ノラ猫とやさしいお母さんライオン

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ノラ猫とやさしいお母さんライオン







とある草原の真ん中に少し茂った森がありました、
西には綺麗な湖があります


湖の近くには、小高い丘があります


ノラ猫のおいらはいつものようにフラフラと湖近くを散歩していました。


すると、湖のほとりでメスライオンが一人ぼっちで泣いて居ました、
肩には心配そうな青い小鳥も停まっています。


"どうしたの?
こんなところで、危ないよ??"
メスライオンに話しかけました


湖には毒を持つ動植物ばかりですが、
ノラ猫のおいらには御構い無しで散歩のコースになっています。


メスライオンは泣きながら言います
"お父さんライオンが帰ってこない、
寂ししいからここへ来たの"


メスライオンは体を震わせて言いました


どうやら、メスライオンはお母さんライオンで、
ごく普通のライオン一家で、
近くの小高い丘に住んでいるようです。


少し話しをしました。


お母さんライオンはとても賢く、頑張り屋さんで、子育ても一生懸命しながら毎日を過ごしていましたが、
お父さんライオンが、いつもの狩りから帰る時間には帰って来なくて、心配で寂しくて泣いて居たようです


"そうなんだ、、
狩りの場所が少し遠くなったのかな?
帰りが遅れてるだけだよきっと、
大丈夫、大丈夫!"


おいらはお母さんライオンをなだめるように言います。


"じゃーお父さんライオンが帰るまで、こうして泣いてるより遊んで過ごした方が楽しいからー遊ぼうよ!"


お母さんライオンは、気を取り直したのか、明るい声で
"うん!ありがとうー"
と返事をしました。


普段は足を踏み入れない森の隅や、
少し危ないけど湖を2人で眺めて過ごしました


2人はそれぞれ、普段とはまるで違うとても楽しい時間を過ごして居ました、、
どれくらい時間が経ったのか、
やがて陽が暮れそうな時間になり、


"そろそろ帰らなきゃ、
今日はありがとう!"


数時間前まで泣いて居たお母さんライオンとは思えないほど元気な声で言います、


そしてお別れをしました。


"バイバーイ!"
おいらも明るく返事をしました、
でもまた一人ぼっちになりました。


1人になったおいらは、
しばらく森の周りをウロウロする事にしました、、


どれくらい歩いたのか、
どのくらい時間が経ったのかわからないくらい歩き続けました。


すると、青い小鳥が近づいて来て騒ぎ立てています


"何だよーうるさいなー"
おいらは追い払おうとしますが、青い小鳥はこう言います、


"おい!憶えていないのか?お母さんライオンがまた湖に来てるんだよ!早く行ってやれよ!"


あの時お母さんライオンの肩に乗ってた小鳥でした


"わかったよ、ありがとう!"
おいらは慌てて湖に向かいます。


"こっちだよー早く早く!"
青い小鳥が慌てて案内してくれます


何時間か、何日が過ぎたかわからないけど腹ペコで何も食べて居ません、
でも、あのお母さんライオンが心配で気になって居たので、無我夢中で走って向かいます。


湖のほとりで、横たわってるお母さんライオンを見つけます


"大丈夫??どうしたのさ?!"
驚いたおいらは話しかけます。


前に見た時より痩せて居て、泣き崩れた後のように見えました


お母さんライオンは、疲れた様子でこう言います、
"もう家には帰りたくない、、"と。


月夜の湖はとても綺麗な反面、
とても寒く感じます
"こんな所じゃ風邪引いちゃうよ、
少し温まろう、落ち着いてからまた話しを聞くよ。"


体の大きさは比べ物にならないくらいの大きさで、お母さんライオンにとっておいらはとても小さいけれど風邪を引かないように温めようと必死に抱きつきました。


おいらはみなしごのノラ猫なので、お母さん猫の体温は知りません、
"きっとこんな、やさしい温かさなんだろうなー"と、思いました


しばらくして、お母さんライオンは小声で言います
"1人にしないで、どこへも行かないで、、"


おいらは驚いたけど、直ぐにこう言います
"大丈夫、ずっとここに居るよ。"


少ししてお母さんライオンの大粒の涙を、おいらの耳元に冷たく流れていたのを感じました


2人は、そのまま眠ってしまいました。


あくる日、夜明けに寒くて目が覚めるとお母さんライオンの姿がありませんでした


青い小鳥がまだ居たので聞いてみると、
"夜明け前に家に帰ったよ!
また来てもいい?って言ってたよ。
小鳥のおいらが伝言しておくから、また言いに来るよ!"


そうかー、帰っちゃったんだ
おいらは寂しくなりました、
だけど無事に家に帰ったんだ、
また来るのか!そう思うと元気が出た気がしました。


お母さんライオンのことが心配なのと、また会える嬉しさで複雑な気持ちでした


青い小鳥が、
"じゃーまたねー!"
と帰って行きました


複雑な気持ちなので、しばらくこの湖の辺りをウロウロして住めそうな場所を探すことにしました。


住み始めて数日後、数週間後、、
青い小鳥は来ませんでした


ライオン一家の住んで居る所は、
何となくわかっています。


だけど、こちらはノラ猫。
近づけばライオン一家や他の天敵動物に襲われてしまいます


森の木々も色づきはじめて、だいたい一年くらい過ぎたようです。


そろそろ他に住むところを探そうかな?と起き出したある日、騒がしく懐かしい鳴き声が近づいて来ます、青い小鳥です


"久しぶりー!大変だよーノラ、
お母さんライオンが病気なんだ!"


青い小鳥は慌てて湖にそのまま落ちてしまいます。


"やあ!どうしたのさっ??
お母さんライオンに何があったのー?!"
青い小鳥を湖から助け出し、
おいらも慌てて問いかけます。


"お母さんライオン、頑張り過ぎて謎の熱病で数週間うなされてるんだよ"


おいらは驚いて、
"ライオン一家の家に案内して!"
と言って、青い小鳥を追いかけます


數十分ほど走ります、
周りの景色は憶えて居ないくらいに
走り続けます。


ライオン一家の住む場所は、他のライオンと共存できる動物たちの村の中にあります


よそ者でノラ猫のおいらなど直ぐに襲われて餌にされてしまう所だけど、


そんな事は関係ありません。


天敵動物に見つかって、
追いかけられながらもやっとの思いでお母さんライオンの住むところへ着きました。


"お母さんライオン!大丈夫かっ?!"


あいにく他のライオン家族は留守のようで、
お母さんライオンは床に寝ていました。


"湖から解熱の実を持って来たから、
これ飲んで!"


湖の周りに咲いてる解熱の花の実をお湯で煎じて飲ませます


お母さんライオンはまだうなされています。


数分経ち、お母さんライオンは目が覚めました


"ノラ猫くん、、
どうしてここへ?!"
目が覚めました、やっとの思いで口を開きおいらに話しかけます。


"まだしばらくは、この実を何度か煎じて飲んでゆっくりしないとね?"


おいらがそう言うと、涙がゆっくり流れて小声で、
"ありがとう、、"
と言って、そのまま寝てしまいました。


"そろそろ家族が帰って来るよ!
早くしないと食べられちゃうから、
いい場所へ案内するよー"


青い小鳥は言いました。


追われてるように、そそくさとおいらは青い小鳥の後について行きます


"ここなら安全だよ!"
お母さんライオンの場所から、
少し離れた大きな古い切り株でした。


"たまにカラスに追われるとここに隠れるんだ、使ってよ!"


おいらは新しい場所で、お母さんライオンの様子を伺いながらそこでしばらく過ごす事にしました


疲れていたのかだいぶよく寝られて、起きようと足を踏ん張っても力が入らず重苦しく痛い感じです


足元を見ると、青緑に大きく腫れ上がっていました、
湖で解熱の実を採ってる時、この植物に着いていた毒グモに刺されたようです。


助けを呼ぼうとしても、周りには天敵動物だらけで動けません


だんだんと意識が遠くなります。


しばらくして、
青い小鳥の声がかすかに聞こえ来ます
"やあノラ!お母さんライオン治ったよー、、どうしたのノラ?!"


そう聞こえると、そのまま意識が無くなるのがわかります
かすかな意識の中でお母さんライオンの声とやさしい温もりを感じます。


青い小鳥とお母さんライオンは悲しそうです、
お母さんライオンは冷たいおいらを抱えて泣いています。


お母さんライオンの病気が治り、
天国へは見とられながらだから、
もう1人じゃないね!


これからはお母さんライオンと一家を空から温かく見守れる、、


お母さんライオンは、おいらと出会って少しの時間だったけど救われたんだから、
これがおいらの役目だったんだ、
そう考えると今まで生きてとても幸せな気持ちになりました
“ありがとう!お母さんライオンと青い小鳥、、”


と、思いながら静かに息を引き取りました、、


解熱の実、
実は、身代りの花の実で、お母さんライオンに煎じたのは赤い実、ノラ猫が煎じたのは青い実。


青い実を飲んだ者は赤い実を飲んだ者の身代りになる不思議な実なのでした


みなしごのノラ猫は、産まれての難病でお母さんがこの実を同じように飲みノラの身代りになって亡くなっていました
また、このノラもお母さんと同じ事をしたのでした


お母さんライオンが大好きなノラだったから。






おわり





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