チートスキル『死者蘇生』が覚醒して、いにしえの魔王軍を復活させてしまいました〜誰も死なせない最強ヒーラー〜

ノベルバユーザー364546

竜人たちの救世主

「竜人の里……やっぱり国というよりかも、里という表現の方が合っていますね」

「人間よりかは少数で暮らしてるらしいな」

 竜人の里に着いた二人は、チラチラと入口付近で様子を伺っていた。
 そこには、かなり個性的な住まいが広がっており、尖っている家や丸く収まっている家など、規則性が見当たらないものばかりである。

 石で作られているその家々は、何とも言えない冷たさがあった。

「どうします? 突撃しますか」

「何でだよ。こういう時は、まず話しかけないと駄目だ。どこかに一人で歩いている竜人を見つけよう」

 リヒトは目を凝らして竜人の影を探す。
 話が出来そうな者――そして、それが一人であればベストだ。
 一人であるならば、話だけでも聞いてもらえる可能性が高い。

 二人以上になると、戦いになっても勝てるという判断をされ、先手を取るために問答無用で攻撃してくる場合がある。

 これまで自分の為に蓄えていた知識が、仲間のために使われることになるとは思ってもいなかった。


「あ! リヒトさん、いました! えっと……二人ですね。結構若い竜人です」

「二人か……でも、武器は持ってなさそうだし、他に竜人がいないから仕方ないか」

 二十分ほど探していた結果。
 ロゼが二人組の竜人を見つけることになる。
 今日だけたまたまなのかは不明だが、あまりにも竜人が見当たらない。

 あの二人組をスルーしてしまっては、今日中に出会えない可能性だってあった。
 妥協という形になってしまうが、危険性が無さそうだと判断し、一応不死身のリヒトが前に出て話しかける。

「こんにちはー……」


「――ラルカ姉さん。人間だ」

「カイン、気を付けて。男の方は人間だけど、女の方は人間じゃなさそう。かなり不気味な気配だよ」

 カインと呼ばれた少年は、魚が入っているカゴを地面に置き、爪を立てて威嚇のような行為をした。
 かなり警戒されてしまっているらしい。
 この様子だと、一人や二人組など関係なく戦いになってしまいそうだ。

「おい人間! 一体何の用だ。ここはお前らが来るような場所じゃないぞ」

「そんなに警戒しないでくれ! 俺たちは敵じゃない! 君たちと取引をしたくてここに来た!」

「……商人か。人間の持つものなど、大したことがないのは知っている! 今すぐ引き返すなら見逃してやるぞ!」

「それはこれを見てから言うんだ」

「――あの武器は!?」

 カインそしてラルカは、リヒトの取り出した武器に目を釘付けにされる。
 これほどまでに素晴らしい武器があっただろうか。
 一目見ただけで分かるほど、それは限りない輝きを放っていた。

 これを見逃してしまうほど、ラルカやカインは愚かな者ではない。
 そして、少しの希望が見えたような気がした。

「ラルカ姉さん。あれほどの武器を持つ人間なら……母さんを治せる薬を持っているかもしれない」

「まさかそんな夢みたいな話……でも、聞いてみる価値はあるかも」

 二人の意見が一致する。
 リヒトを普通の人間ではないと確信した二人は、藁にもすがる思いで一つの望みを賭けた。

「おい人間。例えば難病を治すような、そんな薬を持っていないか? もし持っているなら――いくらでもいいから、譲って欲しいんだ」


「薬……? ロゼ、持ってないか?」

「すみません、ニンニクしか持っていません」

「何でよりによってニンニクなんだ……ヴァンパイアなのに……」

 薬――それは、今のリヒトたちの荷物とはかけ離れているものだ。
 ニンニクは体に良いと聞いたことがあるが、明らかにカインたちの求めている物ではないだろう。

 ニンニクを渡したあかつきには、それこそ戦いが始まってしまうかもしれない。

「薬ってどういうことなんだ? 少し話を聞かせてくれ」

「……俺たちの母親は病床に伏している。それを治すための薬が必要なんだ。今持っていなくてもいい。あるなら持ってきてくれないか」

「それは……もしかしたら治せるかもしれないぞ」

「何だと?」

 カインの目の色が変わる。
 ダメ元で言った言葉に、望み通りの答えが返ってきたのだ。
 目では確認していないが、ラルカも同じような反応をしているであろう。

「……どうやってだ?」

「俺のスキルだよ。母親の所に連れて行ってくれたら、力になれるかもしれない」

「――グッ……もしそんな能力があるのなら、今証拠を見せてくれ! それならお前を信用してやる」

 最後に。
 カインはリヒトの力を確かめるため、一つの試練を与える。
 出会ったばかりで信用できるか分からない人間を、易々と母親の前に近寄らせるわけにはいかない。

 これは、絶対に必要な過程であった。

「証拠って言われても……これでどうだ……?」

 リヒトがそう言うと。
 カゴの中にいた魚が、何匹も蘇ったかのようにピチピチと跳ね始める。

 たまたまとは考えられない。
 そもそも、確実にトドメをさしたのはカイン自身だ。
 カインとラルカの視線は、この一瞬で神を見るかのようなものへと変貌していた。

「ラルカ姉さん、これって――」

「あの人が救世主……」

 突然現れた命を司る存在に。
 二人の竜人は無意識のうちに跪いていた。

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