新しい嫁探し?バツイチお父さんは娘の為に霊界で伝説になる。

ふなむし

旅行は準備から楽しい



「どういう意味だ?」


「決して悪い意味ではないぞ。お主は今、我らと同じような状態におる」


「霊力が豊富ってことか?」


「概ね合っておる。なぁ?我ら神と呼ばれるモノ達はどのようにして生まれると思う?」



「信仰心だろ?さっきの話で言ったら信仰心が少なくなれば神様も力を失う。だから弱ってたんだろ?」


「正解じゃ、もう一つ花丸をあげよう。それでは世界にはどれだけの神がいると思う?」


「そりゃぁ、沢山いるんじゃねーか?言い伝えとか伝説でいったら世界のあちこちに色々な神様の話が残ってるしな」


「沢山とは、また適当に言いおって、人々の気持ちや願いが神を創り生み出す。お主の持ってきた棒にも神は宿っている」


康成の持ってきたバットを指差すとバットは僅かに光った。


「神様がこのバットに?あっ八百万か……」


「凄いの!3つ目の花丸じゃよ。力の強さは違えど色々なモノに神は宿る。そのバットとか言う棒は大切に使われてきたのだな?お主の気持ちがしっかり入っておる」


確かにこのバットは高校時代から使ってきた愛用のバットだ。


「それじゃあこのバットにも銀狐みたいな神様が宿ってるのか?」


「言ったじゃろ?力は違えどと、我らみたいに意思を持つ神は多くない。我ら位になるには信仰心が足りん。もしそのバットを人々が崇めれば意思を持つかも知れんがの」


なるほどな。


「我らくらいの神は沢山の強い信仰心に産み出され供物を食べることで肉体を手にいれることができる。気持ち、願いが我らに神としての役割を与えるのじゃよ」


「そこら辺にある木の実とかを自分で食べては駄目なのか?」


「駄目ではないが良い肉体を得るにはやはり人が願いや感謝を我らの供物を捧げる必要がある。我も暫く人々から供物を得ることもできなくてな……霊力的にも肉体的にもだいぶ弱っておった」


「それなら霊力は補充したけどまだ腹が減ってる状態ってことか?」


「凄く空いておる。何か持ってはおらぬか?」


苦笑いする銀狐を見て、康成はポケットを漁るとパチンコ屋の余り玉で交換したサラミと飴が入っていた。


「何日か前のモノだけどいいか?飴とサラミだけど」


「構わぬ!良いのか!?」


「ほらよっ、大したものじゃないけどな」


銀狐はサラミを口に入れると久しぶりに供物食べたようで、ゆっくりと噛み味わって食べていた。


「噛めば噛むほど味が出てくるの!旨いわ!」


余り玉のサラミで喜ばれると何か複雑だな……


「それで腹膨れるか?」


「膨れはせぬが肉体を維持する供物に量は関係ないのじゃよ。これで暫くはもつわい」


「なぁ?食べ物くらいならまた持ってこようか?それよりここから離れることはできないのか?」


「なんと!?ありがたいことじゃよ。是非頼みたいの。ここからか?社をあけっ放しの神不在の社も問題じゃが頻繁に人が来る場所でもないからの、問題は無しじゃよ」


「それなら、うちで飯食うか?いちいちここに持ってくるよりは良いだろ?作りたてを食わせられるぞ?」


「行くのじゃ!!是非も頼む!いつからじゃ?」


「明日の朝は暇だから作ってやるよ。夜も大丈夫だな。朝は子供を保育園に送ってからで良いか?多分8時半くらいかな」


「作って貰うのじゃ文句など言わんよ。約束じゃぞ?」


「わかったよ」


「感謝じゃ、他に何か聴きたいことはあるかの?」


「あるに決まってるだろ?結局俺は人間何か?」




「あぁ、すっかり忘れておったわ。まず我らは願いにより霊力を得る。供物により肉体を得る」


「人間も肉体を持ってるし少しは霊力も持ってるんだろ?」


「我らはお主らと肉体はあまり変わらないがの人間とは霊力の桁が違うわい」


「それじゃあほどほどの肉体と桁外れの霊力を持ってるモノが神ってことか?」


「そうだったはずなのじゃがの……お主のような供物も必要とせずに肉体を持ち、霊力も我ら並の人間なぞ見たこともないわい」


だから人間か聞いたのか?


「そう言われてもなぁ……」


「お主はどのようにしてそのような霊力を手に入れた?」

どのように?


あぁ

「霊界で飯食ったらこうなった」


「はぁっ!?」


銀狐は康成の言葉に驚き目を丸くさせる。


「れ、れ、れ、霊界!?お主!馬鹿なことを言うでない!人間のお主がどうやって霊界に!?」


「えっ?家の井戸からだけど?」


「そもそもおかしいわい、何故家の井戸が霊界に繋がるのじゃ!?」


「しらねーよ」



康成は銀狐に霊界へ行った事、方法、出来事を話す。


はぁ……と銀狐はため息を出す。


「なるほどのぉ、行けるのはお主だけかの?」


「まだ試してないからわからないんだよなぁ。でも来週には霊界から鬼族の家族が遊びに来るぞ?あと天狗族も一人」


「お主は自覚がないかもしれんがの、多分そやつらは既に神に近い存在になっておるぞ?昔に霊界から現世に来た鬼は鬼神になったし、天狗はお主も聞いたこともあるじゃろ?鞍馬山の天狗じゃよ」


「鬼や天狗は霊界出身だったのか……銀狐はこっちの生まれなのか?」


「我は現世の生まれじゃよ。いつ生まれたかはわからぬがの」


「最初は普通の狐だったのか?」


「お主、勘違いしているようじゃが本当の稲荷神は狐ではない、狐は眷族じゃよ」


「まじで?」


「初めは我らの一族は人間と変わらぬ姿じゃったがの、いつの間にか稲荷神は狐と勘違いしてしまい、その印象だけが残ってしまっての……信仰心や願いは狐の印象でされるものだからいつからか耳も生えたし狐にもなれるようになってしまったのじゃよ」


「なんかすまんな」


「気にしてはおらぬよ。印象に残って分かりやすいじゃろ?」


「気にしてないなら良いけどさ。それで結局俺は人間でいいのか?」


「多分人間じゃよ、規格外じゃけどな。今の体の造りは我らに近いが方法が全く違うの。人間以上だが神ではないが神より下と言うわけでもないしの」


「何だよ多分って……俺の寿命も長いのか?」


「そこは年月を重ねないとわからんよ。まぁ楽しみにしてみるのじゃな」


「まぁ何も無ければあと60年は生きれるだろうしな」


「60年とな?まぁ良い気長に待つが良い」

康成は携帯の時計を確認すると3時を回ろうとしていた。


「もう一時間近く立つのか……俺はそろそろ行くぞ、娘も寝たまんまだしな」


「なんじゃ妻子持ちじゃったか」


「妻は持ってねーよ、今はただの子持ちだよ」


銀狐は康成の言葉にニヤリと笑う。


「そうかそうか、それは大変じゃの」

「何笑ってんだよ」


「何でもないわい、気にするでない。それではまた明日の」


「あぁ、もう今日だけどな」


「茶化すでない。知っとるわ。帰りはまたこいつをつけよう」


銀狐は手招きすると康成をこの神社に連れてきた白い狐が現れた。


「家まで近いし帰りくらい大丈夫だぞ?」

「ちょっとした親心じゃよ。無下にするでない。それではの」


「あいよ、それじゃあ家まで頼んだぜ?」


康成は銀狐に別れを告げると狐をお供に帰路についた。



問題無く家につき部屋に戻ると彩愛が康成の布団に大の字になり移動していたため、起こすのも悪いと康成は小さな彩愛の布団に丸くなり、眠りについた。



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