創作に役立たない、「映画の感想」

しーとみ@映画ディレッタント

共感したら負け 『俺はまだ本気出してないだけ』

堤真一が、ダメ漫画家になって家族に迷惑をかけ続ける話。

濱田岳演じる編集が、「彼は才能がある」とおだてるから、余計調子に乗る。
パン屋を目指す友人を生瀬勝久が、暗めの後輩バイトを山田孝之、他にもムロツヨシなど、個性派俳優が脇を固める。

主人公の娘は、『告白』や、『桐島』でヒロインを演じた橋本愛が担当する。これがまたカワイイ。
だが、主人公は娘にまで金を無心する程のクズ。
留学するための貯金なのに。
でも、お金を渡しちゃう。

そんなゴミ主人公も、娘がどうして金を得ていたかを知って絶望する。

主人公は、もうひとつ奇跡を起こしていた。
ラストで、友人の息子が、別れた妻と共にやってくる。
友人の息子の台詞が、本作のコンセプトを物語っている。

本作はいわゆる、『中年の危機』を描いた作品だ。
だが、同じテーマを扱った『アメリカン・ビューティー』とはベクトルが違う。
彼は現状を危機だと思っていつつも、肥大化した自己顕示欲のせいで目をそらしている。
内心では「このままではいけない」と思いつつも、抱きゃ苦する方法が分からないのだ。

クズという、いかにも共感しがたい主人公なのだが、彼のような「根拠のない自信」を得たいと、心のどこかで思ってしまう。

共感したら負けになる。
だが、共感せずにはいられない作品だ。

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