チートスキル『死者蘇生』が覚醒して、いにしえの魔王軍を復活させてしまいました〜誰も死なせない最強ヒーラー〜
大蜘蛛
「はぁー、空気が美味しいですね。やっぱり私もエルフなのかもしれません」
「いや、エルフで合ってるよ」
「ディストピアも良いけど、外の世界もたまには良い」
三人は、エルフの国がある森を歩いている。
やはりフェンリルは、エルフたちを驚かせてしまうという結論が出たため、かなり手前で降りることになった。
取り引きをするならば、相手に良い印象を与えることが重要だ。
「あら? リヒトさん、何か聞こえませんか?」
「……え? 何も聞こえないぞ?」
「お姉さま、イリスも聞こえる。誰かの叫び声、相手は多分大蜘蛛だと思う」
ティセとイリスの耳は、この森の中で物騒なものを聞き取ったらしい。
人間であるリヒトでは何も聞こえないため、ここからは二人の話を聞くしかなかった。
「叫び声って、襲われてると考えるべきだよな……? この森の中ってことは、エルフが襲われてるとしか考えられないけど」
「その通りです、リヒトさん。運悪く大蜘蛛と鉢合わせてしまったようですね。獲物として認識されたら、逃げるのはまず不可能でしょう」
「お姉さま、急がないとまずいかも。時間がなさそう」
こっちです――と、ティセは走り始めた。
大人しそうなティセだが、走るとかなりの速さである。
素の身体能力が、人間とエルフの違いを顕著に表していた。
「ティセ! 大蜘蛛っていう話だけど、今の俺たちで勝てるのか?」
リヒトが危惧していたのは、今の装備で大蜘蛛に勝てるかどうかということだ。
元々取り引きが目的であるため、戦いをするための装備ではない。
リヒトは、心もとない短剣しか持っていなかった。
大蜘蛛――だけでなく虫との戦いは慣れていないこともあり、つい不安に思ってしまう。
「問題ありません。大蜘蛛でも猛獣でも、動けなくさせたらこっちの物ですから」
「そうか。頼んだぞ!」
しかし、大蜘蛛に負けるような二人ではない。
迷いなく向かっているところから、本当に敵として認識していないのであろう。
しばらくティセとイリスの背中を追いかけていると、不自然に大きく開いた場所へ出た。
「……間に合わなかったみたいですね」
「お姉さま、少し遅かった」
そこで見つけたのは、予想通りエルフの娘と大蜘蛛である。
タイミングが良いのか悪いのか――ちょうど大蜘蛛が捕食に入ろうとしている瞬間であった。
既にエルフの娘は死んでいるようで、もうピクリとも動いていない。
同じエルフであるティセとイリスの顔に、怒りの感情というものが浮かび上がったような気がした。
「《妖精使役》」
先に動いたのはイリスだ。
スカートの下から、湧き出てくるように妖精が現れる。
どこから発生しているのか興味があったが、それを調べようとしたら大蜘蛛と一緒に殺されてしまうだろう。
「《精霊使役》」
それに続くようにして、ティセも精霊を呼び出す。
妖精と精霊が、交わるようにして大蜘蛛の体の中へと入っていった。
「――うわっ!」
ボン――という音を立てて、大蜘蛛の足が一本爆発する。
慌てて逃げようとする大蜘蛛であったが、思うように体を動かせないらしい。
カタカタと不気味に震えているだけだ。
形容しがたい色の液体を撒き散らしながら、大蜘蛛は簡単に死んでいった。
「リヒトさん、その女の子を生き返らせてあげてください」
「もうやってるよ」
「――あれ? ワタシ……死んだはずじゃ――ヒッ!? 蜘蛛が死んでる!?」
分かりやすく動揺するエルフの娘。
このような反応になるのも無理はない。
リヒトは、初めて生き返った時の自分を思い出していた。
「落ち着いてください。あの蜘蛛は私たちが倒しました。もう敵はいませんからね」
「――あっ」
ティセは、溢れる母性でエルフの娘を包み込む。
物理的に抱きしめることによって、困惑していた心も落ち着きを取り戻せたようだ。
そのまま、心を開くようにギュッと抱きしめ返していた。
「もしかして、貴女様が生き返らせてくれたのですか……?」
「いえ、蜘蛛を倒したのは私たちですけれど、アナタを蘇生させたのは、こちらのリヒトさんです」
「――! そ、その節はありがとうございました!」
バッと頭を地面に叩きつける勢いでかしこまるエルフの娘。
その姿からは、滝のような感謝が伝わってくる。
「お姉さま、せっかくだから案内してもらお」
「あ、案内とは何処に行けば良いのでしょうか……?」
「俺たちはエルフの国に行きたいんです。不安なことが多いので、色々教えてもらえると嬉しいんですけど……」
「それならお任せください! 命の恩人なんですから、ワタシもお力になりたいですし!」
「ありがとうございます――えっと……」
「あ! ワタシの名前はリリカです!」
こうして三人は、リリカを先頭にして森を進むことになった。
この後、天敵である大蜘蛛を倒した救世主として迎え入れられるのは言うまでもない。
「いや、エルフで合ってるよ」
「ディストピアも良いけど、外の世界もたまには良い」
三人は、エルフの国がある森を歩いている。
やはりフェンリルは、エルフたちを驚かせてしまうという結論が出たため、かなり手前で降りることになった。
取り引きをするならば、相手に良い印象を与えることが重要だ。
「あら? リヒトさん、何か聞こえませんか?」
「……え? 何も聞こえないぞ?」
「お姉さま、イリスも聞こえる。誰かの叫び声、相手は多分大蜘蛛だと思う」
ティセとイリスの耳は、この森の中で物騒なものを聞き取ったらしい。
人間であるリヒトでは何も聞こえないため、ここからは二人の話を聞くしかなかった。
「叫び声って、襲われてると考えるべきだよな……? この森の中ってことは、エルフが襲われてるとしか考えられないけど」
「その通りです、リヒトさん。運悪く大蜘蛛と鉢合わせてしまったようですね。獲物として認識されたら、逃げるのはまず不可能でしょう」
「お姉さま、急がないとまずいかも。時間がなさそう」
こっちです――と、ティセは走り始めた。
大人しそうなティセだが、走るとかなりの速さである。
素の身体能力が、人間とエルフの違いを顕著に表していた。
「ティセ! 大蜘蛛っていう話だけど、今の俺たちで勝てるのか?」
リヒトが危惧していたのは、今の装備で大蜘蛛に勝てるかどうかということだ。
元々取り引きが目的であるため、戦いをするための装備ではない。
リヒトは、心もとない短剣しか持っていなかった。
大蜘蛛――だけでなく虫との戦いは慣れていないこともあり、つい不安に思ってしまう。
「問題ありません。大蜘蛛でも猛獣でも、動けなくさせたらこっちの物ですから」
「そうか。頼んだぞ!」
しかし、大蜘蛛に負けるような二人ではない。
迷いなく向かっているところから、本当に敵として認識していないのであろう。
しばらくティセとイリスの背中を追いかけていると、不自然に大きく開いた場所へ出た。
「……間に合わなかったみたいですね」
「お姉さま、少し遅かった」
そこで見つけたのは、予想通りエルフの娘と大蜘蛛である。
タイミングが良いのか悪いのか――ちょうど大蜘蛛が捕食に入ろうとしている瞬間であった。
既にエルフの娘は死んでいるようで、もうピクリとも動いていない。
同じエルフであるティセとイリスの顔に、怒りの感情というものが浮かび上がったような気がした。
「《妖精使役》」
先に動いたのはイリスだ。
スカートの下から、湧き出てくるように妖精が現れる。
どこから発生しているのか興味があったが、それを調べようとしたら大蜘蛛と一緒に殺されてしまうだろう。
「《精霊使役》」
それに続くようにして、ティセも精霊を呼び出す。
妖精と精霊が、交わるようにして大蜘蛛の体の中へと入っていった。
「――うわっ!」
ボン――という音を立てて、大蜘蛛の足が一本爆発する。
慌てて逃げようとする大蜘蛛であったが、思うように体を動かせないらしい。
カタカタと不気味に震えているだけだ。
形容しがたい色の液体を撒き散らしながら、大蜘蛛は簡単に死んでいった。
「リヒトさん、その女の子を生き返らせてあげてください」
「もうやってるよ」
「――あれ? ワタシ……死んだはずじゃ――ヒッ!? 蜘蛛が死んでる!?」
分かりやすく動揺するエルフの娘。
このような反応になるのも無理はない。
リヒトは、初めて生き返った時の自分を思い出していた。
「落ち着いてください。あの蜘蛛は私たちが倒しました。もう敵はいませんからね」
「――あっ」
ティセは、溢れる母性でエルフの娘を包み込む。
物理的に抱きしめることによって、困惑していた心も落ち着きを取り戻せたようだ。
そのまま、心を開くようにギュッと抱きしめ返していた。
「もしかして、貴女様が生き返らせてくれたのですか……?」
「いえ、蜘蛛を倒したのは私たちですけれど、アナタを蘇生させたのは、こちらのリヒトさんです」
「――! そ、その節はありがとうございました!」
バッと頭を地面に叩きつける勢いでかしこまるエルフの娘。
その姿からは、滝のような感謝が伝わってくる。
「お姉さま、せっかくだから案内してもらお」
「あ、案内とは何処に行けば良いのでしょうか……?」
「俺たちはエルフの国に行きたいんです。不安なことが多いので、色々教えてもらえると嬉しいんですけど……」
「それならお任せください! 命の恩人なんですから、ワタシもお力になりたいですし!」
「ありがとうございます――えっと……」
「あ! ワタシの名前はリリカです!」
こうして三人は、リリカを先頭にして森を進むことになった。
この後、天敵である大蜘蛛を倒した救世主として迎え入れられるのは言うまでもない。
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