詩集 - ①
詩集 - ①
『算数』
国会中継をラジオで聴いた。
幼い頃の算数を思い出した。
1+1= 2
ラジオの国会中継は違っていた…
1+1= ウソ
そんな詐欺師の声がした…
『上京』
田舎から上京して秋葉原に居る。
歩道ではティッシュ配りの女の子。
ティッシュを受け取り、
そのお返しにポケットのあめ玉をあげた。
数秒黙って…それから笑顔で喜んで居た。
東京で見た初めての人の笑顔だった…
『格子越しの月』
となりの空き地に家が建った。
風向きが変わった。
月も直ぐに見えなくなった。
建った家に火を点けた。
月も風も元に戻った。
住む場所が暫く変わった。
格子越しから見える月が綺麗だった…
『平凡な日』
コンビニにて。
買い物してレジへ並ぼうと、
他の人と鉢合せ。
あ、どうぞどうぞ…
いえ、お先にどうぞ。
いえいえどうぞどうぞ…
あ、そうですか?
すいません…それでは。
先を譲るやり取りの時間と、
レジを待つ時間が比例した。
考え事をしたくてボーッとしたかった。
時間の使い方は上手い方ではない。
よくある平凡な日の出来事…
『風の海』
目の前には水の無い海があった。
いつからかわからない。
ここへ来る事が使命の様に。
またここへ来た。
いつからかわからない。
次第に水が増していく。
風しか吹かなかった海だった。
普通の海に戻った時。
もう風の海へは行かなくなった。
涙で元の海に戻ったから…
『黒い雲』
誰にも呼ばれたわけじゃない。
何となく訪れた場所。
不思議そうな顔をした君が居た。
ここは懐かしくて初めての場所。
君の顔も初めてだけど懐かしい。
そう思うぼくを見て笑う君。
不思議な顔はぼくの方だった。
懐かしくて楽しいから。
君も居るから楽しいし。
初めての所は覚えていたから。
雲が流れる道と消えてゆく場所。
木の葉が揺れる音。
陽の光が海に反射する場所。
眩しさから逃げるための物陰。
信号待ちの秒間。
古い商店街の店の名前。
小さな駅にある忘れられた石像。
風向きが変わる境目の時間。
その坂を下りると広がる田圃の地。
よく混み合う松林を抜ける道。
いつも何か植わって居る畑。
思い返す風景の空にはいつも黒い雲。
でも、雨にはならない。
雨が降ったのは君の顔。
ぼくが君の地を懐かしんだから。
一人ぼっちにさせてしまったから。
そして今は一人になった。
あれから、
懐かしい場所へは行かなくなった…
コメント