転移先がゴミ屋敷だったので、掃除スキル最強の俺がキレイにする! 

しーとみ@映画ディレッタント

旧校舎全部掃除なんて、ご褒美過ぎ!

「困ったな。旧校舎の掃除を頼まれてるのに、一人で片付きそうにないよ」

一人の少女が、旧校舎の前でため息をついているのが見えた。

ウチの学校の制服を着ているが、誰かはわからない。
グラビアアイドルかを思わせる肉感的容姿と、あどけない顔立ちの中に少し大人の色香を醸し出す美少女だ。
セミロングの髪を、片方だけ団子に結んでいる。

「お困りのようですね!」
俺は颯爽と少女に駆け寄った。

「掃除、片づけとあらば、この冷泉れいぜん 爽慈郎そうじろうにお任せあれ!」

決して女子とお近づきになりたいなんて、やましい目的からではない。
掃除と聞いて、黙って見過ごせなかったからだ。

一階にある倉庫からホウキとバケツ、モップと雑巾をかき集め、作業に取りかかる。

「見慣れない顔だな。あんた何者だ?」
上履きのラインが黄色だな。同い年か。
「わたしはパ……能美のうみいろは。二年C組の生徒ですぅ」

隣のクラスだな。ちなみに俺はB組に所属している。
それにしても、能美の容姿はどう表現すればいいのか。美しさが、人間離れしている。

だが、さっき何かを言いかけたようだが。
パ、とは?

「ところで、どこからどこまでをやればいい?」
言っているうちに、一階の廊下を掃き終わった。

「え、本当にやってくれるの?」
「まかせろ。こういうのは慣れている」

「あの、旧校舎全体ですよ? いったい何日かかるか」

俺は息を呑んだ。
この木造校舎全体だと? それを一人でやれと仰るか。

「それはまた重労働だな」
「ご、ごめんなさいっ。嫌なら結構で――」

「嬉しいじゃないかっ!」

「え……」
俺の様子を見て、能美とかいう少女が引き気味な顔をする。

重労働を強いられているのに、喜んでいるからか。

「昔、バイト先で高層ビルを上から下まで、一晩で掃除させられたことがあるぞ」

俺に掛かれば、旧校舎くらい造作もない。

「二時間だ。旧校舎の一つや二つ、二時間で片づけてやる」

これはやりがいがあるな。今から胸が躍って仕方ない。

「よし、やってやろうじゃないかっ!」

まず天井の埃をホウキで落とし、隅々まで履く。
モップで床を磨き、窓の曇りを、湿らせた新聞紙で拭き取る。

バイト先の掃除屋で教わってテクニックだ。

能美いろはが、「ふええ」と目を丸くした。俺の働きぶりに驚いているらしい。

「何かお手伝いを」
能美は手伝おうとした。

「不要だ。どこかで休んでいろ」
丁重にお断りする。

「校舎のすべてを独り占めしていい。こんなご褒美など、まずないんだぞ!」

「うええええ」
能美が、また引き気味な声を出す。

          

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