じゃじゃ馬王妃! ~フランス王妃が悪徳貴族を成敗する!~

しーとみ@映画ディレッタント

ドルイド

「そんな大昔の。これは解読が困難です」

「イタリア最高の頭脳をもってしても、動かせないかしら?」

アンは、レオを焚き付けてみた。

「ご冗談を! ワタシを誰だと思っているのです? 必ずや、不可能を可能にしてごらんにいれましょう」

プライドに火が付いたのか、レオは調子に乗り出す。

「ワタシの手に掛かれば、こちらにいらっしゃるドルイドの方々が解き明かせなんだ謎も、一夜のうちに解決させましょうぞ」

大きく出た。けれども、気になる言葉もレオは口にした。

「どうして、ここの研究者たちが、ドルイドだと分かったの?」

「ケルトと言えば、ドルイドでしょうが」

確かに、ドルイドはケルトの知識や歴史を伝えてきた。

が、現代でも実在するかは分からないはず。

「ドルイドの信仰は自然界のはずです。木や森の中でこそ発揮される。カラクリに精通しているとは」
側にいたドルイドに、レオは語りかける。

「おっしゃるとおりでございます。不甲斐なく、申し訳ない」
ドルイドは頭を下げた。

「まあまあ」と、レオはドルイドたちを慰める。

「研究が進まなかったからといって、彼らを責めることはできませぬ。驚くべきはかつてのケルト民族でしょう。味方であるドルイドすら騙すとは。相当におそるべき機動兵器だったのでしょう」

ドルイドに用途を悟られたくないほど、危険だったと。

「超自然的な存在ということで、我々が管理しているのです。ケルトの血が薄くなった今、この謎を解明できる存在は一人もおりません」
スキンヘッドのドルイドが、残念がった。

「お任せくだされ。このレオめが必ずやお役に立ちましょうぞ」

やけに自信満々のレオだが、対するドルイドは引き気味だ。

「試しに、動かしてみますか? 実は、動くところまでにはいっておらず」

「動かせるの?」

「ケルトの血を引くアン殿なら、あるいは」

「やってみましょう」

アンは、試運転を試みる。

だが、伝史聖獣はウンともスンとも言わない。故障か? 撫でてみてもゲンコツを喰らわせてみても、ゾウは指一本も鼻一本も動く気配なし。

「どうやら、安全装置が掛かっているようですぞ」

なるほど。気軽に動かせる代物なら、フランスに軍事利用されるのがオチだ。この機械は、神の意志によってのみ動く可能性がある。

「時期を待ちましょう。ケルトの力が備わっているなら、有事の際に動いてくれるでしょう」

「ですな。今は、他の研究に当たりますぞ」

「その前に、ちょっと頼まれてくれない?」

レオが「はて?」と聞き返してくる。

「一旦パリに戻って、この資料を調べて欲しいの」

アンは、地下道の設計図を見せた。オルガによると、地下道の設計と予算が合わないそうだ。

「なるほど。珍妙ですな。調べましょう」

「頼みましたよ」

家路までもうすぐ、と言ったところで、アンは賊に絡まれた。

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