チートスキル『死者蘇生』が覚醒して、いにしえの魔王軍を復活させてしまいました〜誰も死なせない最強ヒーラー〜

ノベルバユーザー364546

番外編 出張、ディストピア

こんにちは!
 私の名前はリーファです。
 今日は、私の国から少し離れた、ディストピアという所に来ています。

 これも、私たちのお姫さまであるアルシェ様の許可が出たからです。
 小さい頃から、国の外へ行って旅してみたり、色んな人の役に立ってみたりしたかったので、かなりワクワクしています。

 そして、今回お世話になるディストピアという所は、どうやら地下にあるようです。
 このようなシステムは、私の国ではまず有り得ないものでした。

 だって、地下に何かを作るとなると、自然が感じにくいじゃないですか。
 一応エルフなので、太陽の光は浴びていたいです。

 でも、今回ばかりはそんなことを言ってられません。
 逆に慣れないことを体験することで、私自身も成長できると思います。

「リーファさん。ディストピアの中は広いですから、しっかり付いてきてくださいね」

「は、はい!」

 リヒトさんは、素人の私をサポートしてくれる御方です。
 なんと、新入りでありながら、このディストピアでかなり重要な役割を任されているそうです。

 私なんかのサポートをさせて良いのかという疑問もありますが、これほど心強い御方はなかなかいません。
 まだディストピアの入口ですが、ワクワクと緊張でおかしくなってしまいそうでした。

「この領域はヴァンパイアの人が守ってるので、コウモリがたまにいるかもしれませんけど、気にしないでください」

「はい! 分かりました!」

 リヒトさんに言われて周りを見てみると、確かにぶら下がっているコウモリが何匹かいました。

 ヴァンパイア――少し怖いですけど、これも経験です。
 もしかすると、悪い噂が先行しているだけで、本当は温厚な種族なのかもしれません。
 そんなことも、今回の派遣で学べたらいいなぁと思っています。

「あ、リヒトさん。あの御方は……?」

「あの人はロゼって名前です。とても仕事熱心なんですよ」

 バタバタという足音の方向を見ると、私と同じくらいの女の子が走っていました。
 重そうな荷物を抱えていて、何かを運んでいる最中だと見受けられます。

 私の心にあったのは、ただただ尊敬の気持ちでした。
 お母さんやお父さんのお手伝いはしていましたが、仕事と言われるとまだまだ家事の領域です。

 同年代の女の子が、仕事としてこんなに頑張っているのですから、私も見習わないといけませんね。

 まさか一つの領域で、ここまで刺激的なものが見られると思っていませんでした。
 普通に歩いているだけで、やる気がどんどん倍増していきます。

 あ。
 でも、ヴァンパイアさんを見ることができなかったのは、ちょっとだけ残念です。
 ロゼさんがヴァンパイア――というのは恐らく違うでしょうし、やはり忙しくてどこかに出てしまっているのでしょうか。

 いつか、お話を聞かせてもらいたいものです。


***************


「ここは、イリスとティセが守っている領域です。同じエルフですから、この領域は気に入ると思いますよ」

「は、はい! 私、この空間が好きです!」

 次に来たのは、地下であるにも関わらずかなり自然に溢れている領域でした。
 私の国にも負けないくらいの自然です。
 まさか、ここで花の匂いを感じられるとは思ってもいませんでした。

 やはり、イリスさんもティセさんもエルフということで、私と好みが合いそうです。

「お姉さま、お客さんがいる。きっと助っ人の人」

「あら、ようこそいらっしゃいました。これからよろしくお願いしますね」

「こ、こちらこそ! よろしくお願いします!」

 なんと、イリスさんやティセさんに話しかけてもらいました。
 それどころか、挨拶までしてもらっちゃって。
 普通なら会釈程度で済ませようとするものですが、かなり丁寧な御方のようです。

 まさに、言葉では表すことができないほどの感動でした。

「……名前は?」

「はい! リーファっていいます!」

「うん。真面目な子。頑張って」

「――あっ」

 イリスさんに頭を撫でられてしまいました。
 何歳か年下の女の子ですけど、私よりも数倍貫禄があります。
 これは、一生の思い出となる出来事でしょう。

 頑張ってという一言は、お金なんかとは比べ物にならないほどの効果でした。

「ハーブティーもありますから、ぜひゆっくりしていってください。この道のりは大変でしたでしょうし」

「そ、そんな! 私なんかに、そこまでしていただかなくても!」

「リーファ。お姉さまの優しさだから」

「わ、分かりました。ありがとうございます!」

 イリスさんに促されるまま、私はティセさんからカップを受け取りました。
 名前を呼ばれたことで、少々ドキッとしてしまいましたが、一々高ぶっていてはキリがありません。

 心を落ち着けるためにも、ゴクリとハーブティーを飲み込みます。

「――はぁぁ……」

「フフ、気に入って貰えたようで嬉しいです」

 それは、ついついため息をこぼしてしまうほどの美味しさでした。
 イリスさんがオススメしてくれる理由も分かります。

「ありがとうございました! このことは絶対に忘れません!」

「あ、あらあら……」

 イリスさんとティセさんに見送られながら、私はさらに奥へ進むことになりました。

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