【冒険者組合 七つの大罪】
1章1話
「──ジャンヌ以外、全員揃ったわね?」
円卓を囲む七人の男女。
一際豪華な椅子に座る黒髪黒瞳少女が、低い声で呟くように言った。
その声が聞こえたのか、少女の隣に座っている美しい女性が肯定する。
「はい、組合長。ジャンヌ以外は全員揃いました」
「そう……では、始めましょう──!」
ガタッと勢い良く立ち上がり、少女が力強く拳を握りながら叫んだ──
「第一回! テリオン・フリオールの二つ名を決めようのコーナァァァアアアアアアっっ!!」
──シン、と空気が静まり返る。
少女の発言の中に出てきたテリオン・フリオールが、顔を真っ赤にしながら抗議の声を上げた。
「ちょっと組合長?! 俺、そんな話し聞いてないんですけどぉ?!」
「当たり前でしょ? 今初めて言ったんだし」
「意味わかんねぇ!」
白髪に蒼瞳の少年が、机を殴り付けて空を仰ぐ。
と、そんな少年の隣に座る若い男性が、柔らかな笑みを浮かべながら少年の肩に手を置いた。
「まあ落ち着きなよテリオン。組合長は別に、嫌がらせで二つ名を付けようとしているわけではないからさ」
「ガルドル……いや、ならなおさら意味がわかんねぇよ?! 俺まだ『第五級冒険者』だぞ?! 二つ名を付けられるのは、『第三級冒険者』からだろ?!」
「あはは」
「あははじゃねぇ!」
灰髪灰瞳の男性の両肩を掴み、乱暴に前後へ振る。
年下の子どもからの失礼な行為に──だがガルドルと呼ばれた男性は、全く怒ろうとしない。
ニコニコと笑みを絶やさないガルドルには敵わないと思ったのか、少年がガックリと肩を落として椅子に座り直した。
「ん〜。組合長のいきなり発言は今に始まった事じゃないけど〜、なんでまたテリオンくんの二つ名を決めようってなったの〜?」
「…………ん……ソフィアに、同意……こんな朝早くから、なんで……?」
桃髪金瞳の少女が首を傾げながら、緑髪深緑瞳の少女が机に突っ伏したまま、黒髪黒瞳の少女に問い掛ける。
「決まってるでしょ? テリオンはすぐに強くなるわ。それこそ、あっという間に『第三級冒険者』にまで駆け上がる……その時になって二つ名を考えようとしても、なかなか良いのは浮かばないでしょ? だから、早めに考えるの」
「ンでオレサマがこのガキの二つ名を考えなきゃなンねェ? オレサマはオレサマより弱ェ奴の事ォ考えるのァゴメンだねェ。テメェらで考えやがれェ」
金髪碧眼の獰猛そうな男が不愉快そうに立ち上がり、そのまま部屋を出て行こうと──して。
「待ちなさいディアボロ」
「あァ?」
「組合長が考えろと言っているの。あなたに拒否権なんて無いわ。早く席に戻りなさい」
「オイオイコキュートスゥ。テメェいつからオレサマに指図できるほどォ偉くなったンだァ?」
言葉とは裏腹に、ディアボロと呼ばれた男が嬉しそうに笑いながらゆっくりと振り返る。
「まァ、組合長がお願いしますって言えば考えてやらなくもねェがなァ」
「はいはいお願いします。これで満足? 早く席に──」
そこまで言って、組合長が言葉を止めた。
──寒気。
銀髪に紅瞳、褐色肌を持つ女性の体から、寒気を覚えるほどの殺気が放たれている。
「──ディアボロ……私の前で組合長をバカにするなんて、そんなに死にたいのかしら……?」
コキュートスと呼ばれた女性が、瞳に殺気を宿しながら立ち上がる。
「へェ……戦る気かァ?」
「上等」
「コキュートス、殺気を放つのを止めて。ディアボロもほら、大剣を置いて座る!」
「申し訳ありません、組合長。命令を聞かなかった罰は、コイツを潰した後に受けますので」
「はっはァ! テメェ本気でオレサマに勝つ気かァ?! 身の程ってのを教えてやるよォ!」
体から白い冷気を放つコキュートスと、ノコギリのような大剣を肩に担ぐディアボロが向かい合い、戦闘態勢に入る。
──『第一級冒険者』の体から放たれる、空間を軋ませるほど濃厚な殺意。
一触即発の二人を見て、その場にいた全員がまたかとため息を吐いた。
仕方がないと組合長が立ち上がり、二人を止める──前に。
──ズンンッッ!!
突如響いた重々しい音に、室内の全員が一人の少女へ視線を向けた。
「……うるっ、さい……」
「珍しくリリアナが怒ってるからね。二人とも、そこまでだよ」
机に拳を振り下ろした状態の女性と、左目に付けた眼帯を外す構えを取ったガルドルを見て、二人が舌打ちをしながら席に座り直した。
「ありがとね、リリアナ。ガルドルも」
「ん……」
「これじゃあ話し合いが進まないからね。新しく入ったテリオンの二つ名を考えないと」
リリアナと呼ばれた緑髪の少女が再び机に突っ伏し、ガルドルが狼のような尻尾を振りながら気にするなと笑みを浮かべる。
──と、広い会議室の扉が開けられ、水色の髪と濃い青瞳の少女が部屋に入ってきた。
「──ご主人様。『冒険者機関』に行ってクエストを取ってきましたわ」
「ん。お帰りジャンヌ」
美しい人形のような完璧さを感じさせる少女──だが、ペタペタという可愛らしい音を立てる裸足だけが、なんとも異様な雰囲気を醸し出している。
ジャンヌと呼ばれた少女は真っ直ぐ組合長の所に向かい、手に持っていた数枚の紙を手渡した。
素早く中身に目を通し──何かに気づいたのか、黒色の瞳を細める。
「……『指名依頼』が三個も……ジャンヌ、私たちの名前が書かれてた紙は、これだけだった?」
「はい。ワタクシたちの名前が書かれていたのは、全て取ってきましたわ」
「そう……ありがとね」
「ご主人様のためならば」
優雅にお辞儀し、ジャンヌが空いている席に座る。
数秒ほど沈黙し……組合長が立ち上がり、素早く組合員に指示を出した。
「ディアボロとガルドル、それとコキュートス。あなたたち三人は、北の平原に出現したドラゴンの討伐に向かって。もしドラゴンの姿が見えなかったら、引き返して良いから」
「うん。任せておいて」
「わかりました」
「……あァ、了解だァ」
「それで……テリオン、ソフィア。あなたたちは南の森の調査。なんだか森の様子がおかしいみたいだから、注意して。もしも危険なモンスターに遭遇したら、すぐに逃げる事。良いね?」
「ああ」
「は〜い」
ソフィアと呼ばれた桃髪の少女が返事をし、妖艶な笑みを浮かべる。
「リリアナはいつも通り、ここから【千里眼】で指示をお願い」
「…………了、解……」
「ジャンヌは私に付いて来て。早くソフィアの二つ名を付けに来いって『冒険者機関』から催促が来てるから」
「了解ですわ」
「組合長~、可愛い二つ名でお願いね~?」
「わかってるよっ」
七人に指示を出し──組合長が大声を上げた。
「私たちの【冒険者組合】は結成して日が浅い! だけど、これだけ多くの『指名依頼』が来るって事は、それだけ期待されてるって事だから! なるべく失敗はしないように! でも、死ぬのだけは許さないから!」
組合長の言葉に、七人の組合員は頷いた。
「さあ──【七つの大罪】、暴れるよ!」
円卓を囲む七人の男女。
一際豪華な椅子に座る黒髪黒瞳少女が、低い声で呟くように言った。
その声が聞こえたのか、少女の隣に座っている美しい女性が肯定する。
「はい、組合長。ジャンヌ以外は全員揃いました」
「そう……では、始めましょう──!」
ガタッと勢い良く立ち上がり、少女が力強く拳を握りながら叫んだ──
「第一回! テリオン・フリオールの二つ名を決めようのコーナァァァアアアアアアっっ!!」
──シン、と空気が静まり返る。
少女の発言の中に出てきたテリオン・フリオールが、顔を真っ赤にしながら抗議の声を上げた。
「ちょっと組合長?! 俺、そんな話し聞いてないんですけどぉ?!」
「当たり前でしょ? 今初めて言ったんだし」
「意味わかんねぇ!」
白髪に蒼瞳の少年が、机を殴り付けて空を仰ぐ。
と、そんな少年の隣に座る若い男性が、柔らかな笑みを浮かべながら少年の肩に手を置いた。
「まあ落ち着きなよテリオン。組合長は別に、嫌がらせで二つ名を付けようとしているわけではないからさ」
「ガルドル……いや、ならなおさら意味がわかんねぇよ?! 俺まだ『第五級冒険者』だぞ?! 二つ名を付けられるのは、『第三級冒険者』からだろ?!」
「あはは」
「あははじゃねぇ!」
灰髪灰瞳の男性の両肩を掴み、乱暴に前後へ振る。
年下の子どもからの失礼な行為に──だがガルドルと呼ばれた男性は、全く怒ろうとしない。
ニコニコと笑みを絶やさないガルドルには敵わないと思ったのか、少年がガックリと肩を落として椅子に座り直した。
「ん〜。組合長のいきなり発言は今に始まった事じゃないけど〜、なんでまたテリオンくんの二つ名を決めようってなったの〜?」
「…………ん……ソフィアに、同意……こんな朝早くから、なんで……?」
桃髪金瞳の少女が首を傾げながら、緑髪深緑瞳の少女が机に突っ伏したまま、黒髪黒瞳の少女に問い掛ける。
「決まってるでしょ? テリオンはすぐに強くなるわ。それこそ、あっという間に『第三級冒険者』にまで駆け上がる……その時になって二つ名を考えようとしても、なかなか良いのは浮かばないでしょ? だから、早めに考えるの」
「ンでオレサマがこのガキの二つ名を考えなきゃなンねェ? オレサマはオレサマより弱ェ奴の事ォ考えるのァゴメンだねェ。テメェらで考えやがれェ」
金髪碧眼の獰猛そうな男が不愉快そうに立ち上がり、そのまま部屋を出て行こうと──して。
「待ちなさいディアボロ」
「あァ?」
「組合長が考えろと言っているの。あなたに拒否権なんて無いわ。早く席に戻りなさい」
「オイオイコキュートスゥ。テメェいつからオレサマに指図できるほどォ偉くなったンだァ?」
言葉とは裏腹に、ディアボロと呼ばれた男が嬉しそうに笑いながらゆっくりと振り返る。
「まァ、組合長がお願いしますって言えば考えてやらなくもねェがなァ」
「はいはいお願いします。これで満足? 早く席に──」
そこまで言って、組合長が言葉を止めた。
──寒気。
銀髪に紅瞳、褐色肌を持つ女性の体から、寒気を覚えるほどの殺気が放たれている。
「──ディアボロ……私の前で組合長をバカにするなんて、そんなに死にたいのかしら……?」
コキュートスと呼ばれた女性が、瞳に殺気を宿しながら立ち上がる。
「へェ……戦る気かァ?」
「上等」
「コキュートス、殺気を放つのを止めて。ディアボロもほら、大剣を置いて座る!」
「申し訳ありません、組合長。命令を聞かなかった罰は、コイツを潰した後に受けますので」
「はっはァ! テメェ本気でオレサマに勝つ気かァ?! 身の程ってのを教えてやるよォ!」
体から白い冷気を放つコキュートスと、ノコギリのような大剣を肩に担ぐディアボロが向かい合い、戦闘態勢に入る。
──『第一級冒険者』の体から放たれる、空間を軋ませるほど濃厚な殺意。
一触即発の二人を見て、その場にいた全員がまたかとため息を吐いた。
仕方がないと組合長が立ち上がり、二人を止める──前に。
──ズンンッッ!!
突如響いた重々しい音に、室内の全員が一人の少女へ視線を向けた。
「……うるっ、さい……」
「珍しくリリアナが怒ってるからね。二人とも、そこまでだよ」
机に拳を振り下ろした状態の女性と、左目に付けた眼帯を外す構えを取ったガルドルを見て、二人が舌打ちをしながら席に座り直した。
「ありがとね、リリアナ。ガルドルも」
「ん……」
「これじゃあ話し合いが進まないからね。新しく入ったテリオンの二つ名を考えないと」
リリアナと呼ばれた緑髪の少女が再び机に突っ伏し、ガルドルが狼のような尻尾を振りながら気にするなと笑みを浮かべる。
──と、広い会議室の扉が開けられ、水色の髪と濃い青瞳の少女が部屋に入ってきた。
「──ご主人様。『冒険者機関』に行ってクエストを取ってきましたわ」
「ん。お帰りジャンヌ」
美しい人形のような完璧さを感じさせる少女──だが、ペタペタという可愛らしい音を立てる裸足だけが、なんとも異様な雰囲気を醸し出している。
ジャンヌと呼ばれた少女は真っ直ぐ組合長の所に向かい、手に持っていた数枚の紙を手渡した。
素早く中身に目を通し──何かに気づいたのか、黒色の瞳を細める。
「……『指名依頼』が三個も……ジャンヌ、私たちの名前が書かれてた紙は、これだけだった?」
「はい。ワタクシたちの名前が書かれていたのは、全て取ってきましたわ」
「そう……ありがとね」
「ご主人様のためならば」
優雅にお辞儀し、ジャンヌが空いている席に座る。
数秒ほど沈黙し……組合長が立ち上がり、素早く組合員に指示を出した。
「ディアボロとガルドル、それとコキュートス。あなたたち三人は、北の平原に出現したドラゴンの討伐に向かって。もしドラゴンの姿が見えなかったら、引き返して良いから」
「うん。任せておいて」
「わかりました」
「……あァ、了解だァ」
「それで……テリオン、ソフィア。あなたたちは南の森の調査。なんだか森の様子がおかしいみたいだから、注意して。もしも危険なモンスターに遭遇したら、すぐに逃げる事。良いね?」
「ああ」
「は〜い」
ソフィアと呼ばれた桃髪の少女が返事をし、妖艶な笑みを浮かべる。
「リリアナはいつも通り、ここから【千里眼】で指示をお願い」
「…………了、解……」
「ジャンヌは私に付いて来て。早くソフィアの二つ名を付けに来いって『冒険者機関』から催促が来てるから」
「了解ですわ」
「組合長~、可愛い二つ名でお願いね~?」
「わかってるよっ」
七人に指示を出し──組合長が大声を上げた。
「私たちの【冒険者組合】は結成して日が浅い! だけど、これだけ多くの『指名依頼』が来るって事は、それだけ期待されてるって事だから! なるべく失敗はしないように! でも、死ぬのだけは許さないから!」
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「さあ──【七つの大罪】、暴れるよ!」
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