暗黒騎士と堕ちた戦乙女達 ~女神に見放されたので姫と公女たちに魔神の加護を授けて闇堕ちさせてみた~
皇女の閃撃
「もう……何なのかしら」
屋敷に乗り込んだアベル達の目に飛び込んできたのは、全身を殴打されて気絶した狼と、突然の襲撃に困惑するフローラであった。その腕には禍々しい手甲が嵌められていた。
「前から思ってたが、聖女様の割には得物が物騒だよな」
アベルはぼそりと思ったことを口にした。
「もう、失礼ね。刃の付いた武器よりもずっと良いのよ? 使い方次第では相手に苦痛を与えずに無力化できるんだから」
「そういうものかね」
アベルはふと、気絶した狼に目をやる。その様子を見ると、心なしか幸せそうな表情を浮かべているように見えた。
「だ、誰かたすけておくれぇえええええ」
その時、中年の女性の声がどこからか響いてきた。
「!! この声は二階か?」
アベル達は急いで屋敷の二階へと上がった。
*
「これは……」
二階の一角は使用人達の居住スペースようで、そこでは獣たちが徘徊して、使用人達に襲いかかっていた。
「させません!!」
その光景を目の当たりにした瞬間、ジークリンデが抜剣した。
鞘から剣が抜けるのと同時に紫電が迸り、ジークリンデの身を包んでいた騎士装束が黒衣へと変化した。
魔神の加護を発動させた瞬間である。
ジークリンデは地面を蹴ると、雷光がごとき速さで、回廊に跋扈する獣たちを瞬く間に斬り去って行く。
「グァアアアア」
一刀の元、斬り伏せられた獣達は断末魔の叫びをあげながら次々と、倒れていく。
そして、回廊奥の最後の一匹を仕留めると、襲われていた老婆を助け起こした。
「あ、ありがとうございます……あの魔獣達、突然私達を襲い始めて」
「騎士以外は見境無しってことか。厄介だな」
兵達は、魔獣が見知らぬ人間を襲うように訓練されていると言っていたが、どうやら使用人も例外ではなかったようだ。
「あの、ここ以外に使用人は?」
「ええ、まだ地下で働いてる者や、反対側の回廊にも使用人の私室が。特に地下は魔獣が保管されてたから――」
「きゃあああああああ」
今度は若い女性の声が響いた。
「これは奥の部屋かしら」
一行は声がした方へと向かうと、回廊奥の開け放たれた扉へと駆け込んだ。
そこでは、一匹の狼が少女に飛びかかり、その牙を剥き出しにしていた。
(間に合わない……!!)
ジークリンデが鞘に手を当て、紫電を迸らせたが、もはや彼女の速さをもってしても届かないほどに、獣は少女の眼前に迫っていた。
「も、もうだめ!!」
少女がそう叫んだとき、一方の風の矢が狼の眉間を貫いた。
「ガァッ……」
急所を貫かれた狼は、僅かなうめき声を漏らすと、矢に貫かれた衝撃でそのまま床へと転がり込んだ。
「この矢、シャーロットか」
「ええ、なんとか間に合ったみたいね」
開け放たれた窓からシャーロットが乗り込んできた。
彼女にはその《眼》を活かして、屋敷内と周囲の警戒に当たってもらっていたが、おかげで、使用人の少女は九死に一生を得た。
「まったく、屋敷に魔獣を放つなんて何を考えてるのかしら」
シャーロットは苦々しげに言った。仮にも彼女の母の生家である。思うところがあるのだろう。
「ええ、そうですね。屋敷の中にはかなりの使用人が取り残されているようですし、ここは手分けして対処に当たりましょう。シャル、秘薬の貯蔵庫はどちらに?」
「地下に少量備蓄があるはずだけど」
「では私とフローラは反対側の回廊に回り、その後は一階から三階までに逃げ遅れた者がいないか確認します。シャル達は地下の方を」
「そっち、人足りるかしら?」
担当フロアに対して、人数分けの比率が揃っていないように思えた。
「ええ、見たところ上階に上がった魔獣は少ないですし、もともと魔獣達は地下に保管されていたとのことです。ですから、そちらに人を割くべきかと」
「わかった。それじゃ、上は任せるわ」
四人は分担を決めると、それぞれの担当へと向かった。
屋敷に乗り込んだアベル達の目に飛び込んできたのは、全身を殴打されて気絶した狼と、突然の襲撃に困惑するフローラであった。その腕には禍々しい手甲が嵌められていた。
「前から思ってたが、聖女様の割には得物が物騒だよな」
アベルはぼそりと思ったことを口にした。
「もう、失礼ね。刃の付いた武器よりもずっと良いのよ? 使い方次第では相手に苦痛を与えずに無力化できるんだから」
「そういうものかね」
アベルはふと、気絶した狼に目をやる。その様子を見ると、心なしか幸せそうな表情を浮かべているように見えた。
「だ、誰かたすけておくれぇえええええ」
その時、中年の女性の声がどこからか響いてきた。
「!! この声は二階か?」
アベル達は急いで屋敷の二階へと上がった。
*
「これは……」
二階の一角は使用人達の居住スペースようで、そこでは獣たちが徘徊して、使用人達に襲いかかっていた。
「させません!!」
その光景を目の当たりにした瞬間、ジークリンデが抜剣した。
鞘から剣が抜けるのと同時に紫電が迸り、ジークリンデの身を包んでいた騎士装束が黒衣へと変化した。
魔神の加護を発動させた瞬間である。
ジークリンデは地面を蹴ると、雷光がごとき速さで、回廊に跋扈する獣たちを瞬く間に斬り去って行く。
「グァアアアア」
一刀の元、斬り伏せられた獣達は断末魔の叫びをあげながら次々と、倒れていく。
そして、回廊奥の最後の一匹を仕留めると、襲われていた老婆を助け起こした。
「あ、ありがとうございます……あの魔獣達、突然私達を襲い始めて」
「騎士以外は見境無しってことか。厄介だな」
兵達は、魔獣が見知らぬ人間を襲うように訓練されていると言っていたが、どうやら使用人も例外ではなかったようだ。
「あの、ここ以外に使用人は?」
「ええ、まだ地下で働いてる者や、反対側の回廊にも使用人の私室が。特に地下は魔獣が保管されてたから――」
「きゃあああああああ」
今度は若い女性の声が響いた。
「これは奥の部屋かしら」
一行は声がした方へと向かうと、回廊奥の開け放たれた扉へと駆け込んだ。
そこでは、一匹の狼が少女に飛びかかり、その牙を剥き出しにしていた。
(間に合わない……!!)
ジークリンデが鞘に手を当て、紫電を迸らせたが、もはや彼女の速さをもってしても届かないほどに、獣は少女の眼前に迫っていた。
「も、もうだめ!!」
少女がそう叫んだとき、一方の風の矢が狼の眉間を貫いた。
「ガァッ……」
急所を貫かれた狼は、僅かなうめき声を漏らすと、矢に貫かれた衝撃でそのまま床へと転がり込んだ。
「この矢、シャーロットか」
「ええ、なんとか間に合ったみたいね」
開け放たれた窓からシャーロットが乗り込んできた。
彼女にはその《眼》を活かして、屋敷内と周囲の警戒に当たってもらっていたが、おかげで、使用人の少女は九死に一生を得た。
「まったく、屋敷に魔獣を放つなんて何を考えてるのかしら」
シャーロットは苦々しげに言った。仮にも彼女の母の生家である。思うところがあるのだろう。
「ええ、そうですね。屋敷の中にはかなりの使用人が取り残されているようですし、ここは手分けして対処に当たりましょう。シャル、秘薬の貯蔵庫はどちらに?」
「地下に少量備蓄があるはずだけど」
「では私とフローラは反対側の回廊に回り、その後は一階から三階までに逃げ遅れた者がいないか確認します。シャル達は地下の方を」
「そっち、人足りるかしら?」
担当フロアに対して、人数分けの比率が揃っていないように思えた。
「ええ、見たところ上階に上がった魔獣は少ないですし、もともと魔獣達は地下に保管されていたとのことです。ですから、そちらに人を割くべきかと」
「わかった。それじゃ、上は任せるわ」
四人は分担を決めると、それぞれの担当へと向かった。
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