新しい嫁探し?バツイチお父さんは娘の為に霊界で伝説になる。

ふなむし

プロレスは親父の嗜み



智之の家に入ると、誰もいないため真っ暗だったが、ただ暗いだけではなく、康成は薄気味悪い雰囲気も感じ取れた。




「待ってろよ。今、電気をつけるから」




智之が電気をつけ、玄関が明るく照らされたが雰囲気は変わらず重たいままだ。




「なぁ智之?お前の家ってこんなに暗い感じだったか?」




「いや?特に気にしたことはないけど……何か変か?」




気づいてないか……




もしかして智之は普通の人より霊力が強いのか?




以前甚平さんが、霊力が高い人は育つ環境か、生まれつきの才能だって言ってたな。


智之の実家も寺や神社系じゃなく普通の家庭だったはずだ……




「原因は智之自信か……」




「やっぱり俺がおかしいんだな……」




「馬鹿、違う、いや?違うくねーか?まぁ智之の才能ってやつだ」




「俺の才能?」




昔から智之は第六感と言えば良いのか、危機管理能力に優れていた。


オラオラで常に強気な智之だったが、ヤバいと思ったらすぐに逃げだし、警察のお世話になったことは一度もない。




「なぁ?才能ってなんだよ?」




「多分だぞ?智之はヤバいと感じたら体が勝手に防衛本能が働いて無意識だろうけど常に緊張してる状態なんだと思う。」




「俺が家で何に緊張するんだよ?」




「言ってただろ?声が聴こえるって、多分そいつにだ」




「ウチの家族以外、この家に誰かが居るっていうのかよ?」




「智之?俺は今からあり得ないことを言うからな?笑うなよ?」


「なんだよ?まさか幽霊の仕業とか言う気じゃないよな?」






康成はニヤリと笑うと智之はあり得ないと言うような顔をしていた。




「馬鹿なこと言うなよ……なぁ康成?俺は真剣に悩んでるんだ……それを急に幽霊の仕業だなんて……俺も変だけど、お前もどうにかしてるぜ?」




「本当にな俺もどうにかしてると思うよ……まぁ親友の頼みだと思って一度だけ信用してみてくれよな。大丈夫、悪徳商法何かじゃねーよ」




「わかったよ……もしも何もなかったら一緒に通院しようぜ……1人より2人で病院通いなら心強いしな」




「勝手に人を患者にするんじゃねーよ。俺は全然正常だ」


「顔真っ赤にして俺は酔ってないって言うくらい信用できねーよ」




「冗談を話す余裕がでてきたじゃねーか」


「本当にな……でも康成?もし本当に幽霊の仕業だったらお前どうにかできるのかよ?悪霊だったらどうするんだ?」




「大丈夫だ、俺、少なくとも鬼よりは強いからな」




「なんだよそれ?鬼にあったことあるのかよ?」




「無事に解決したら逢わせてやるよ。今度ウチに遊びに来るからな」




「絶対だからな!嘘つくなよ!」




「鬼に逢いたいなら、まずはこの家をどうにかするぞ」




康成と智之は玄関から順番に部屋を探索した。


リビング、問題なし


キッチン、問題なし


客間、問題なし


浴室、問題なし


洗濯室、問題なし


トイレ、問題なし


庭、問題なし


問題の寝室、問題なし


1階の各部屋には、特に嫌な雰囲気を強く感じることなく探索が終わった。


てっきり寝室に何かあると思ったが……ここじゃないな……1階じゃないとなると……












「智之?2階には何がある?」




「子供部屋の予定の部屋が2つと、物置部屋に俺の部屋だろ?後はベランダ位じゃないか?まだ子供も小さいし2階はあまり使ってないんだ。俺の部屋も机と椅子位しか置けてないしな、ほとんど手付かずだ」




智之の家はリビングが中心になるように建築されている。




リビングから2階への吹き抜けを作り、2階の各部屋から下を覗くとリビングが見える造りだ。


家の外だけではなく2階の各部屋にはリビング側に窓があり、1階から2階へ、2階から1階へと声をかけられる造りになっている。




去年新築した際に智之がこだわった家族の会話、声かけがしやすい造りになっている。




2階から下を覗くと下の様子を確認できるし、1階から「ご飯できたぞ」等の簡単な会話も可能だ。




正直いるか?と思ったが智之が考えた最強の家なので何も言えない。




「なぁ康成?」




智之がリビングの中心から上を向き2階を見たまま固まっている。




康成も上を見ると西側の部屋がおかしい。




時刻は夕方が近く西日が入る時間だ。




西側にある2つある部屋の片方は西日が入って来ており、もう片方は真っ暗だった。




「あの部屋は?」




「俺の部屋だ……」




「カーテンは?」




「言ったろ?ほとんど手付かずだって……」




「行くぞ……」




「お、おい!康成!本気かよ!何かやべーよ!」




「ちなみに何か見えたか?」




「あ、あぁ……暗い部屋から何かが2階からこっちを覗いてた、笑ってた……気がした……」




智之は尋常じゃない脂汗をかいており、防衛本能があれはヤバいと告げている。




「そっか……俺には長髪の女が、笑ってこっちを見てたわ。しかも、おいで遊ぼって聴こえた」




「康成!止めてくれよ!あれはホントにヤバい!逃げよう!今まで俺が逃げようって言って間違えたこと無いだろ!」


康成は、必死で止める智之を抑え、階段を一歩づつ昇る。


「頼むよ、康成!1人にしないでくれよ!」




「智之、そこで待ってろ。中途半端に見えて感じてしまってるから怖いんだ。確信が持てない、曖昧なモノは誰でも怖い。見えない、感じないなら恐くない。逆も同じで凄く見える、凄く感じるなら恐いことはないんだ。中途半端が一番恐怖心を煽る。原因がわかる、解決方法がわかるなら、後は行動あるのみだ」




階段を一段昇る毎に一階よりも更に気配が強くなっていく。




階段から右に曲がると子供部屋


その反対、左の一番奥に問題の部屋がある。




部屋の前に立つと周りの壁や扉がカタカタと音を鳴らす。




康成が智之の部屋のドアノブを回し扉を開けると部屋の中にはまぶしい程の西日が入り部屋を照らしていた。




六畳程の部屋には、本当に机と椅子しか置かれてなく、新築から一年立つが部屋はまだ新築の木の匂いがした。






部屋に入ると扉が閉まった。




「はぁ……」


ありきたりなシチュエーションにため息が出るよな。まったく。


このパターンは……と……




ガチャガチャ!




康成は扉が開かないことを確認し後ろを振り向く。




誰もいない。




机の方に寄り表面を撫でるように触る。


何も起きない。




机の引き出しを開ける。


何も入ってない。




後ろを振り返る。


誰もいない。




そこで後ろを向いた康成の肩に何かが触れる。




顔を戻すと、口が裂ける程に開き笑っている女が康成の正面に立っていた。






女は康成の手を掴み、リビング側の中窓へ引っ張る。




「捕まえ……」




「つ、か、ま、え、た!」




女が康成を捕まえたのではない。康成が女を捕まえたのだ。




手を捕まれた女は手をほどこうとするがびくともしない。




「散々俺のダチを苛めてくれたみてーだな?理由はわかんねーが、未練タラタラで成仏もできねー、ダチに迷惑をかける。悪いが今日限りで強制的に成仏してもらうぜ?」




「これは智之の肉体的苦痛の分!」




康成は女の後ろに回ると腰をがっちりホールドし固定したまま捻りながら後ろに放る。




捻り式バックドロップ




「今度は智之の精神的苦痛の分!」


頭を抱えている女の腰を高く持ち上げ、顎、太ももをクラッチし下に引くように力を込める。




タワーブリッジ






最後にタワーブリッジの態勢を崩し、女の頭を康成の首と肩に挟むように乗せ、両足を掴みカタカナのハのような態勢になる。


「そしてこれが今日死んだ俺の諭吉の分!」


そのまま康成は机の上に乗る。




「良かったな。最後にたくさん遊んでもらえてな!これが男のプロレスごっこだぜ!ふんっ!」




そのまま軽くジャンプすると、机の上に全体重を乗せるように臀部から落ちた。




キ○肉バスター






最後にキ○肉バスターをくらった女の霊は笑い顔を崩すことなく、さらさらと砂のようになり天に昇るように消えた。






女が消えると智之の家は今までの不穏な空気が嘘のように晴れ、部屋には綺麗な西日が入って来ていた。






「康成!大丈夫か!」




空気が変わったのを察してか、智之が2階に上がり康成を見つけると




机の上に乗り尻を抑えてうずくまっている康成がいた。






「人間がキ○肉バスターはあかん……ケツと腰が死ぬ……」









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