勿忘草
勿忘草
遠く遠い遥か昔の記憶が
目の前に突然現れる
その日はいきなり真っ暗になり
嵐に拐われたぼくの目の前から
暗闇の中を独りで彷徨い
手探りで歩いて行く
やがて闇から抜け出し
一つの光が見えてくる
光の方向へ進んでいくと
嵐に拐われた貴女が居る
見つけた時には安堵したが
その表情は前とは違い
こちらを見る眼は別人で
その面影に懐かしさしか残らない
ぼくはずっと話しかけるけど
聴こえていないし返事も無い
お互いが夢の中に居るような
お互いが金縛りにかかって居るよに
長い沈黙長い苦しみ
嵐が貴女に何をしたのか
本音は決して言わない貴女は
素直な眼でぼくを見る
ぼくは見られて黙り込む
何も変わって無いぼくを
嵐の前を懐かしく思う
突然の事だった
もう以前の貴女には逢えないのか?
まだぼくを忘れて居ないのか??
貴女の口からこう話す
タイムカプセルをまた此処に
開けに来ようよ1年後に
ぼくは軽く頷いて
貴女は振り返って去ろうとする
道路の脇には勿忘草
慌ててぼくは手にとって
貴女に渡そうと追いかける
手から手へ勿忘草を握りしめ
その手はとても冷たくて
過去の貴女を思い出す
ぼくの手で温めて居た冷たい手
貴女は直ぐに温まった
勿忘草に想いを込めて
貴女の背中をずっと見守る
1年後にも勿忘草を
握りしめて貴女を待つ
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