転移先がゴミ屋敷だったので、掃除スキル最強の俺がキレイにする! 

しーとみ@映画ディレッタント

ダストバスターズ!

「だから、しばらく地球に住むことになったから、よろしくね」
はみかみながら、パイロンが握手を求めてきた。


「えっとね、クヌギちゃんも一年生担当だから」

「クヌギもか。褐色系女子高生は目立つかも知れないな」

「違うよーっ。一年生の『担任』で入ったんだってば」

ロリババア本領発揮か! そういえば高齢者だったな、あいつ。

「と、いうわけで、よろしくね」

「お、おう」

苦笑いを浮かべて、パイロンと握手を交わす。

「あとねー。わたし、地球に住むことになったよ。これでダストバスターズは、地球で運営することになったから」

「なん、だと?」

今、こいつは何と言った?
どうやら、パイロンは本気らしい。
そういえば、こいつ起業していたんだっけ。

「事務所はどこだよ? いつも使ってるって言う廃工場か?」

「ううん。旧校舎」
パイロンは、窓の外に見える木造の建物を指差す。

「あそこを!?」

「買い取った」

「本気か? そんな金があるなら修繕費に回せば……そうか。そういうことか」

勘当は建前だな。

実際は俺に会いに来てくれたのか。

俺に会社を興させるために。いつまでもビビって煮え切らない俺のために、パイロンは一肌脱いでくれたのだろう。

まったく、つくづく自分の情けなさが嫌になる。

こいつの大胆さを見習わないと。

「ライバルが多いぞ」

「でも、爽慈郎はここに一人だけだよ」

俺の胸が跳ね上がる。

「社長の爽慈郎さえいれば、何の問題もないよ」

え……今、なんて言った?

「俺の名義で経営するつもりか?」

「そうだよ。だってわたし、地球にまだ戸籍ないもん」

俺は、頬を引きつらせる。

「じゃ、じゃあ、お前の役職は? 社長秘書か?」

「ううん。それはマーゴットのポジションだから」

「じゃあ、チーフ清掃員?」

「そっちはクヌギちゃん」

「という事は、お前は何をするんだ?」



「何って、社長夫人じゃん」



段階すっ飛ばしすぎだろ!

「そうそう。早速仕事あるよ」

「どこを掃除するんだ?」

パイロンが、依頼先の間取りを見せてくれた。相当大きな屋敷のようだが。

「魔界にあるんだけどね」

「何だと? 魔界を追い出されたんじゃないのか?」

「お城を追い出されたの。だから、魔界で営業しても問題はないよ」

だったら大丈夫か。

「えっとね。ウチの近所にある貴族のお城だって。万魔殿パンデモニウム以上の汚部屋なんだってさ」

また城か!?

「どうしよう。断るんだったら連絡入れるけど?」

「いいや、やってやる」

困ったな。また嬉しくなっちゃったじゃないか。



(終わり)

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