暗黒騎士と堕ちた戦乙女達 ~女神に見放されたので姫と公女たちに魔神の加護を授けて闇堕ちさせてみた~

水都 蓮

暗黒騎士と賢者

 アベルは、銀髪の少女アイリスと共に戦場を駆けていた。
 彼らの先にいるのは、宰相の軍に囲まれた兵達であった。皇帝が処刑されてもなお、一部の兵達は抵抗を続けていた。


「はっ、スキルが使えないくせに随分と手こずらせやがって。だが、ようやく追い詰めてやったぞ」
「くっ……守るべき主君に背いた、愚か者どもめ」
「お偉い親衛隊様にはわからねえよ。俺たちは皇帝や貴族どもに絞られるだけの存在だったんだ。許せるかよ」
「馬鹿な。宰相にどう唆されたのかは知らんが、あの方は――」
「うるせえ!!」


 宰相の兵がその頭に、斧を思い切り振り下ろした。
 当然、その一撃では絶命には至らず、その苦しみのあまり親衛隊が悲痛な叫びをあげた。


「アイリス!!」
「うん」


 その一撃に続いて、他の兵達も次々と武器を振り上げた。
 しかし、それと同時に彼らの足下の重力が一気に増した。


「うっ……何だ?」


 そのあまりの加重に兵達は立っていられず、床に吸い付くように仰向けに倒れ込んだ。
 そして、その隙を見逃さず、アベルは剣を振って蒼炎を解き放った。


「ぎゃあああああ」


 二人の連携に為す術もなく、宰相の兵達は焼死した。


「無事か?」


 アベルが駆け寄って、声をかけた。


「ああ。君たちは?」
「学生です。それとこっちが……」
「おお《大賢者》、あなたがいれば何とかなります!」


 アイリスの顔を見て、


「うん。何とかしてみる……けど……」


 相手は聖教国の僧兵を動員するほど強大な相手だ。個々人がどれほど強力でもいずれ限界はやってくる。


「一つ聞かせてください。あなた方は、スキルが使えますか?」


 まず確認しなくてはいけないのはその一点だ。女神の加護が奪われたのは皇女達だけなのか、それを知らなくてはいけない。


「ああ、その通りだ。皇帝陛下を守ろうとし、彼らに抵抗した者達は女神の加護を奪われてしまった。十二騎将達も同様だ。そして、為す術もなくその半数が討たれてしまった……」


 帝国が誇る十二人の勇将達、彼らがいる限り帝国は不滅であると謳われたほどであったが、彼らも例外ではなかったようだ。


「そんな……まさかヘルムート将軍も?」


 アベルが口にしたのは彼の父の名だ。《帝都の守護者》の名を冠する、帝国最高の騎士である。


「あの方に限ってはと信じたいが、中将閣下は消息を絶たれ……」
「嘘だ……」


 女神の加護を失い、《底辺騎士》となった自分を、それでも受け入れ大切に育ててくれた父であった。しかし、その消息がわからなくなったと聞いて、アベルは目の前が真っ暗になった。


「アベル……? 大丈夫?」


 アイリスが心配そうに顔をのぞき込む。


「いや、だ、大丈夫だ。それよりも、今は抵抗を続ける兵達を助け出さないと。きっと父さんなら、そうするはずだ」


 たとえ《底辺騎士》と蔑まれても、騎士の心まで失ったつもりはない。
 アベルは生き残った親衛隊員を連れて、他の生存者達を探すこととした。

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