新しい嫁探し?バツイチお父さんは娘の為に霊界で伝説になる。

ふなむし

夜勤明けはむしろ休み





なんだあれ?デカくねーか?




軽く見積もっても3メートルはありそうな猪が前方で水を飲んでいた。




日本で猪と言えばせいぜい1メートル前後くらいの物だ




「小さい頃に見たアニメの大きな猪の神様みたいだ……」




昔、見たもののけの類いを思いだし、感動もあるが康成はただ呆然としていた。




「なかなか大物だな。おいっ!康成!今日は猪食い放題だぜ!」




笑いながら華凛はハンマーを肩に担ぎ上げ、猪の方へと歩いていった。




「華凛!大丈夫なのか?」




「平気、平気!まぁ見てろよ!」






これだけ大きい声を出したのだ。


猪も気づいたのか、こちらを振り返り小さく唸るように声を出す。






立ち上がり怒っているのか先ほどより猪の威圧感で大きく感じる。




華凛はハンマーを構え「いつでも来いよ」と言わんばかりに挑発している。




…………………………








猪が先に動いた。




猪が華凛と10メートル程の距離を一気に縮め直線で華凛へ突っ込んで来た。




華凛はハンマーを下に構え、ぶつかる直前に横に少しずれ猪の前足の膝をハンマーで打ち抜いた。




ゴギャッ!と鈍い音が聞こえ、猪は痛みからか立ち上がることもできずにそのまま横に倒れ混んだ。




ズシンッ




倒れ混んだ猪に華凛は容赦なくハンマーを振り落とし、猪の命は呆気なく散った。




「まぁこんなもんよ!もう大丈夫だ、康成もこっちに来いよ!」






最初はヒヤヒヤしながら見ていた康成だったが華凛の声を聞き、安堵しながら華凛の方へと向かった。




その時


「へっ?」


華凛の後方の茂みが激しく揺れると先ほどよりも更に大きい猪が華凛へと向かって行った。




「危ない!」




康成が叫ぶが華凛は急なことで思考が追い付かないのか、動くこともできずにいた。






康成は一気に地面を蹴り、猪へと向かおうとした。




ボコンッ!




地面を蹴り、走り出そうとした康成だったが本気で踏み込んだ為
地面が陥没しバランスを崩しながら康成は猪へ体当たりのような格好でぶつかった。




華凛は康成の声と音に振り向いた時には既に康成は居なく華凛の後方には倒れた数々の木とその中心には、絶命したと一目で分かる全身血まみれの猪と返り血を浴び、パワーボムをくらったレスラーのような格好の康成が転がっていた。




「おい!康成!大丈夫か!?」




「うーい……」




康成から返事はあるが、やや声のトーンが低い。




「どっか怪我でもしたのか!?」




「全然大丈夫だし!むしろ元気だし!」






助けに入ろうとして、バランスを崩し、なんとも格好悪い体制を華凛に見られたため、康成は少しテンションが下がっていた。


…………………………








猪の血抜きを終え、村へ帰ると村から大歓声が上がった。




二人は狩りの成果を村の広場に下ろすと、村人が馴れた手つきで猪を解体していった。






返り血を浴びた康成は、着替えを借り、甚平に風呂を借りた。






「いやーなんとかなったなぁ
最後はカッコ悪かったけど……」




過去に戦隊物に憧れ、ライダーに憧れた康成としては納得行く結果ではないが、咄嗟に身体が動いたことが康成は嬉しかった。






「もう少し力加減を覚えて、ドロップキックみたいに決まれば……」






「康成ー!湯加減どうだー!」






風呂の扉の外から華凛の声が聞こえた。




「服は洗ったけど乾かないからちょうど良いサイズの服借りてきたぞー!」




「あいよー今度洗って返すなー」




がらがら


返事をすると扉が空き華凛が仁王立ちで立っていた。




「ちょっ!ばかっ!なにしてんだよ!閉めろって!」




「母ちゃんが迷惑かけたんだから少し背中でも洗ってやりなって言うからきたぜ!大丈夫だ!水着も来てきたから恥ずかしくないぜ!」




「そういう問題じゃねーよ!俺は何も着てねーんだぞ!」




「最初に村の外で全裸になったのは康成だろ?今更何言ってんだよ」




「何も言い返せねーよ」




「おとなしく洗われろよな、何か父ちゃんが泣いてけでなんでだろ?」






鬼の目にも涙かよ……


後で甚平さんから小言でも言われそうだな……




「しかたねーな、じゃあ頼むよ」




康成が許可を出すと華凛はニカッと笑い背中を流してくれた。




時折見える大ぶりの林檎を堪能し、なかなか悪くないなと思う康成だった。








風呂あがると華夜と甚平がリビングにいた。




「風呂を貸してもらってありがとうございます。華凛はそのまま風呂に入るみたいです。」




「いいのよ、華凛も気を抜いて康成君に迷惑をかけたみたいだし。それよりあの子なかなかよかったでしょ?」




「ほぅ、最近は私とお風呂はなかなか入りたがらないのですが楽しかったですか?楽しかったのですね……」






ズンッ!と鈍い音がすると甚平は崩れ墜ちた。




「あんまり気にしないでちょうだい。最近華凛ちゃんがかまってくるないから拗ねてるのよ」




ため息をつきながら時計を確認すると娘の保育園の迎えが迫っていた。


「あっ、そろそろ時間なので帰りますね?娘の迎えにも行かなきゃいけませんので」




「あれっ?康成君、子供いたの?」


やや不安そうな声で華夜が康成へ聞き返したが




「嫁にも逃げられた、ダメダメのお父さんですけどね。それなりに頑張ってますよ。」




「ふーん、そっかそっかぁ」


康成が答えると急に笑顔に変わり根掘り葉掘り質問責めにあった。




「華夜さんそのくらいにしましょう。康成君もそろそろ時間みたいですしね」




「そうね、残念だわ。次はいつ来れるの?」




「仕事の関係もあるので早くて4日後とかですかね?」




「わかったわ、今度は今日取れた猪でご馳走にしましょ?4日もなれば、だいぶ美味しくなるだろうし」




「ありがとうございます。今日のラーメンは沢山買ってきたので食べてください。華凛に作り方を教えているのですぐにできますよ」




「それは嬉しいですね。華夜さんありがたくいただきましょう。康成君には、こんど何かお裾分けしますね」




「それじゃ失礼します。また来ますね」






甚平達に挨拶を済ませ康成は井戸に向かった。








あっ華凛に挨拶するの忘れた。






今度行くとき何か買っていってやろ。







コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品