チートスキル『死者蘇生』が覚醒して、いにしえの魔王軍を復活させてしまいました〜誰も死なせない最強ヒーラー〜

ノベルバユーザー364546

番外編2 ディストピアの闇

「あ、お客さんなの? 散らかってるけど許してほしいなの」

 イリスさんとティセさんの領域の次は、何やら本が沢山ある領域でした。
 まだ整理が終わっていないらしく、積まれている本がかなりあります。
 頭がクラクラしてしまいそうな数の本に、私は圧倒されてしまいました。

「フェイリス……この本、もうちょっと片付けた方が良いんじゃないのか?」

「この配置が完璧なの。たとえこの本を一ミリ動かすだけでも、世界の方程式は崩れるなの」

「何を言ってるか分かんないぞフェ――」

「――なるほど! そんな秘密が隠されていたんですね!」

 フェイリスさんは、配置のことをおっしゃっていました。
 世界の方程式というのは、今の私ではまだ理解できませんが、恐らくとてつもない問題なのでしょう。

 もし良かったら片付けを手伝わせて貰おう、と考えていた私が恥ずかしいです。
 もう少しで世界の方程式を崩してしまうところでした。

「フフフ、リヒトさん。これで分かっていないのは貴方だけなの」

「これは俺がおかしいのか……?」

 あれ?
 リヒトさんとフェイリスさんで、意見が割れてしまっているようです。
 私はどちらにつけば良いのでしょうか。
 正直に言うと、私には高次元過ぎて付いていけない話になっています。

「そ、そうだ! フェイリスさん! 何か面白い本を紹介していただけませんか?」

「おぉ。素晴らしい心意気なの」

 とにかく空気を変えるため、私は違う話題を提示しました。
 咄嗟に思いついた質問ですが、本に興味があるというのは本当です。
 私が国にいた時は、木の下で本を読んだりすることが趣味でした。

 フェイリスさんのオススメの本を読んだら、共通の話題ができて仲良くなれたりするかもしれません。

 それに、なかなか感情が読み取れないフェイリスさんが、初めて嬉しそうな雰囲気になりました。

「魔法の本とか魔物の歴史とかオススメだったりするなの」

「うわぁ……面白そうですね。普段は恋愛のお話ばかり読んでいるんですけど、たまにはこういうのも良いかもしれません」

「……かわいいなの」

 フェイリスさんがオススメしてくれたのは、少し難しそうな本でした。
 私がいつも読んでいる本とは、かなり違ったジャンルなのでとても楽しみです。

 多分読んでみても、ちんぷんかんぷんだと思いますが。

「それじゃあ、また今度感想を聞かせてほしいなの」

「は、はい!」

 そうして。
 フェイリスさんから二冊の本を借りると、リヒトさんの背中を追いかけながら次の領域に向かいます。


*************


「おーい。もしもーし――すみません、アリアっていう奴がいるんだけど、今は寝てるみたいです」

「なるほど……」

 扉をノックし続けるリヒトさん。

 しかし残念ながら、アリアさんはお昼寝中のようで挨拶することはできませんでした。
 このディストピアのトップということで、ぜひお会いしたかったのですが、仕方がありません。

「厨房はこの近くに一つあるので、そこで作業をしてもらえると嬉しいです」

「はい! 分かりました!」

 これからついに始まります。
 戦闘能力も低くて、頭もそこまで良くはない私がディストピアに呼ばれたのは、このためだと言っても良いでしょう。

「食材に関して困ることはないと思うので、自由に使ってください。分からないことがあったら、遠慮なく聞いてくださいね」

「ありがとうございます!」

 かなり丁寧な説明に、リヒトさんの優しさを感じてしまいます。
 エルフが作るということでお口に合うか不安ですが、ディストピアの皆さんに喜んでもらえるように頑張りたいです。


「この部屋でしょうか?」

「――あ、そこは」

 私が扉を開けると、その部屋は何故か真っ暗でした。

 聞き間違えかもしれませんが、呻き声のようなものも聞こえたような気がします。
 コウモリ――でしょうか。羽音も微かに混じっていて、中には何があるのか予想すらできません。

「そこは入ったら駄目ですよ」

「も、申し訳ありません! つい焦ってしまいました……」

「危ないので、今度からは気を付けてくださいね」

「す、すみません……です」

 怒られてしまいました。
 溜まっていたやる気が、空回りしてしまったみたいです。
 私は急いで扉を閉めて、気持ちを切り替えます。

 ただ。
 あの呻き声は一体なんだったのでしょうか。

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