしいが、店主に勧められるままハンバーグと共にかきこんだ時の至福の瞬間ときたら……」
ベンは初めて味わった食感を反芻しているのかうっとりとした表情を浮かべている。
「おじさんがそこまで言うなら、少し興味が出てきたかも。昼はその店ってのもありかな。どこにあるの?」
「聖堂広場から市場に抜けるアーケードだよ。広場の側近くにあるからすぐ見つかると思うぞ」
そうして談笑していると馬車が足を止めた、急な揺れにベンはおっとと声を漏らす。
「着いたようだな。じゃ俺は早速市場に行ってくる。またパン買いに来てくれよな」
そう言うとベンはそそくさとアーケードの方へ走っていった。
エルドはそれを見送ると聖堂広場中央のパーシヴァル像の前へと移動する。
建国の騎士・パーシヴァルは海向こうのロンディニア王国の公爵であり、五百年前に入植者を連れてこのアルスターを根城にする海賊を駆逐し、アルビオン公国を建国した勇猛な騎士である。
公都での待ち合わせの定番といえばこの像の前であり、その武勇も相まって国民からの人気も高い歴史上の人物である。
エルドはいつもの定位置、パーシヴァル像の左斜めの向かいにあるベンチに座ると懐から本を取り出した。
「カイムのことだから今日も時間通りに来ないだろうなあ」
遅刻癖のある友人のことをぼやくと、エルドは本に挟んだ栞をそっと引き抜いた。
早朝の稽古を終え、朝食を平らげたかと思うとカウチに横になり、今の今までこの状態だ。仮にも英雄の名を冠し、教会から聖騎士の称号も贈られた人間とは思えないだらしのなさである。
(早く言わないとな……)
結局、騎士学校の件は伝えられず終いであった。
(よし)
エルドは意を決して、レオンに卒業の件を告げることに決めた。
「レオン、もうすぐ昼前だよ。起きなよ」
早速、レオンを起こそうと肩を揺すってみるが、起きる気配は一向にない。それどころかエルドの揺すりを疎ましく感じたのか、それから逃れようと背を向ける様に寝返りを打ってしまった。
「レオン!」
構わずさらに強く揺すってみる。しかし、今度はその手を強くはたかれた。
こっちは散々悩んでようやく意を決したというのに、その態度はなんだろう。
稽古で一本も取れず散々に叩きのめされたこともあってエルドは徐々に腹を立てた。
「…………」
脇腹を強くくすぐることにした。レオンはそこが敏感で、こうされると悶絶する。ここまですればさすがに目が覚めるだろうとエルドは容赦のない攻めを加える。
「んあっ!」
するとレオンは素っ頓狂な声をあげて物凄い勢いでのたうったかと思うとエルドの腹部を思い切り蹴飛ばした。
「な、何するんだよ!」
その暴挙に思わず憤るが、レオンは相変わらずいびきをかいている。彼の寝起きの悪さは知っていたがさすがにあんまりだろう、エルドはもう知らんと放っておくことにした。
一ヶ月後に巡礼の儀を控え、その準備としてエルドには共に旅立つ友人と、やるべきことがそれなりにある。いや、あったのだ……
友人にもまだ卒業の件は伝えていなかった。しかし、かといって用事をキャンセルするわけにも行かず、出かける支度をする。
そして書き置きに、昼食と戸締まりについての言伝とちょっぴりの恨み言を添えると玄関へと向かった。
さて、エルドが家の戸を開けるとパッと白い光が部屋に差し込んできた。そのあまりの眩しさに思わず目を瞑る。
冬が明け、街を覆う雪雲もすっかりと晴れたためか日差しは強く、石灰で塗られた家々の白壁に反射してまばゆく照っていた。
この街は付近で石灰岩が豊富に採掘されるため白い建物が数多く並んでおり、晴れの日の街並みはとても美しい。
街の西部にあるリキア山の白く壮麗な威容と相まって白亜の公都と形容されるほどだ。
エルドは心地よい光を全身に浴びながら深く呼吸をする。朝に比べると潮風も暖かで過ごしやすい。春の陽気を一通り堪能するとエルドは街を駆け出した。
白亜の壁に囲まれた緩やかな坂道を進み、二又に分かれた道の右側を通ると小さな広場に出た。
近所の子供達が集まってボール遊びをしている。エルドは彼らに軽く挨拶すると壁伝いの狭く急な階段を登っていった。
そこは街の中央と西の海岸を繋ぐ大通りだ。プランターやベンチ、小洒落た噴水の並ぶ公園が中央を貫いて、往きと帰りに分けられた道を港からの水産物を運ぶ馬車が行き交っている。
近くの停留所には丁度、中央へと向かう乗合馬車が停まっていた。御者に賃料を渡すと、エルドは車両後ろの螺旋階段から二階に上がり込んだ。
アルビオン公国最大の都市である公都アルスターにおいて乗合馬車は交通の要だ。隅の座椅子に腰掛けると、ちょうど出発の時間だったようでがたがたと馬車が走り出した。
「おや、エルドかい?」
さっそく誰かが声をかけてきた。馬車ではこの様に他人同士が談笑する光景は珍しくない。とはいえ今回話しかけてきた人物はエルドもよく知る者だった。
「ベンおじさん、奇遇だね。小麦の買い付け?」
早朝から焼き立てのパンの香りを漂わせていた近所のパン屋の主人だ。
「ああ。今日は月に一度の行商団が来る日だからな。それにしばらくは鉄道のお披露目に巡礼の儀とイベントも盛りだし」
「おじさんも出店をやるの?」
「ああ。イベントに合わせた新作も売り出すつもりだ。鉄道や姫殿下を象ったパンなんかきっと売れるぞ」
きらきらと目を輝かせながらベンは今後の展望を語る。ベンは昔からパン作りに情熱を燃やし、新作の研究に余念がない程であった。
とはいえ殿下の顔まで再現するのはどうなのだろうか、エルドは心の中で疑問を浮かべつつも愛想笑いを浮かべた。
「そういや聞いたか? 南西の水道の話」
「聞いたよ。水源が汚染されたって話だよね?」
「ああ。おかげで街の南西部じゃ、まともに水が飲めやしない。イシュメルの連中が好意で浄化してくれてるそうだが、如何せん汚染被害の規模が大きくて追いつきやしない。それに人によっては浄化の方法に抵抗があるらしくてな」
イシュメル人とは公国に植民してきた流浪の民のことである。
彼らは故郷の砂漠化によって住む場所を失くし大陸中をさすらいながら移民先を探していたが、先代の王の好意により公都の南西を始めとした国内の各地に住むことを許されたという経緯がある。
その恩から入植以来、国の公共事業や魔導の研究に従事するなどして彼らはアルビオンに対して貢献してきた。
「善意でなんていい話だと思うけど、どんな方法なんだろう」
「さてな、俺も詳しくは知らん。だが問題なのは水源の件、イシュメル人の仕業だって騒ぐ連中がいるらしい」
「彼らにそんな事するメリットがあるとは思えないけど……」
「まあ、外から来た人間に対して神経質になるやつ自体は別段珍しくはない。だが、問題なのは議会がイシュメル商人の交易権を剥奪したことだ。噂に過ぎない与太話をまんまと信じたのか理由は分からんが、おかげで小麦の流通量も少なくなった。とばっちりだぜ」
ベンがため息を付いて頭を悩ませる。パン屋としては原材料の有無は死活問題なのだろう。しかし、そういう事情であるのならエルドもやや申し訳なくなってくる。
「ごめんおじさん、レオンが大量に買って……」
兄のレオンは公都に戻って以来、大量にパンを買い付けていた。
元々健啖家でもあったが何よりもベンのパンを愛し、滅多にない帰宅の際には大量にパンを買い込むというのが彼の習慣であった。
今回の休暇の際も帰って早々にパン屋に寄っていた。
「いやいや美味しそうに食ってくれるんだからパン職人としてはむしろ嬉しいよ。だけどあんなに買い込んで流石に飽きちまわないのかね?」
「おじさんのパンは種類が豊富だからね。味に飽きることは絶対にないよ。ただ食感がね……」
いくらアルビオン人の国民食だからといって、パンばかりとなればさすがに食感に飽きが来るというもの。
そのためエルドは惣菜のバリエーションを豊かにして工夫しているのだが今回のレオンの休暇は長い。
この食感を味わい続ければどうなるのだろうか。今後のことを想像するとやや憂鬱になる。
「お前さんも大変だねえ。そういや、エルドも夕飯の買い出しかい?」
「まあね。他にも用はあるけど、レオンに任せると多分ポテトフライ尽くしになっちゃうし」
「やれやれ聖騎士様は偏食が過ぎるな……でもそうだ、せっかく行商団が来るんだ。ライスなんか買ってくと良いんじゃないか?」
「ライス……?」
確かにパン食ばかりではライスですら恋しくなる可能性もある。だがエルドはあのパサパサとした無味乾燥な食感を苦手としていた。わざわざ買うかとなるとためらわれる。
「今この国で採れるライスを想像しただろう? 俺が言ってるのはそれとは違う、アルマーレ産のライスだ」
「アルマーレの? 帝国の占領政策で取引が制限されてるから、市場に出回ってるところなんか見たことないけど」
「どうやら先日からアルマーレのレジスタンスの活動が激しくなってな。それで方針転換なのか現地の商人や企業を優遇しようってことらしい。停戦協定の締結もあってか徐々に商売に関する制限が撤廃されていくらしい」
「うーん、レジスタンスへの協力をやめさせる代わりに見返りをってところかな。占領政策への協力になるのは複雑だけど、アルマーレの食材が食べられるのは良い知らせかもね。だけどライスか……」
「俺達がサラダとして食べるライスとはありゃ別モンだよ。もちっとしてみずみずしいんだ。ちょうどアルマーレ人が店を出してるんだが、そこでハンバーグと一緒に食べたライスは絶品だった。どうやらアルマーレ人にとってのライスは、俺らにとってのパンみたいな感覚らしいが、店主に勧められるままハンバーグと共にかきこんだ時の至福の瞬間ときたら……」
ベンは初めて味わった食感を反芻しているのかうっとりとした表情を浮かべている。
「おじさんがそこまで言うなら、少し興味が出てきたかも。昼はその店ってのもありかな。どこにあるの?」
「聖堂広場から市場に抜けるアーケードだよ。広場の側近くにあるからすぐ見つかると思うぞ」
そうして談笑していると馬車が足を止めた、急な揺れにベンはおっとと声を漏らす。
「着いたようだな。じゃ俺は早速市場に行ってくる。またパン買いに来てくれよな」
そう言うとベンはそそくさとアーケードの方へ走っていった。
エルドはそれを見送ると聖堂広場中央のパーシヴァル像の前へと移動する。
建国の騎士・パーシヴァルは海向こうのロンディニア王国の公爵であり、五百年前に入植者を連れてこのアルスターを根城にする海賊を駆逐し、アルビオン公国を建国した勇猛な騎士である。
公都での待ち合わせの定番といえばこの像の前であり、その武勇も相まって国民からの人気も高い歴史上の人物である。
エルドはいつもの定位置、パーシヴァル像の左斜めの向かいにあるベンチに座ると懐から本を取り出した。
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