遠き山に日が落ちて
遠き山に日が落ちて
幼少期には
長い夏休みよりも
2週間ほどしかない
冬休みが活発になって居た
暑さ嫌いなのも否めない
寒さには強い自信もある
これは学校で毎朝
乾布摩擦によるものでもない
当時は喘息もちだった
生まれ育った場所は
周りには自然が乏しく
そんなには歩き回れなかったが
転居してからは
近くに川もあり周りは田んぼだらけ
小高い山もあり少し歩けば
大きな池のある公園も釣り堀もあった
其処では数年しか住まなかったが
この環境は小僧だった小生には
とても快適で過ごし易かった
夏は台風と豪雨で
川が氾濫寸前だったくらいの
記憶しかない
あとは夏祭りに出掛けた事ぐらいだ
冬休みに
近場では歩き回ったり走り回ったり
少し遠くにも自転車で行き
暗くなるまで帰らなかった
そのため事故も何度か遭遇したが
無事に不自由なく健在だ
年末年始と言うイベントがあるためか
家族全員でコタツを囲むのも楽しい
そのまま何度も寝てしまった
そんな事もあったなあ家族全員で
お正月の遊びで昔からの定番
凧揚げ羽根つきコマ回しは
ひと通り制覇して満足して居た
他の遊びも探しに行く
田んぼの畦道や
田んぼの真ん中を歩き回る
日が暮れそうな中で
山道を登り
町を一望できる所で
風の冷たい中
西陽に真っ赤に照らされて
仁王立ちしてボーッとするのも
好きだった
山に行ったら必ずお土産を
拝借してくる
どんぐりや木の実
落ちていた木の枝や木の葉
木も好きで大工の真似事もした
近くに建築屋さんの倉庫があり
営業して居ない時に入り込んで
一人で積み木遊び
いくつになっても木は和める
池の公園も周りはハイキングコースに今はなって居るがそうなる前のはるか昔
まだ山道や畦道だった頃は石もごろついて
枯れ枝や腐葉土化した葉っぱを踏み
ザッザッパキパキッと音を立てて
歩いた
その足の裏の感触は例えるモノが無い
人間にある五感の半分を刺激し養ってくれる大事な時間と
当時も何気に思ったくらいだ
その上で転んでも痛く無い
自然の匂いが近くなる
なんとも言えない瞬間
やがて山道を下り
車道の方へ出る
そこから暫く商店街を目指して
歩くと交差点に差し掛かる
角のおもちゃ屋さんを横目に
少し歩くと大きめの神社が現れる
そこは夏には大祭
冬はこれから初詣の準備
道を挟んで南隣には市立図書館
神社の奥はまた山道が続く
神社裏の山道を進み
頂上付近には何かを祀ってある
鳥居と小屋
その隣には小規模の遊び場がある
遊具の滑り台を登ると北側に
そこからさっきの池の公園が望める
反対の南側はさっきの図書館の屋根と
古い建物の市役所
市役所の隣は市民会館のホール
此処は数年前に姉に手を引かれ
映画を観に来た
市内で唯一映画が観られる施設
此処から北側のさっきの交差点を
境にして商店街が交わる
歩いて来た車道の反対側は
茶農家とお茶の販売店が点々とする
交差点より西側と東側は
昔からの大祭での四年に一度
活気付く
姉も小学中学と神輿を担いで参加して居たモノクロ写真が残ってる
真冬で薄暗くなるのも早く
そろそろ帰る時間
山の上の滑り台のてっぺんから
夕陽が沈んでいくのを見届ける
それでも飽き足らずに
また池の公園へ走って
見届けようとする
生まれた町
数年しか住まなかったが
此処の風景は記憶の写真として
今も残って居る
今も違う町でも
夕暮れ時には思い出す
自分が歩いて居た山へ
陽が沈む写真を
記憶の中から引っ張り出すと
今の自分を洗濯してくれる
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