それでは問題、で・す・が!

しーとみ@映画ディレッタント

エピローグ

最終問題 それでは問題、で・す・が!

聖城先輩が、夏の試合を機に引退をした。
優勝という輝かしい記録を残し、クイズ女王の栄冠を勝ち取った。
写真に写る、全ての欲を捨て去ったような笑顔は、あのストイックな先輩からはとても考えられない。

あれ以来、聖城先輩は部室に来ることも、嘉穂さんの勧誘にも来なくなった。
自分の中で、納得ができたのだろう。
現在、先輩は受験勉強にシフトして、クイズはしばらくお預けの生活を送っているらしい。



僕たちはと言うと……。
「はい湊選手、不正解! 『岩倉使節団』なんて名前のアイドルユニットなんていねーよ!」
相変わらず、湊のボケに悩まされ、
「おい、そこ。メモ取ろうとするな。マジでいないからなそんなアイドルユニット……」
のんの天然さに呆然となり、
「やなせ姉、誰も見てないからって、僕と手を繋ごうとしないで!」
やなせ姉のセクハラに頭を抱えている。

「はい。津田選手、正解です」
嘉穂さんだけが癒やしだ。

「以上で、今回のクイズ番組研究会、終了です! では、次回は夏休みの後にお会いしましょう!」
僕はカメラの前に手を振って、挨拶を終える。
「お疲れ様でした。皆さん」

「疲れたのだー」
のんが背伸びをする。

「あっという間だったわね、一学期」
しみじみとしながら、やなせ姉が台本を片づけた。

「濃厚で慌ただしかったよねぇ」
湊が首を回す。

「それだけ楽しかったんですよ」
笑顔で嘉穂さんが机の片付けを手伝う。
嘉穂さんが動き出すと同時に、他の女性陣もてきぱきと片づけを手伝い始めた。

「どうする、夏休み、また集まって何かしようか?」

「また野外ロケしたいです!」
嘉穂さんが手を挙げて元気よく答えた。
「あれ、楽しかったね。嘉穂たんが一番ハイテンションだったし」
「い、いえいえ、あ、あれは、その……」
「デートが潰されたから、ヤケッパチだったのかい?」
「いやいやいや、デートだなんてそんな!」

そうだ。いつまで誤解しているのやら。

「嘉穂よ、素直になるんだ」
「はう!?」
のんの爆弾発言に、嘉穂さんが固まった。

「お腹が空いたの、ガマンしてたんだろ?」

「え、ええ。まあ……」
事情が分かってないなりに、のんがアドバイスを送る。
嘉穂さんが苦笑いを浮かべた。

「じゃあさ、また特番やろう。この間の公園みたいにさ」
「いいわね。またビーチに遊びに来てね」
湊が提案すると、やなせ姉がすぐに乗ってきた。
「是非やりたいです!」
「オイラもやりたいぞー」
嘉穂さん、のんがワイワイと喜ぶ。
「それで湊、何を企んでるんだ?」
「水着インタビュー」
「またそれかよ!」
僕のピコピコハンマーが、湊のデコにクリーンヒットした。
嘉穂さんが爆笑する。相変わらず嘉穂さんのゲラ癖は治らないらしい。
「それで、ウチが考えたカップルクイズだけど」

そういえば、文化祭で出す予定だったな。
家族やカップル関係の二人に関連する問題を出して、答えが一致するかで両者の絆を確かめ合う企画だったはずだ。

「二人も出るんだよね?」
「出るか!」

そういう関係じゃないってば! 何度言わせるんだ。

「え、わたしはいいですよ?」
「何を言ってんの、嘉穂さん!?」
特に嫌そうな顔なんて見せずに、嘉穂さんは微笑む。

嘉穂さんの発言の真意は、僕には当分わからないだろう。

(完)

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