じゃじゃ馬王妃! ~フランス王妃が悪徳貴族を成敗する!~

しーとみ@映画ディレッタント

誰をスパイにする?

学校が用意したプリントには、各教師の名称と続柄が書かれていた。

「しかも、教師の一人が謎の死を遂げて、教職に欠員が出たって言うじゃない! 娘が入学する学校で事件なんて、親としては放っておけないわ!」

「それはいけませぬ! もしレミ教授がバロールのトップなら、お嬢さんから引き離さなくては!」


「私が教育者として侵入するわ!」
いてもたってもいられなくなったアンが、とんでもないことを言い出す。


「ダメだって、アン。王族なら誰だってあんたの顔を知ってる」

もしアンが教鞭を振るったりなどしたら、学校はパニックに陥るだろう。授業どころではない。

「あんた、学校まで行って『余の顔を忘れたかーっ!』とかやりだしかねんさ」
「まあ、それもそうね」
「否定しないところが怖いよ」

リザの一言で、アンは正気に戻った。

「ウチらはおとなしく、殺人事件の線を洗おう、アン。依頼だって出てるんだ」

教師の母親から、殺人の捜査依頼が来たらしい。
現在は、モリエールたちが検証している。

「じゃあレオを」

レオナルド・ダ・ヴィンチに教わるなど、本来すごいことだ。
実際、ジャネットの連れているきょうだいたちは、レオの知識をモリモリ吸収している。

「吾輩の本格授業など、眠くなりますぞ」

モノを教えるのは得意だが、本気モードのレオが相手では辛かろう。

「リザ、お願いできる?」

「無理だよ。あたしは勉強はからっきしなんだ。魔法の技術を教えていいならいいけど」
リザは手をあげる。

「あと、アンの姐さんと同じ理由で、モリエールさんも無理ッス」

彼は貴族ではないが、商売人として有名すぎた。

「アタイは、商売のイロハならいけそうッスけど」
そういうジャネットも無理だ。

「そうだわ。イコが」

「不可能です、殿下。イコ殿は、お子様がクロード様と同じ学園に通わせるそうです」
アンの提案を、オルガが遮った。

だとしたら、ニホン人のイコは余計に目立つ。
味覚がフランスと違うため、給食センターに忍び込ませるわけにもいかない。

「オルガは、無理よね」
「クロードお嬢様は、わたくしなんぞの指導に従わないでしょうね」

ときに友達感覚、時に口うるさい小姑と、オルガはいい意味で、クロードに遊ばれている。

「じゃあ誰を侵入させればよくて!?」

「いるではありませんか、殿下。我々のようにお嬢様に面が割れておらず、かつ城にも自由に行き来できる人物が」


「そんな便利すぎる人材が……いたわ」


アンたちと同じ部屋にいるのに、何一つ発言せず、誰からも名前を呼ばれなかった人物が。

みんなの視線を独占したその人物は、パサパサのパスタを美味そうに頬張ったまま、首をかしげていた。

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