流氷の月
流氷の月
無数の様々な白い塊が
ゆらゆらと揺れている。
とても広い闇の中を
ゆっくりと押し競饅頭して
上から下へ動いてる。
暗くて深い底にはまあるい月が
流氷に透けて輪を描き光る。
闇の底の丸い月
表面を満遍なく照らしてる。
時折、氷の切れ間から
クリオネがキラキラと
浮遊して居る。
たったひとつのこの月が
端から端まで流氷を光らせる。
厚くても薄くても
流氷には負けないで
ここに在るぞと光らせる。
月も動いて上に向かうと
やがて東雲が朱に染まる頃、
一晩中寝そべって
本を読んで居たわたしは、
セーターに付いた芝を払い
朝焼けを背に家路を急いだ…
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