チートスキル『死者蘇生』が覚醒して、いにしえの魔王軍を復活させてしまいました〜誰も死なせない最強ヒーラー〜

ノベルバユーザー364546

魔王の悩み

「国王様。ダンジョンの調査に向かわせた冒険者と連絡が途絶えました」

「……何かあった――と、考えるべきでしょうな。嫌な予感はしていましたが、まさか……」

 国王は頭を抱える。
 あのダンジョンから確認できた魔力は、並のパワーではなかった。
 心の隅っこで間違いであることを祈っていたが、今回の調査でそれすら否定されてしまう。

「国王様。あの冒険者たちは、Sランクの称号を持つ者たちです。ダンジョンには、かなりの化け物が潜んでいると考えてもよろしいかと」

「そんなことは分かっています。問題は、その化け物が我々の敵なのかどうかです。もし敵だとするならば……戦いは避けられないでしょう」

 国王が危惧していたのは、ダンジョンに潜む化け物がこの国に攻めてくることだ。
 もし戦うとなったら、この国は甚大な被害を負うことになるだろう。
 それどころか、人間界全体の大ダメージとなるかもしれない。

 それほどの恐ろしさを、国王は感じ取っていた。

「一応ですが、隣国だけでなく、エルフの国にもこの情報を伝えておいてください。これは、種族を超えた問題になるかもしれません」

「エルフの国ですか……? 彼らはどちら側につくか不明ですので、少々危険ではありませんかね……?」

「ですから、早いうちに我々の味方につけておきましょう。彼らの戦力は必ず役に立ちます。彼らだって、得体の知れない化け物には不安でしょうしね」

「なるほど、了解致しました」

 こうして、国王は隣国やエルフの国に送る手紙を書き始める。

 自分たちと同等――もしくは格上の相手を出し抜くには、こういった裏の準備が必要不可欠だ。
 何か問題が起きてからでは、あまりにも遅すぎた。

「国王様。エルフの国に手を出すのであれば、竜人の国にも声をかけるのはいかがでしょうか?」

「それは……もう少し慎重に考えるべき問題でしょうな。竜人族は危険過ぎる。化け物と戦う前に、竜人と戦う羽目になるかもしれません」

「も、申し訳ありません……出過ぎた真似を致しました」

 部下から出た意見。
 国王は、少し考えてそれを却下する。
 竜人を味方につけるというのは、不安材料が多すぎて難しい。

 また、人間との関わりも少ないため、まともに話が出来るかどうかさえ不明だった。

「とにかく、早急に準備を始めるのです。調査だったとは言えど、化け物たちは攻撃されたかと勘違いしているかもしれません。明日攻めてきたとしても、おかしくないのですよ。不安なことは、一つ残らず潰していきましょう」

 不安材料は排除する。
 国王の考え方が顕著に表れた瞬間であった。

 たとえそれが、人間でも問題でも同じである。


**********


「困ったのお」

「どうしたんだ? アリア」

 ディストピア食堂と呼ばれるその領域では、魔王であるアリアが悩むようにしてため息をついていた。
 何があったのかは分からないが、リヒトがそれを放っておけるはずがない。

 隣の席に座りながら、アリアに話しかける。

「おぉ、リヒト。実はお主も気付いておるのじゃろ?」

「……? ごめん、全く心当たりがない」

「最近、同じような物しか食べておらんじゃろ? 食料のバリエーションが減っておるのじゃ。引きこもっておるから、仕方ないとも言えるんじゃが……」

 アリアの悩みの種は食事に関するものだ。
 確かにアリアの言う通り、ディストピアの食事はワンパターンになってきている。
 飽きたとは言わないが、そろそろ変化を求める者が出てきてもおかしくない。

「そもそもじゃが、このディストピアには料理をできる者が少なすぎる。まともなのがティセくらいじゃ。イリスが作った物なんて、食えた物ではないぞ」

「一応聞いておくけどアリアは……?」

「……儂もちょっと自信ない」

 なんと、このディストピアには料理をできる者が一人しかいなかった。
 しかも、ただでさえ忙しいティセである。
 リヒトも基本的な料理なら可能だが、そもそものレパートリーが少なすぎるため、大した力にはなれないだろう。

「――あ!」

「でも、今から料理を覚えるってのも難しくないか? 食材だって限られてるし」

「リヒトよ……儂は、全てを解決してしまう悪魔の作戦を思いついてしまったかもしれん」

 不敵に笑うアリア。
 偶然何かを閃いてしまったらしい。
 アリアに関して、賢いという印象を持っていなかったリヒトだが、一応という意味で耳を傾けた。

「最初に聞いておくけど、料理人を蘇生ってわけじゃないよな?」

「当たり前じゃ!」

 コホン――と、アリアは話を戻す。

「人間以外の種族と手を組むのじゃ! そこで、食料や料理人を引き抜けば良い」

「……取り引きってことか? 良いアイデアかもしれないけど、俺たちは何を差し出せば良いんだろう」

「そこは儂に任せておれ。隠しておった宝石や武器などが沢山あるぞ。自分で言うのもなんじゃが、かなりの値打ちがある物ばかりじゃ」

 アリアは自信満々に話した。
 それほどまでに、この作戦が成功すると確信しているようだ。

「ちなみに、人間以外ってなると、どんな種族になりそうだ?」

「比較的近い所におるのは、エルフやら竜人やらであったぞ」

 こうして、ディストピアの狙いは決まったのだった。

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