さいわいなことり

しーとみ@映画ディレッタント

一日目 はじめての帰宅難民


毎朝六時勤務のオレは、二時には帰れる。

だが、この日は違った。

台風21号が、襲来。

オレと、帰り道が同じの同僚は、職場待機を余儀なくされた。
一時間後、ようやく風雨が弱まった。
オレと同僚は、駅へ向かうことに。

だが、電車が止まっていた。

この間の地震でも速攻で復旧し、日本最強と言われた鉄道が、だ。
(リアル割れ防止のため、詳しい言及は避ける。「ああ、あそこやね」と思っても、お察しでお願いします)

中華料理屋で適当に時間を潰した後でも、まったく音沙汰なし。

「これはアカン」と、同僚が業を煮やした。
タクシーもバスも、麻痺している。

歩こう、そう決断した我々は、徒歩帰宅を選択。

片道五六分の道を、ひたすら突き進む。

道中、銀杏の木が土ごと持って行かれ、根元から車道へ倒れていた。通行止めの道も、一つや二つではない。

想像以上の被害に、絶句。
ネガティブな気持ちにならないよう、雑談で気を紛らわせながら歩く。
知らなかった抜け道、電車通勤では気づかなかった店などを発見し、多少テンションが上がる。

ギンナンに道を阻まれ、道も所々間違える。
それでも、五〇分以上かけて、ようやく自転車置き場に到着。
同僚に別れを告げ、自転車にまたがった。

倒木が、オレの道を塞ぐ。
回り道をして、別の道から帰宅する。

明日は休みだ。しっかり休んで次の仕事に備えよう。

だが、そんなオレの前向きな気持ちを、自宅は簡単に踏みにじった。

停電である。

しかも、オレの住む団地だけが。

周辺の団地は灯りがついている。
だが、オレの団地は新築。何もかも電子制御。
よって、変電所がトラブルに見舞われると、ライフラインがストップする。
オレの家はまだいい。ガスコンロがあるから。
だが、IHとかだったら大変だったろう。

Wi-Fiは死亡。有線もダメ。頼りのネットはLTEのみ。
カクヨムの更新も、近況報告も、なにもできへんやんけ。
このときほど、カクヨムを自動更新しておいて正解だと思ったことはない。

仕方なく、早めの夕飯をとって、八時に寝る。

就寝前、もう一度電車の運行状況を確認。

まだ、動いていなかった。
オレたちは、正しかったのだ。

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