バーチャル美少年受肉異世界転生ゾンビヤクザおじさんとか設定盛り過ぎだろぉー!

しーとみ@映画ディレッタント

腐女シスター、爆誕

「オレが居候している先の坊ちゃまなんだ」

セェレは、オレとカミュを交互に見比べた。
「はじめまして、セェレ・ギルモアです。トウタスとは子どもの頃から一緒で」

「聞いたよ。村を焼かれて逃げ延びた先がウチの屋敷でね。雑用係が欲しかったので雇ったんだ。腕っ節も強いので、冒険者の手続きもさせたんだ」

カミュが、オレの肩に手を置く。

おふうっ、と、急にセェレが鼻を押さえだした。

「どうした、セェレ」

見ると、彼女の指の間から鮮血が。出所は鼻孔であった。

「うわうわうわっ、マジで平気か、セェレ?」

「大丈夫、興奮しただけで」

「興奮した?」

何か、セェレをハイにさせる作用があっただろうか。

「笑わないで聞いてくれる?」
「お前のことだ。別に嫌ったりしねえよ」

オレが言うと、セェレは「ありがとう」と、事情を説明してくれた。

「私、男の子同士がくっついている所を見ると、変な妄想しちゃうの」

おお、それは、確か聞いたことがある。
たいてい姐さん絡みだが。
女性の中で、そういう趣向を好む層はすくなから存在するとか、なんとか。

前もって予備知識と理解があってよかった。それがなければ、きっと絶交していただろう。

「それだったら、フェロドニア騎士団にいちゃ、大変なんじゃねえのか?」

「全然。ヤオイとハッテンは需要が違うから」
セェレが真顔で返してきた。セェレは「せっかく美少年の園って聞いて加入したのに。詐欺だよ」とブツブツ文句を言っている。
相当お疲れのご様子だな。

「いつからは分からないんだけど、どうもその兆候があるみたいで。ごめんなさい」
「悪気はないんだろ? 気にするなよ。妄想してるだけで、実害はないんだし」
「もちろん! むしろ見ているだけで幸せというか」

セェレのこの先は心配だが、本人が楽しそうで何よりだ。

「それじゃあ、オレらは行くからよ」
「うん。気をつけてね。それと、クルースニクのカミュ様」

「カミュでいいよ。どうしたの、マドモアゼル」

一瞬だけ、照れた笑いを見せたが、セェレは急に真剣な顔に。

「奴隷商人ですが、くれぐれもお気を付けて。子どもを食べるお化けがいるそうなので」

「心得た。情報ありがとう」
「いざとなったら、私も呼んでください。及ばずながら、武術の心得もありますので」

手を腰に回し、セェレは得物を披露した。
モーニングスターである。
信仰系の職種は刃物を扱えない。
そのため、どうしても殴打系の武器になる。
それにしても、並の鉄球より大きい。
スイカほどのサイズがある。

「心強いね。よろしく」
「では、私はパトロールへ戻りますね」

ジャラジャラ、とモーニングスターをしまって、セェレは巡回へ。

「いい子だね。ボクがクルースニク、ヴァンパイアのハーフだと言ったのに、普通に接してくれた」
「オレがいたからだろうけどな。それでも、あいつは人を見る目はあるから、きっと気に入ったと思うぜ」

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