転移先がゴミ屋敷だったので、掃除スキル最強の俺がキレイにする! 

しーとみ@映画ディレッタント

ミミックと再戦?

部屋を出て早々待ち構えていたのは、静寂だった。

「そんな。マーゴットが……」
パイロンが崩れ落ちる。

「マーゴットがいない。どこにも」
廊下を這いずって、パイロンは親友を探す。

「大丈夫だ。あいつは死んでない。見ろ」

ゾロゾロと湧いて出てきたのは、スケルトンだ。俺の掃除ノウハウを叩き込んで作られたガイコツ共は、俺達を探すかのように、エントランスをうろついている。

「奴らはまだ活動してる。つまり、真琴は無事ってわけだ」
ならば助け出さないと。

だが、俺はバケツを蹴飛ばしてしまう。

ガイコツが俺達の気配に気づいたらしい。モップやハタキを構え、こちらに押し寄せる。

さっそくこの鎧を試す機会が来た。相手は俺の分身だ。どこまで通用するか。

「爽慈郎。ガイコツのあちこちに、汚れや埃が付着してるのがわかる? 兜の耳部分に魔力探知機があるから、作動してみて。手を当てるだけで作動するから」

パイロンの助言通り、鎧の耳部分に手を当てた。

良好だった視界が、サーモグラフィのような映像に切り替わる。

スケルトンの各部位に、埃、汚れがこびりついてた。それらは緑色に発光している。
発光体は、アメーバのようにうねっていた。

「この緑色が、魔力だってのか?」

「そう。魔力源は兜で確認できるよ。つまり、汚れを落とせば動きを止めるかも」

この汚れを探知して、キレイにしていけばいいようだ。

ワイパーを構える。剣道などの武道の心得なんかない。素人の構えで挑む。だが、不思議と怖さは感じない。パイロンの作ってくれた装備を信じているからか。

まず、一匹のスケルトンにハンガーを叩き込む。

ホコリがハンガーにこびりついた。ヘドロのような、猫の毛玉のような、真っ黒いホコリに見えるが。

「コレが穢れか?」

パイロンに確認を取る。

「そうだよ。それを除去してあげれば、元のガイコツに戻るから」

アレが落ちたスケルトンが、おとなしくなった。俺が指示を出すと、廊下の掃除を始める。どうやら、穢れを取ると元に戻るのは本当らしいな。

廊下一帯に、スケルトンの大群が。俺を探知すると、ワッと襲いかかってきた。

両手に持ったストッキング付きハンガーヌンチャクで、ガイコツに付着した黒い汚れを落とす。

そのたびに、スケルトンは正気に戻っていった。

「パイロン、ハンガーッ!」
「ほい!」

予備のハンガーを、パイロンにありったけ放り投げてもらう。

ハンガーを受け取ると、正常化したスケルトンに持たせた。

「こいつで仲間にこびりついた黒い汚れを落とせ!」

俺からのミッションを受けたスケルトンが、悪墜ちスケルトンを迎え撃つ。

再びスケルトンが元に戻っていった。またストッキングハンガーをもらっての繰り返し。

「くそ、ゾロゾロと」

とはいえ、楽な仕事ではないようだ。スケルトンの集団が、こっちに向かってくる。

「まとめて掛かってこ――」

ハンガーを構えて、俺は勢いよく跳びかかろうとした。

その刹那、スケルトン達の上半身が一瞬にして消えてしまう。続いて下半身も。箱形の化け物によって、スケルトンが数体囓られたのである。

そいつは以前に、防虫剤で追い払ったミミックだ。

「また会ったな」

エントランスの床に着地した口型化け物は、ゲップをしてこちらを向く。

ミミックは口元をニタリとさせ、俺達を待ち構えている。

「へへ、あの時はよくも、オレサマに変な物を食わせたな?」
相手はやる気だ。

「パイロン、下がっていろ」
俺は、魔力を付与されたモップを構える。

「あん時はすまなかったなぁ」
ミミックはあり得ない発言をした。

          

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