ましろ・ストリート

しーとみ@映画ディレッタント

ましろ、『気』のトレーニングを開始する

トーナメントが開始されて数日が経過。
幾人もの挑戦者が、トーナメントを勝ち進んでいる。

龍子も、次の対戦を今か今かと待っている様子だ。トレーニングにも熱が入っている。

「それは、『砕雲掌』じゃな」
道場で蒼月ワコに事情を説明すると、そう教えてくれた。

「そこに立ってみい」と言いながら、ワコがましろをリング中央に立たせる。
ましろの目の前で、ワコが腰を落とす。
「いくぞい」
トン、と軽く腹に掌打を打ち込まれた。

それだけで、ましろの身体が後ろへフワリと跳ぶ。

長谷川茜にやられたときとは威力がまるで違う。が、原理は同じだと身体が感じ取った。

「合気道みたいなモノですか?」
立ちながら、ましろが尋ねる。
「厳密に言えば、古武術じゃな」

蒼月流は、『気』を練り上げて、相手に打ち込む技を開発している。
体内のエネルギーである『気』を練り込むことで、肉体の強化や体調の維持、そして常人を超えた技を会得できるという。

実に、現実離れした技術であるが、実在すると言われると、信じるしかない。

「龍子は会得できたんですか?」
「あやつの跳躍力は、気の力をほんの少しコントロールしておるのじゃ。が、相手に当てる術は、本来ならば何十年もの修行が必要なのじゃ」

それが砕雲掌であると。

「けど、茜の父親は、短期間でそれを会得しちまったんだ」
ベンチプレスをしていた龍子が、横から口を出してきた。

ならば、娘である茜が技を引き継いでいる可能性が高い。

「茜も、父親が早くに病死しておらなければ、ええ人格者となっておったろうに。母親があれでなければのう……」

茜の母親とは、いったい?

「龍子、仕事が入ったわよ」
大永マキが、手帳を片手にジムへ入ってきた。

そんな龍子に、なんと格闘アイドルの仕事が舞い込んできた。
スポーツ用品を紹介する、雑誌のグラビア撮影だ。販売会社から指定された水着を着て行うそうである。

「あたしがグラビアだぁ?」
「贅沢言わないの。格闘技を世間に広めるチャンスなのよ。ただでさえ、マニアにしか受けないジャンルなのに」
そう言われると、さすがの龍子も折れざるを得なかった。

その後、ワコのトレーニングは、気を練り込む術をメインに組み込むことに。

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